異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

その瞳に恋してる

 宰相が戻ったことで、セントレアは一気に復興へ動き出す。

 セントレアは結界のおかげで、街そのものはそこまで破壊され尽くしてはおらず、いまだ10万の人々が暮らす街だ。

 足りないのは、主に人手と物資だが、セグンダからはすでに多くの商隊と護衛の冒険者たちが出発しているので、徐々に解消に向かうと思われる。

 カタリナさんたちのように、もともとアストレアの人間で戻れなくなっていた人々は大勢いる。治安とインフラが回復すれば、すぐに往来が始まるだろう。



『王子様、見つけました!』

「本当か? 良くやったサクラ」

 サクラには避難用シェルターの捜索を手伝ってもらっている。

 避難用シェルターは、魔物が近づけないだけではなく、認識阻害効果まで備えているので、召喚獣だけではどうにもならない。

 セントレアにあるシステムコアで、現在使用されているシェルターは把握出来ているので、サクラと手分けして虱潰しにしているのだ。


「王子様〜!」

 転移すると、サクラがダッシュで胸に飛び込んで来る。

「お疲れ様! シェルターの捜索は、今日はここまでにしよう。受け入れも限界になりそうだしな」

 すでに千人以上の人々を救助したが、現状これ以上は難しい。ほとんどの人が帰る家も町もないのだから。仮設住宅も、食事の準備も人手が圧倒的に足りていない。

 シェルターにいる分には安全なのだから、こちらはそれほど焦る必要もないだろう。

 
 もちろん救助ついでに、セレスティーナへの移住の勧誘も忘れていない。

 当面の衣食住の提供。その後の仕事の斡旋、そして強力な守護召喚獣による安全の保証など。

 至れり尽くせりのおかげで、8割の人々がセレスティーナへの移住を決断してくれた。残りの2割の人々も、ほとんどが帰る場所がある人だから、実質ほとんどの人が俺の街に来てくれるということだ。

 期待に応えられるようにしっかりサポートしてあげようと思う。

 それにセレスティーナは今後、交易のハブになるのだから、最優先で街の体裁も整えないといけない。セレスティーナは当面セントレアの手伝いで手いっぱいだから、俺が頑張らないといけない。


 最後の人を希望の街へ送り届けてひと休みする。

「お疲れ様でした、王子様!」

 サクラが後ろから手を回し抱きしめてくれる。柔らかい感触と甘い匂いに疲れが消えてゆくようだ。


「サクラも疲れただろう? 今、お茶と甘いもの用意するからな」

 疲れた時には、甘いプリンとお茶が至高だ。サクラと2人でちょっとしたティータイムを過ごす。


「あ、あのね……王子様と一緒に行きたいところがあるんですけど……忙しいですよね?」

 サクラがおずおずと上目遣いで見つめてくる。殺人的な可愛さだ。

「いや、暇ではないけど、サクラと過ごすよりも大事な予定は将来に渡って入って無いな」

「ふふっ、ありがとうございます!! 残念ながらデートじゃないんですけど……」



 サクラとやって来たのは、アストレアの北方にそびえるアストラル山脈の麓に広がる広大な森林『サウザンドフォレスト』だ。

 山脈より流れ出るセレスティナ川を包み込むように、王都のすぐ北まで広がっており、この大陸最大の森林の一つとなっている。



「……それでサクラが感じた異常というのは?」

「はい、私は木や植物の声みたいのがある程度理解できるんですけど、どうも、森が騒がしいというか……もしかすると避難している人が沢山いるのかもって思ったんです」

「なるほど、魔人は主要都市しか襲わなかったから可能性はあるな。よし、日暮れまで探してみるか? デートついでに」

「へ? で、で、で、デートですか? 2人きりで?」

「2人きりじゃないと、ただの捜索じゃないか。それとも嫌だったか?」

「い、嫌な訳ないじゃないですか〜、意地悪な王子様!」

 デレデレモードのサクラが可愛い。


 2人で腕を組み森を歩く。

 そういえば、森を歩くのも久しぶりな気がするな……。この世界に来た時のことを思い出す。

「あの……私って婚約者なんですよね?」

「? 当たり前だろ、どうしてだ?」

「いえ……でも他の皆さんは王女様ばかりだし、私より綺麗だし……ご迷惑かなって。だってほら、私が無理に押しかけたようなものだから……」

 そういえば、時間が無かったとはいえ、サクラと2人きりの時間なんて無かったし、不安にさせてしまったんだな。

 それなのに俺は他の女の子にいつもデレデレして……我ながら最低だな。今更過ぎるが。


「サクラ、俺はそのお揃いの黒髪が大好きだ。この世界で母国を思い出させてくれるから。その桜色の瞳に恋している。1番好きだった花を一年中眺めていられるから。その豆だらけの手も愛している。どれほど努力してきたか分かるから……」

 サクラを強く抱きしめる。決して離さないと伝えたいから。

「もし、違う形で出逢ったとしても、俺は絶対にサクラを好きになっていたよ。どんな手段を使っても手に入れようとあがいたと思う。一緒に生きて欲しいんだ。俺の家族になって欲しい」

「……はい……はい、喜んで」

 ぽろぽろ流れ落ちる雫は森を映した翡翠のようで、とても……とても綺麗だった。

 
「ふんふふーん♪」 

 さっきまで号泣していたサクラが上機嫌に微笑んでいる。

 あらためて見ると本当にすごい美少女だよな。日本にいたらトップアイドル間違いなしだよ。

 っ!? 不意に胸が痛む。

 ちっ、嫌な記憶が蘇りやがった。大好きだったトップアイドルの突然の死のニュース。

(そういえば……ミコトさんと同じ名前なんだな……)

 人気絶頂で亡くなった悲劇のアイドルを想う。

 彼女の名は、不知火美琴しらぬい みこと

 芸能人に一切興味が無かったカケルが、唯一好きだった女性だ。


 カケルは知らない、彼女が勇者としてこの世界に来ていることを。

 美琴は知らない。カケルが彼女の大ファンだということを。

 
 そして……全てを知るのはこの私のみ! 全知全能の美の化身。

 神界きっての天才にして、最年少創造神のこの私、イリゼ様だけなのよ!!!!!

 突然ポーズを決めた私に集まる周囲の視線なんて気にしない。


 うふふ、もう少しで逢えるわね2人とも。私までドキドキするんですけど!?

 とりあえず、レポートには書けないから、この部分は私に置き換えておきましょう。

 イリゼはこうして妄想レポートを書きあげてゆくのだった。





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