異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

閑話 カケルのプリン

『どうしたのイリゼ、突然呼び出すなんて珍しい』


『ごめんねミコちん、私が直接行くわけにはいかないからさ。はいこれ、カケルくんからよ』


『!? か、カケルから? なんで? イリゼ……いつカケルに会ったの?』


 やばっ、そういえば、神殿経由でカケルくんと会ってることレポートに書いてなかったわ……


『ま、まあ細かいことはいいじゃない。カケルくんがミコトちんのために作ったプリンよ!』


 ミコトのジト目に耐えながら、カケルの手作りプリンを差しだすイリゼ。




『……そういえばカケルのプリンはとっても美味しかった。楽しみ』


 目を輝かせるミコトだが、イリゼはおのれの罪悪感と戦っていた。


(あんまり美味しいから、ミコちんの分までちょっと食べちゃったのよね。少し小さくなっちゃったけど、味は一緒だから!)




『……あれ、なんか小さい』


(ドキッ!?)


『……イリゼ、これ本当にカケルが作ったやつ?』
『う、うん、そうよ! 間違いなくカケルくんの手作り』


『おかしい……カケルはサイズにもこだわりがあった。イリゼ、私の目を真っ直ぐ見れる?』
『み、見れましゅ、見れるわよ……ミコちんは一体何を言って――――』


『イリゼ……目が泳いでる。怒ってないから正直に言いなさい』


 長年の親友に誤魔化しはきかない。イリゼはとうとう観念した。


『……ご、ごめんなさい! 食べました。ミコちんの分のプリンも余分に食べました!!』


 土下座するイリゼ。


『イリゼ……プリンを食べたことは責めない。だってカケルのプリンは魔性だから。抗うのは難しい。私が責めているのは、それを隠そうとする行為、バレなければ良いというその腐った心根の方!!』


『か、かはっ!?』


 返す言葉もない……一言一句まさにその通りだ。


 私は何だ? 女神? 創造神? 笑わせる。それ以前の部分で終わっているではないか。立場に胡坐をかき、いつしか堕落への道に向かっていたのか。


 ふと、イリゼの肩にあたたかい感触が。見ればミコトが肩に手を置き微笑んでいる。むろん親友のイリゼでないとわからないぐらい微妙な微笑みだが。


『わかってくれたみたいねイリゼ。なら……はやくプリンもらってきて!! 今すぐ!!』


 微笑みから一転、般若の表情に変わるミコト。


 やっぱり怒ってるじゃんと思いつつもそんなこと言えるわけも無く。


『は、はい! 行ってきます!』 




***




『ってな感じのことがあったのよ。ごめんねカケルくん、寝てた?』




 突然白い部屋に連行されて何事かと思ったら、なんだ、プリンか。




「大丈夫ですよ、期せずしてイリゼ様に逢えたんですから、むしろラッキーです」
『か、カケルくん……あなた神ね!』


 いや……貴方が神ですよ。




「じゃあ、これ作りたてのプリン。少し多めに作ったんで、イリゼ様もどうぞ」
『か、カケルくん……やはりあなた神よ!』




『じゃあ、私はこれで! 急いで戻らないと――――』


 はっ、カケルくんが淋しそうな顔をしている……まるで捨てられた子犬のような。


 だめ……そんな顔しないで! そんな目で見られたら、私……


『と、特別なんだからね!!』


 カケルくんにキスをする。女神の愛がたっぷり詰まった特製のキスだ。




***




『イリゼ……遅い』


『はあはあ……ごめんねミコちん、ちょっと道が混んでてさ!』


『……それを本気で信じるとでも? ん、ミコちんからカケルの匂いがする……』  


(ドキッ!?)


『ん!? んむむ!?』


 突然ミコトにキスをされ、驚くイリゼ。


『な、なにするのミコちん?』


『……カケルの味をおすそ分けしてもらっただけ。文句ある?』


『ございません、すいません』




***




『――――というわけで、カケルの作ったプリン、美琴にもおすそ分け』


「うわあ!! マジですか!? 異世界でプリンが食べられるなんて! しかもカケルさんの手作り!! やばい! テンション上がる、私、明日死ぬのかしら?」


 大喜びの美琴。すぐに付属のスプーンでプリンを口に入れる。




「…………ミコトさん、私決めました。絶対カケルさんのお嫁さんになります。勇者の名に懸けて!!」


 あまりの美味しさにスプーンを動かす手が止まらない、歓喜の涙が止まらない。


『あ、ちょっと……美琴ストップ!! 私の分が……』


 美琴が止まらないので、強制的に身体を乗っ取るミコト。


『ふう……危なかった。また(イリゼが)カケルのところに行かなきゃならないところだった』




『ん……美味しい……ちゃんとカケルの味がする。優しい思いやりの味が……』


 イリゼから奪ってきた高級茶葉で入れたお茶を飲みながらひとり涙するミコト。






『美味しかった……ありがとうカケル』









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