異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

5年後の君と

 現在、サウスレアには、セレスティーナとサクラが残り、街の状況や人々の要望などを確認している。


 カケルが戻って来る前に、必要なことをリストアップしておくのだ。


「セレスティーナ様、少しお耳に入れたいことがございます」 


 そんな中、声をかけたのは七聖剣のトーレス。


 トーレスは茶髪碧眼、190センチを超える長身の美青年で、その風貌から七聖剣の貴公子と呼ばれている。


 同じ七聖剣でサクラの兄クヌギとは親友であり、クヌギの結婚式に招待されサウスレアに来ていたところ災厄に遭遇した。


 実はサクラの婚約者候補筆頭で、トーレス本人も、家族も乗り気だったのだが、カケルの登場で当然話は霧散した。


 内心落ち込んでいたのだが、それを一切表に出さず、カケルとサクラを祝福できる程度には良い男であったのだ。


「トーレスか、どうした?」


「はっ、これは私しか知らない事なのですが、災厄の日、国王陛下を含めて、王族の多くはセントレアには居なかったはずです」


「なっ、それは本当か? トーレス」


「はい、クリスタリアに新しく出来た温泉施設に招待されて、家族旅行に出発していたと思われます。なぜ私が知っているかといえば、本当は私も警護に付く予定だったからです」


「……そうなると、もしかしたら……」


「はい、近衛騎士団に加えて七聖剣も3人付いていたはずですから、避難出来た可能性は十分あります」


「…………そうか」


「カケル殿に伝えて捜索してもらいましょう、セレスティーナ様」


 アストレアからクリスタリアに至る道は限られており、避難出来る街となれば、更に限定される。が、


「…………それは出来ない」


「なっ!? なぜです? セレスティーナ様!」


「アストレア東部からクリスタリアとなれば、アルカリーゼからはアストレアを横断した反対側だ。今はそちらまで捜索の手を割く余裕はない。父上たちならば大丈夫。トーレスの言う通り七聖剣もいるしな」


 あくまで国王陛下たちの捜索は最後だと言うセレスティーナ。


 しかし彼女が血が滲むほど強く手を握りしめたのを、トーレスは見逃さなかった。


「……申し訳ございません、考えが足りずに殿下を苦しめてしまいました」


 頭を下げ謝罪するトーレス。


「謝るなトーレス、お前がくれた情報がどれだけ私の救いとなり勇気となったことか。暗闇の中の光明となったことか……ありがとうトーレス。私にとってはどんな宝石やドレスよりも嬉しかったぞ」


 優しく微笑むセレスティーナ。


(……セレスティーナ様、貴方は覚えてもいないでしょうが、私も貴方の婚約者候補だったのですよ。私を含めて全員振られてしまいましたけどね) 


 トーレスは想う。この先何があっても、この方の為に剣を振るおう。この方を守ることが、アストレアを守ることになるのだから。


「それとな、トーレス」


「はっ、何でしょうか?」


「お前、サクラのことが好きだったんだろう? 元気だすんだぞ」


「へ? は、はい……えーと、ははっ、殿下には敵いませんな」


 図星をつかれ苦笑いするトーレス。


「大丈夫だぞ、旦那様以外の男の中ではトーレスはマシな方だと私は思うし、お前を好きな女性もいるではないか!」


「え、誰です?」


「ほら、えーと、カエデとか、あとカエデ?」


「……カエデ限定なんですね、でもまだ子どもではないですか……良い子ですけども」 


「そんなことはない、あと5年もすれば、サクラ似の美少女になると思うぞ?」


「そうでしょうけれど、5年後では私はオジサンです。さすがにちょっと……」


「ふふっ、まぁ好きにすれば良い。ところで、どうだった?」


「どうだったと申しますと?」


「旦那様のことに決まっているだろう?」


 うっ、セレスティーナ様が目をキラキラさせながらたずねてくる。これは逃げられないか……


「そ、そうですね、とても優しそうで魅力的な青年でしたね」


「そうだろう、そうだろう。旦那様はそれはもう優しいのだ。まるで私をお姫様のように扱ってくれるのだ」


 頬を染め照れるセレスティーナ。


(……まるでも何も本物のお姫様ですけどね!)


 心の中でツッコミを入れながら、トーレスは話を続ける。


「それにあのデタラメなほどの強さ。ひと目みて勝てないと思いました。おそらくクヌギと二人がかりでも無理でしょうな」


「わかるか……さすがは七聖剣! 強者は強者を知るということだな」


 満足そうに頷くセレスティーナ。


 これで火が着いたのか、トーレスは、この後死ぬほどカケルとの惚気話を聞かされた。






「ふぅ……いや、酷い目にあったな」


 ようやく解放されたトーレス。


 しかし、とトーレスは思った。セレスティーナ様だけでも大変なのに、他にも大勢の婚約者がいるとは。しかもそのことに誰も不満を抱いていないなどあり得るのか。


 恐ろしい……男としても、到底勝てる気がしないな……。


「いたっ! トーレスさま〜」 


 向こうからカエデが走って来る。そのままボフッとトーレスの懐に飛び込んできたので、優しく受け止める。


「カエデ、怪我でもしたら大変だぞ」


「大丈夫! トーレスさまにしかしないから」


 にっこり笑うカエデ。


「……なぁカエデ、カケル殿のこと、どう思う?」


「英雄さま? 大好きなお兄さまよ。サクラお姉さまを助けてくれたし。お姉さまは王子様って呼んでたけど、私にとっての王子様はトーレスさまよ? 私たち家族と街を守ってくれたのはトーレスさまなんだから!」


「カエデ……」


「だからね、元気出してトーレスさま」


 トーレスの頭を優しく撫でるカエデ。


 ちっ、隠してるつもりだったんだが……


(5年か……待ってみるのも悪くない、か)


 その時、オジサンになった自分をカエデが好きでいてくれるかは分からない。


 でも、その手の温もりが今のトーレスには優し過ぎたから。その言葉が嬉しかったから。






























」 

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