異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
記憶の中の天才
【名 前】 団慈四=増太郎(男)
【種 族】 オートマタ
【年 齢】 768
【身 分】 契約(白崎刹那)
【職 業】 ダンジョンマスター
【状 態】 ストレス過多
なんだろう……この適当すぎる名前。こんなんじゃ可哀想だよ白崎さん。もうちょっと考えてあげて欲しかった。いやまて、真剣に悩んでこれだった可能性もあるな。
「すいません、ダンジョンマスターの増太郎さん。ちょっとお話いいですか?」
本当に人間にしかみえない。服装は常人とは思えないほど変だけど。上着が革ジャンなのはまあ良い。でも下がセーラー服のスカートはどうなのか? この世界の人たちは特に気にしていないから別にいいのか。
「ん? 僕のことを知っているとは、君、何者?」
「冒険者のカケルといいます。異世界人ですよ」
「へえ、マスターと同じ異世界人にあったのは何年ぶりかな? はじめまして、団慈四=増太郎です」
そう言ってお辞儀する増太郎さん。意外に礼儀正しいんだな。
「増太郎さんにお聞きしたいんですが、この迷宮のダンジョンマスターなんですよね?」
「イエス。本当は秘密、異世界人は契約外だからセーフ」
なんで急にロボットぽい喋り方になったんだろう……ノリか? ノリなのか?
「それで、単刀直入にお聞きしますけど、迷宮に異変が起きてるみたいなんですが、何か心当たりは?」
「ああ、それね。もうすぐスタンピードが起こるんだよ」
あっさり教えてくれる増太郎さん。
「ちなみにいつ頃でしょうか? それって止められないんですよね?」
「ちょうど1週間後かな。止めるのは無理、ダンジョンの維持管理に必要な掃除だから。ちなみに事前通告も禁じられているから僕から聞いたって言わないでね。わざわざ、ミノタウロス使って警告してたんだから」
「なるほど、良くわかりました。スタンピードに対処出来るように準備しますね」
起こるとわかっているなら対処は可能だ。俺にとってスタンピードは、ボーナスステージなのだから逃す手はない。
「さすが、理解が早くて助かるよ。僕もこの街が無くなると困るからね。君が来てくれて助かったよ」
増太郎さんは、定期的に街にきて、溜まったストレスを発散しているそうだ。基本的にダンジョンマスターは、ダンジョンから離れられないが、この街は、ダンジョンの一部と判定されるらしくセーフなんだとか。
「オートマタなのにストレスを感じるとか大変ですね。増太郎さんを作ったのは、やっぱり白崎さんなんですか?」
「イエス。人間性を追求した結果、ストレスを感じるようになったんだ。マスターも酷いことをするが、おかげで色々楽しめることもある」
「でも、マスターの白崎さんは、もう亡くなったんでしょう? いつまでダンジョンマスターを続けるんですか?」
「……マスターが何処へ行ったかは、わからない。そしてダンジョンの管理は、世界を守るために必要。代わりが来るまで終わりはないね」
一瞬、疲れたような、悲しそうな表情をしたが、すぐにもとに戻った。
「じゃあ、僕はこれから街でエンジョイしてくるから」
「増太郎さん、本当にありがとうございました。またお会いしたいですね」
「……そうか、君は異世界人だったね。だったら……はい、おともだち登録完了だ。いつでも僕に連絡できるよ。じゃあね!」
そういって去ってゆく増太郎さん。
「私の騎士、今の話が本当なら大変よ。すぐにお父様とギルドに伝えて準備をしないといけないわね」
「そうだな、すぐにギルドへ戻ろう」
ギルドの前でリーゼロッテとは一旦分かれる。彼女には辺境伯に報告してもらわなければならない。
「そういえば、さっき話に出てきた白崎さんって、もしかして、セツナ=シラサキのこと?」
「リーゼロッテ知っているのか?」
「知ってるも何も、その辺の子どもだって知っているわ。史上最高の錬金術師にして、魔道具作りの天才。今も世界中で使われている魔道具のほとんどは、彼女が作ったとされているわ」
「やはりそうか、あの白崎刹那の可能性は高いな……」
「えっ、まさか私の騎士の知り合い? だって彼女800年近く前の人よ?」
「知り合いってほどじゃないけど、会ったことはある」
 
白崎刹那……小学生の時、自律型ロボットを作って名誉博士号をとった稀代の天才だ。史上最年少で、ヌーベル賞を受賞したけど、会場にむかう飛行機ごと行方不明になったとしばらくニュースでやっていたっけ。
まさか異世界に来てたなんてな。
同い年で、同じ天才として研究や調査で何度か一緒になったことがあった。同じ時代じゃないのが残念だけど、意外なところで、知り合いの消息がわかったのは嬉しいような悲しいような複雑な気分だ。
***
バドル冒険者ギルドにて
「あの、受付に黒の死神のカケルさまが来ております。ギルドマスターにお話があるそうですが、どうし――――」
「すぐに通してちょうだい。今すぐに!!」
「は、はいっ、すぐにお通しいたします」
リリスの迫力に押されて逃げるように部屋を出る受付嬢。
「さっき出て行ったばかりですよね、忘れ物でもしたんでしょうか?」
「うふふ、こんなに早く逢いに来るなんて……」
「……ダメだ、全然話聞いてないです。目がハートマークになってますし」
リリスのことは応援しているが、自分にしわ寄せが来るのは勘弁して欲しい。リノは深いため息をついた。
***
「すいません、リリスさま、またお時間をいただいてしまって」
「良いのよカケルくん、私はあなた専用なのだからいつでも大丈夫よ。だってそのためにリノがいるのだから」
「一応言っておきますけど、違います」
リノが冷静にツッコミを入れるが、リリスはどこ吹く風だ。
「実は、調査依頼の件ですが、終わりました」
「そうでしょうね。困難な依頼であることはもちろんわかって……なんですと!?」
リノさん、わざわざありがとうございます。
「すごいわ、カケルくん! さあ、依頼が終わったのなら、今度は私と――――」
「1週間後にスタンピードが発生します」
カケルの発した言葉にリリスとリノの表情が固まる。
「…………カケルくん、今、なんて言ったの?」
「残念ですが、避けられない状況です。1週間後に発生するスタンピードに向けて、準備を始めて下さい。辺境伯には、すでにリーゼロッテが報告に向かいました」
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