異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

領都バドル

 領都バドルは、人口15万人が暮らすバルバロス辺境伯領の中核を担う都市だ。


 俺は現在、街を見渡せる巨大な木の上にいる。そして、同時に辛い決断を迫られていた。


「2人とも、そろそろ出発するから、な?」


 後ろからツバサが抱きつき、前からは、リーゼロッテ様が抱きついてくるという夢のサンドイッチ状態を堪能していたいが、いつまでもこのままという訳にはいかない。


 世界を救うには、立ち止まらずに、前に進む勇気が必要。渋る2人を引き離し、領都バドルへ向かう決意を固める。


「ツバサ、じゃあ、ちょっとの間、戻っていてくれ」
『わかった王よ、だが、ご褒美を所望するぞ』


 そう言って目を閉じるツバサ。確かに領都まで行かせた訳だし、ご褒美は必要だろう。


「ツバサ、少し刺激が強いから、気をしっかり持てよ」


 ツバサを抱きしめながら、キス【極】をする。神様すら足腰が怪しくなるほどの威力。ツバサはヘロヘロになりながら、スケッチブックに戻って行った。


「……私の騎士、あんた本当にすごいわね。何回私の目の前でキスを見せつけるつもりよ!!」


 呆れながら、顔を赤らめるリーゼロッテ様。毎度器用なものだと感心する。


「すいません、リーゼロッテ様」


「あのね、私の騎士、えーと、どうしてもって言うなら……私のために頑張ってくれたし、まあご褒美っていうか、仕方ないから、させてあげても……良いわよ? 勘違いしないで! と、特別なんだからね!!」


 ヤバい、リーゼロッテ様がかわいい。思わず抱きしめてキスしてしまった。




「……はぁ、はぁ、わ、私の騎士、やりすぎよ! 歩けないから、抱っこしなさい!」


 可愛すぎて、やりすぎてしまった。仕方ないので、リーゼロッテ様をお姫様抱っこして、出発する。街中は、さすがに恥ずかしいので、認識阻害をかけておく。


「ほ、本当に見えて無いのよね?」


 バドルの門を通る際、恥ずかしそうに確認するリーゼロッテ様。


「大丈夫ですよ。昨日確認したばかりじゃないですか。それとも降ろしますか?」
「……それは嫌!!」


 バドルの街は、プリメーラに比べると、より華やかで、活気があるように感じる。


 やはり、魔物の領域から離れているのが、大きいのだろう。


「とても良い街ですね、リーゼロッテ様」
「っ! でしょ! 自慢の街なのよ」


 自慢の街を褒められて、満面の笑みを浮かべるリーゼロッテ様。


「はい、でも、リーゼロッテ様も負けないぐらい魅力的です」
「ち、ちょっと、急に何言ってるのよ! 私の騎士!」


 真っ赤になってあわあわしているリーゼロッテ様を抱いたまま、辺境伯がいるバドル城を目指し歩みをすすめる。


***


「私の騎士、そろそろ降りるわ。さすがにこのまま入れないし」 


 バドル城の近くまで来たところで、リーゼロッテ様が、少し残念そうに抱っこから降りる。






「こ、これは、リーゼロッテ様! ど、どうぞ、お通り下さい」


 衛兵が、驚き最敬礼する。


 まあ、当たり前だが、全ての人々が恭しく頭を下げるのは壮観だ。すごいね。


 バドル城は、プリメーラ城とは違い、要塞としての機能を残しながらも、華やかな部分も存在する。舞踏会が開かれそうな大ホールも実に見事な造りだ。


「お帰りなさいませ、リーゼロッテ様」


 執事のセルジュが出迎えてくれる。くっ、ちょっと惜しいな。


「リーゼロッテ様、そちらのお方は?」
「私の騎士よ、大事なお客様だから、丁重に持て成しなさい。それから、至急お父様に報告があります。すぐにお願い」


「は、かしこまりました」


 セルジュは少し驚いたように目を見開いたが、直ぐにメイドに指示を出し、当主に取り次ぐため、姿を消した。


「私の騎士、こっちよ!」


 リーゼロッテ様に連れられて、豪華な応接室に入る。豪華と言っても、落ち着いた品の良さが際立っているので嫌みはない。


「お茶をどうぞ」


 メイドたちが、香りの良いお茶と、果物を出してくれた。


「辺境伯領でしか採れない果物で、バヌヌっていうのよ」


 見た目は完全にバナナだな。皮を剥いて食べてみたが、完全にバナナだった。


 リーゼロッテ様に聞いたところ、食べ方は、このまま食べるだけらしい。これは色々利用出来そうだな。


 リーゼロッテ様に頼んで、空のゴブレットをいくつか持って来て貰った。魔法で氷を創り出し、バヌヌと一緒に粉々に砕いてミルクと混ぜれば、即席バヌヌジュースの出来上がりだ。


「な、なにコレ……めちゃくちゃ美味しいじゃない!!」
「ほ、本当に美味しいです、リーゼロッテ様」


 バヌヌジュースは、リーゼロッテやメイドさんたちにも好評なようだ。喜んでもらえると、本当に嬉しくなるよね。


「絶対にまた作りなさいよ! 私の騎士」
「仰せのままに、俺の姫」


 今度はバヌヌ味のソフトクリームでも食べさせてあげようかな。


***


「お待たせしました。ダビド様がお会いになります」


 しばらくして、執事のセルジュさんが呼びに戻って来た。どうやら、辺境伯様に会えるようだ。


 リーゼロッテ様のお父様か……どんな人なんだろう。期待と不安が入り交じる。  


 セルジュさんに案内されて、辺境伯の執務室へ入る。


「ダビド様、リーゼロッテ様とお客様をお連れしました」
「ウム、ご苦労」


 立っていたのは、リーゼロッテ様とよく似たプラチナブロンドの偉丈夫。なぜか完全武装なんだけど、大丈夫だよね?


「お父様、リーゼロッテ、ただいま戻りました。こちらが――」


 リーゼロッテ様が言い終わらないうちに、凄まじい勢いで剣が飛んで来た。


 俺は指2本で剣を挟んで受け止める。更に打ち込んできた槍を軽く受け流し、最後の蹴りはあえて避けずに受け止めた。


「ち、ちょっと、何してるのよ、お父様!」


 顔面蒼白で慌てるリーゼロッテ様。


「辺境伯様、はじめまして、冒険者のカケルです。宜しくお願いいたします」


「ふっ、ふはははっ! なかなかやるではないか、いや、失礼した。私が辺境伯のダビドだ。宜しく冒険者カケル、いや、異世界の英雄と言った方がいいか?」


 いや、ダビド様、笑ってるけど、普通死ぬからね!! 


「すまない、リーゼロッテが私の騎士なんて言うものだから、つい、な?」


 つい、な? じゃないですよ!


「カケル様、私の騎士と言うのは、この人と結婚するという宣言に等しいのです」  


 セルジュさんが教えてくれたけど、リーゼロッテ様、最初から言ってたよね!? なにそれ一目惚れってこと?


 見れば、リーゼロッテ様が真っ赤になってるので、聞くのは野暮のようで。



















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