異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

マリグノの町

「これでよし! もうすぐ、ギルドからガイルたちが到着するから、二人を宜しくな亜里沙」


 荷馬車には、亜里沙の他にも二人の女の子が捕まっていた。召喚獣のハーピィたちに護衛を頼んだけれど、事情がわかる人間がいたほうが良いだろうということで、亜里沙が残ってくれることになった。


 他の二人もアリサのことは知っているそうだから、少しは安心すると思う。俺の妹は結構な有名人なんだな。


 夜の森の中に3人を残していくのも心配だが、レベル200オーバーのハーピィが20人いれば、たとえグリフォンが来ても十分戦えるし、いざとなれば、転移で一瞬で戻ることも出来る。


 ちなみに、男たちは、両手足を折って縛り上げてある。殺すのは簡単だが、人身売買組織を潰すためには情報が必要だ。


「大丈夫よ、お兄ちゃん。それより、先行している馬車には大勢の人が乗せられているんでしょ? 早く行って助けてあげて」 


「……わかった、じゃあ行ってくるけど、何かあったら直ぐに俺を呼ぶんだぞ」
「うん、わかってる」


 大きな目をキラキラさせて頷く亜里沙がカワイイ。思いきり後ろ髪を引かれるが。


「カザネ、3人を頼む」
『ご安心下さい。我々の命に代えてもお守りいたします、王様』


 カザネは、密かに1番お気に入りのハーピィで、桃色の髪と瞳がとても魅力的だ。俺、桃色の髪色好きなんだよね。


 なぜか、亜里沙がジト目で睨んでいるが、きっと気のせいだろう。


「……お兄ちゃん、カザネさんを見る目がいやらしいよ!!」


 げっ、さすがは妹、お見通しですか……そうですか。


『お、王様? 私ならいつでも大丈夫ですから……』


 顔を赤らめるカザネ。


 か、カザネさん、一体何が大丈夫なんでしょうか? 嬉しいけど、今は止めて!!


「むぅ、お兄ちゃんのバカ〜! そう言えば妹が二人もいたし? どういう事か、後で説明してよね!」


 この世界のアリサは、16歳で前世の亜里沙より年齢差が無い。髪色も明るい茶色で瞳も茶色と容姿も全く違うけれど、記憶が戻ったせいか、もはや亜里沙にしか見えない。


 ぷりぷり怒る亜里沙の頭を優しく撫でてから、先行する馬車を監視しているツバサの元へ一気に転移した。




「アリサさんに、あんな格好良いお兄さんがいたんですね……」
「本当に……あの、アリサさん、私をお兄様に紹介してくださいませんか?」


(ま、まずい……またお兄ちゃんに女性が増えてしまう。私が守らないと……)


「そ、そうですね、そのうちに、ね」


 まったく、モテ過ぎるのも困るよ、お兄ちゃんのバカ〜!




***




「ツバサ、変わりはないか?」 
『ッ! 王よ、特に変わりはないぞ。一度休憩を挟んだだけで、おかしな事もしていなかった』


「わかった、ありがとうツバサ、このまま追跡しよう」
『……あ、あの、ところで王よ、なぜ私に抱きついているのだ?』


 転移したらちょうど抱き合うような感じになってしまった。もちろん、わざとでは無い。


「たまたま転移したらこの位置だったんだ。ごめんな、いま離れ――」
『このままっ! このままで良い!! 出来れば王よ、落ちないようにもっと強く抱きしめ――いや、掴まるがいいぞ』


 顔を紅くするツバサがかわいいので、遠慮なく抱きしめる。えっ、お前飛べるだろうって? 俺は空気を読める男なんだよ。


『はうっ……王よ、そ、そこは……』


『主よ、拠点を発見したぞ』


 空中でツバサとイチャイチャ――いや、監視を続けていると、フリューゲルから念話が届く。チッ、相変わらず空気が読めない奴だ。


「わかった、そちらへ飛ぶ! ツバサ、こちらは任せたぞ」
『わかった王よ、また後で』


 名残惜しそうに、ツバサが額にキスをする。


 俺も名残惜しいが、視界をフリューゲルに切り替え、転移を発動した。


***




 バルバロス辺境伯領 マリグノの町




「……まさか、町ごと連中の拠点だったとはな……」


 マリグノは、人口5千人ほどの静かな町だが、フィステリアにほど近く、行商の拠点として、また宿場町としても栄えている。領都だけではなく、全国各地へ街道が伸びており、人身売買の隠れ蓑としては、うってつけなのだろう。


「これだけの規模ですと、おそらくは町長もグルだと考えた方が良いかと思います」


 確かにクロエの言うとおり、権力者が関わっているのは間違いないだろう。


「じゃが、そうなると、ちと面倒じゃな……プリメーラ領内なら話は早かったんじゃが」


 そう、エヴァも懸念しているが、ここはバルバロス辺境伯領だ。いくら何でも、いきなり町ごと潰す訳にはいかない――けれど、


「俺たちはツイてる。ちょうど良いのがいるぞ」


 今、話をしているのは、町の大きな酒場なのだが、ひとりだけ見るからに場違いな女性がいる。町娘の恰好をしているが、お姫様が、町娘のコスプレをしているようにしか見えない。


 さっそく怪しいコスプレイヤーに話しかける。


「あの、俺は冒険者のカケルと言います。リーゼロッテ様にお話したい事があるのですが――」
「は、はあ? リーゼロッテって誰かしら? 私はリゼ、ただの町娘よ」


 ……自分でただの町娘なんて言う人いないと思うけどね……


「ああ、鑑定で正体分かってますから、隠さないで大丈夫ですよ」
「は? だ、だったら早く言いなさいよ! 恥ずかしいじゃないの……で、何かしら? 今、潜入調査で忙しいんだけど……」


 ぶつぶつ言いながら、恥ずかしそうに顔を紅くするリーゼロッテ様。なんか可愛らしい人だな。でも潜入調査中って言って良いんですか?


「リーゼロッテ様、ちょっとお耳を拝借――」


 リーゼロッテ様は、バルバロス辺境伯の長女だ。彼女に、これまでの経緯と、この町に攫われた人々を乗せた馬車がもうすぐ到着することを話す。


「……それは本当なの?」


 真剣な表情で、顔を赤らめるリーゼロッテ様。え、俺なんかした?


(か、顔が近いのよ!! おまけに耳元でささやくなんて……)


「本当です。私の仲間が、今も監視を続けています」


「……分かったわ。よくも私を騙して悪事の数々を……絶対に許さない! 全員逮捕してやるわ!!」


 怒りに震えるリーゼロッテ様。良かった、これで無事解決――――


「……ところで、貴方達、強いのよね? 私、今ひとりなのよ……手伝ってくれない?」


 ダメだった! まさかの味方無し。なんで辺境伯令嬢が、ひとりで捜査してんの!?













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