異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

エスペランサ奪還戦 中編

 緊急脱出用の通路は、エスペランサ砦から少し離れた森の中にある。


 一見、枯れて朽ちた井戸だが、こちらはフェイクで、隠された脱出口の目印となっている。教えられた場所を調べてみると、茂みの中に金属製の取っ手があり、持ち上げると、砦へと通じる地下通路への入り口が開いた。


 リュックから松明を取りだし火を付けると、砦を目指して飛翔スキルで飛んでゆく。通路の出口には、最近開けられた形跡はなかったので、まだ敵にはこの地下通路は発見されてはいないだろう。


 強化された聴覚を頼りに、周囲を探りながら地下通路を出る。ちなみに砦の中の地図は、完璧に記憶しているので、自分が今何処にいるのか迷うことはない。


(どうやら、砦内部に魔物はいないようだな……)


 ヴァロノスの情報によれば、砦にいるのは、ゴミス伯爵を指揮官に副官の男爵1名、平魔人が95名ということだったが、


(思ったより人数が少ない気がする)


 砦内で聞こえる移動音は、せいぜい50名程度。まさか、プリメーラを別働隊が襲ってるのではと一瞬考えたが、昨夜はヴァロノスとフリューゲルに監視させていたので、その可能性は低い。


(となると、ヴァロノスが負けたことを受けて、一部撤退もしくは報告に戻ったか……思ったより慎重なんだな。怒りに任せて攻めてきてくれれば、ここで殲滅出来たんだが) 


 敵の評価を一段上げて、次の行動に移る。個別に動いている魔人から削っていく作戦だ。


 魔人の厄介な点は、非常に頑丈であること、複数の命を持つため、倒すのに時間がかかり暗殺が難しいことだ。


 しかし、ヴァロノスのおかげで、魔人の弱点も分かっている。人間でいえば丹田にあたる場所に生命核があり、ここを破壊されると再生できず絶命する。ただし生命核はとても頑丈で、通常はまず破壊できないので、弱点とはいえないかもしれないが。


(でも、俺にはデスサイズがあるからな……)


 ヴァロノスで試してみたが、デスサイズによって、まるでバターのように簡単に切断することができた。魂や、命にかかわるものだから、デスサイズにとっては相性がいいのかもしれない。つまり、俺は魔人種にとって天敵ということになる。


 ちょうど向うから魔人が一人歩いてくる。砦内ということもあり、完全に油断しきっているようだ。


 めぼしいスキルも持っていないので、魔人が目の前を通過すると同時に、背後から生命核を切断する。


 魔人は悲鳴も上げられず、上下真っ二つになって絶命した。デスサイズで魔人の魂を吸収する。


『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 


(次は食糧庫だな……)


 近くの食糧庫に魔人が3人いる。


(む、1人興味深いスキルを持っているやつがいるな……)


 【料理(極)】


 おそらく魔人帝国屈指の天才料理人に違いない。よしっ! こいつは召喚契約して料理を作らせよう。なかなか得難い人材を見つけたぞ。


 食糧庫の中で、魔人たちは、こちらに気付くこと無く、食材の吟味をしている。


『料理(極)を記憶しました』


 なるほど、食材選びもスキルを使っているんだな……料理を作らせる手間が省けてラッキーだ。


 音も無く背後から接近し、2人を立て続けに切断、驚いて振り返った3人目も呆気なく切り捨てる。


『レベルが上がりました』 


 スキル持ちの3人目以外の魂を吸収し、更にレベルを上げる。


『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 


『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 


(さてと、どんどんいこうか……)


 少し離れた大部屋に、10人ほどの動きがある。


 直感だが、どうしても気になるので、順番を変えて、先に確認しに行くことにした。


『気配察知を記憶しました』


 部屋に近づくと、気配察知の範囲に入ったようだ。部屋の入口に立つ見張りのスキルのようだが、こちらは複合スキルを使用しているため、気付かれることはない。


(わざわざ見張りを付けるとは……何か重要なものでもあるのか?)


 見張りに接近し、一撃で倒す。中から話し声が聞こえてくる。




『なあ、こいつどうせ死ぬんだから、味見して良いか?』
『駄目に決まってるだろ!
術式が暴走したらどうするつもりだ?』
『チッ、せっかく生意気な女貴族様を辱められると思ったのによ』


 話を聞いていると、どうやらスパイ活動がバレて捕まった魔人のようだ。


 敵の敵は味方と言うし、とりあえず助けてみるか。術式とやらも気になるしな。


 魔人の数は8人、少し多いが、大したスキルもない雑魚魔人だ。何とかなるだろう。


 一気に部屋に飛び込み、2人を切り倒す。返す刃で更に2人――ここで威圧発動、動きの止まった残りの魔人を全滅させる。


『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 


 ……それにしても、レベルがよく上がる。まるでボーナスステージだな。更に魂を吸収してレベルを上げる。


『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』 
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』


 部屋の奥で鎖に繋がれている女魔人に近づき、繋がれていた鎖をデスサイズで切断する。




【名 前】 ソニア
【種 族】 魔人(貴族種) 
【年 齢】 16
【身 分】 魔人帝国子爵
【序 列】 147位
【状 態】 魔刻印(爆裂)


【レベル】 59
【体 力】 8984
【魔 力】 9982
【攻撃力】 9987
【耐久力】 8991
【素早さ】 8439
【知 力】 9394


【スキル】 瘴気操作 魔物支配 物理耐性(強) 暗黒魔法(中級)隠密 転移(短)


 ヴァロノスの上位互換といったところか。魔人特有の金髪に金色の瞳、肩まで伸びた少しウェーブのかかった髪と気の強そうな少し吊り上がった目が特徴的な美少女だ。


 突然乱入してきた俺を、困惑した表情で見つめている。


「大丈夫かソニア? 俺はカケルだ。なぜ捕まっていたのか、良かったら事情を聞かせてくれないか」
『……助けてくれてありがとう。知ってるみたいだけど、私はソニア。魔人帝国子爵よ』


 ソニアの話によると、ソニアは、侵略戦争に反対している勢力の一人らしい。陰ながら情報を集めていたが、先遣隊のあまりの非道な行為を見過ごせず、ひそかに人々を逃がしているところを見つかり捕らえられたのだとか。


「そうか……魔人帝国にも、ソニアみたいな良心的な人たちがいるんだな。国ごと滅ぼそうと思ってたけど、そうしなくても良さそうだな」


『わかってくれてありがとう……でも、私たちの勢力はとても小さいの。皇女殿下が後ろ盾でなかったら、とっくに潰されて
いたでしょうね』


 アリーセ第3皇女殿下は、魔人帝国において最後の良心のような存在だという。力がすべての魔人帝国において、優しさや思いやりを第一に考える方なのだとソニアは言う。


 その人柄ゆえ人気も高いが、疎ましく思う連中もまた多い。ソニアもまた、そんなアリーセを命がけで守ろうとしているのだ。


『私が生きているのは、すべてアリーセ様のおかげなのです。お願いします、魔人帝国と戦争になっても、どうかアリーセ様だけは助けて欲しいのです。今も絶望的な状況の中、必死に戦争を止めようと頑張っていらっしゃるのです!! 私にはもう、そうすることができないから……』


「どうして? よかったら俺も力になるぞ。そのアリーセ殿下が帝位に就くなりすれば、戦争も終わるんだろ?」


 ソニアはその金色の瞳を揺らして一筋の涙を流す。


『私はもう助かりません……生命核に刻まれた魔刻印がすでに発動しているから……』









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