異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

黒の死神

「おはようございます! カケル様」
「おはよう、クラウディア」


 ギルドに入ると、受付のクラウディアのところへ向かう。


 特別依頼が出されている為、皆、朝からゴブリン狩りに出ており、ギルド内に残っている冒険者の数はまばらだ。


 ん? 今日のクラウディア、メガネかけてないのか……すげえかわいい。


「ギルドマスターがお待ちです。2階の会議室へご案内しますね」


 俺の腕に手を回しエスコートするクラウディア。なんか距離近くない?


 ざわつく受付嬢たち。


『クラウディアがメガネを取るなんて……』
『あまりにも可愛すぎるクラウディアが、雑音を減らすためにあえてかけていたあのメガネを外す日がくるとは……』
『おまけに密着してのエスコートとか、本気なのね、クラウディア……』


「あっ、ごめんなさいカケル様」
「おっと、気をつけろよ」


 つまづいたクラウディアを咄嗟に受け止めると、ちょうど抱き合うような体勢になる。


『あ、あざとい、あざと過ぎるわ』
『悔しいけど、クラウディアがやると華があるわね……』
『べ、勉強になります』


「すみません……ちょっと足首を捻ってしまったようです」
「大丈夫か? ほら、こっちおいで」
「……えっ」


 つい、いつもの癖で、クラウディアをお姫様抱っこしてしまう。
 クラウディアは、真っ赤になってあわあわしている。いつもの彼女とのギャップが……やばい。


『……あれが伝説のお姫様抱っこですか。初めて見ました』
『キャア~うらやましいですぅ~』
『異世界の勇者が好んで使うという、あの伝承は間違っていなかったのね……」


「ごめん、いきなりびっくりするよな。一旦下そうか?」
「っ!? だ、ダメです、こ、このままお願いします」
「そ、そうか? わかった」




「なあ……なに、あのコント?」
「さあ……微笑ましいからいいんじゃないの」
「クラウディア……頑張って!」


 周りからは、とても生暖かい視線をいただきました。 




「ギルドマスター。皆さまを案内してまいりました」


「お、おう……。抱っこされながら案内言われてもな。何してんのクラウディア!?」


 呆れるギルドマスター。でも降りようとしないのね。クラウディアさん……


「だ、旦那様? 何故クラウディアだけ抱っこしているのだ。わ、私も……」


 いや、騎士団長が抱っことか言ったらダメでしょ!?


「大丈夫だ、セレスティーナ。あとでいくらでもしてやろう」
「ほ、本当だな? 嘘ついたら怒るぞ」


 ……なんか幼児退行してないか? でも我慢するなっていったの俺だしな。かわいいからいいか。


「あー、そろそろ始めてもいいか? 邪魔して悪いなセレス騎士団長殿」
「問題ない。始めてくれ、ベルナルド殿」


 おおっ、さすが騎士団長、切り替えが早い。


「現在継続中の特別依頼だが、今のところ順調に調査がすすんでいて、一部のエリアを除いて、ゴブリンの掃討は完了しつつある。そして、残ったエリアに敵の本拠地とボスがいると思われるが――」


 ギルドマスターが地図を広げる。


「どうやら、プリメーラの北のこのあたりから、増援が絶えず送り込まれているらしい」


「しかし、そこは街道がありますし、監視体制も敷かれているはずでは?」


 クラウディアが疑問を呈す。


「うむ、その通りだ。だが、実際侵入されているとなると――」
「なるほど、地下にトンネルでも掘ったんでしょうね」


「さすが、カケルだな。我々もそう考えている。したがって、今回すべきことは、本拠地の殲滅およびボスの討伐、そして侵入経路を発見し潰すことだが、可能であれば、侵入経路の先にある敵の拠点の発見および撃破まで出来れば申し分ない」 


「ギルドマスター、問題ありません。ボスを倒し、御主人様の力で手下にすれば、情報は丸裸です」


「おう、頼もしいなクロエ。しかし、カケルの力は凄まじいな。味方で良かったぜ」


 いつの間にか、俺がゴブリンのボスを召喚獣にする流れになってる……いや、出来るけど、ゴブリンは嫌なんだよな。生理的に? 仕方ない、空気読むか。使わなければいいだけだしな。


「お任せください。必ずや期待に応えてみせましょう」


 ということで、まずは速攻でボスを倒し、情報を得ることで決定した。


「旦那様、ご武運を。案内は、部下のアンドレアがする。本当は私が同行したいのだが……」


 不満そうなセレスティーナは、年相応に見えて可愛いな。


「セレスティーナは、遠征の準備だろ? 大丈夫、案内の騎士たちも含めて、誰一人欠けることなく帰ってくる。抱っこはその時で良いか?」


「っ?! あ、ああ、楽しみにしている」


 赤くなるセレスティーナを今すぐ抱っこしてやりたいが、みんなを待たせる訳にはいかないので、我慢だ。


 1階に降り、受付でクラウディアを降ろす。当然、さっき、セレスティーナに偉そうなこと言ってた時も、クラウディアを抱っこしていた。


「カケル様、せっかくですので、パーティを登録してはいかがですか? 時間もさほどかかりませんし」


 クラウディアが、そう提案してくる。


 ギルド規約は全て記憶しているが、確かにパーティを組むとメリットが多い。


 みんなに聞いてみると、全員賛成だったので、パーティを登録することにした。


「はい、これでカケル様のパーティ【黒の死神】登録完了です。ご確認下さい」


「ん? ちょっと待て、クロエ、シルフィ、サラ、エヴァは良いとして、何でさり気なくクラウディアの名前まで入ってるんだ?」


「あら、カケル様は変なところで細かいんですわね。何か問題でも?」 


 クラウディアのメガネを外した濃紺の瞳は、有無を言わせない迫力がある。魔眼か? 魔眼なのか?


「い、いや、クラウディアが良いのなら、問題ない」
「良かったです。それではカケル様、不束か者ですが、これから末永くよろしくお願いいたします」


 えっ、これパーティ登録だよな?婚姻届じゃないよね?!


「あらっ! カケルくん、パーティ登録したの? 私も入れて!」


「カタリナ、パーティリーダーは、他のパーティに入れません」


「え〜、なんでそんな意地悪するの? クラウディアだって入ったんでしょ」
「……意地悪ではなく、規則です。それにギルド職員がパーティに入ってはいけないという規則はありません。どうしてもと言うなら、クランでも創ったらいかがです?」


「クランかぁ……うん、良いかもしれないね〜」


 紫紺の瞳を瞬き首をかしげるカタリナさん。どう見ても二十歳ぐらいにしか見えないけど、40歳なんだよな。美魔女とかいうレベルじゃない。


 シルフィたちもそうだけど、この世界、魔力の多い人間は、見た目も若く、長生きらしい。アルフレイド様も、見た目20代だけど、50代だしな。


 ともあれ、俺たち【黒の死神】初めての依頼だ。絶対成功させないとな。



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