異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

出発の朝

「いや~、良く眠れたぜ。朝風呂も最高だし、朝食は美味いし、ギルドも近い。最高だなカケル」


 そういってばんばん背中を叩いてくるのは、ウサギの耳、通称ウサ耳のサブリーダー、アーロンさんだ。見た目は170cmそこそこで紫色の髪は短く刈りそろえている。とても強そうに見えないのだが、れっきとしたA級冒険者だ。高い索敵能力と盗賊スキルを持ち、それでいて、戦闘も魔法も高いレベルでこなす、まさに万能戦士だ。


「いくら気に入ったからって、入り浸らないで下さいよ」
「わかってるって、それより、昨日は姉貴が迷惑かけて悪かったな」


「別に構いませんよ。カタリナさんも楽しめたなら俺も嬉しいです」
「だが、あの姉貴がここまで男に気を許すなんて、未だに信じられん。カケル、お前すごいな」


「多分、ラビのおかげじゃないですか? カタリナさん、ウサギ大好きですよね」
「ああ、あれはもう病気だな。俺たちがパーティ名でどれだけ恥ずかしい思いをしてきたか」


 そう言いつつも、ウサ耳の人たちは、カタリナさんが大好きだ。その気持ちは俺もなんとなくわかる。わかるけど、あのウサ耳のパーティ装備だけは恥ずかしくて無理だ。パーティ名より、ウサ耳の方が恥ずかしいと思うのは、俺が異世界人だからだろうか? 厳つい戦士がウサ耳付けて戦うとか誰得なんだと言いたい。


 そのカタリナさんだが、ものすごく寝起きが悪かった。幸せそうにラビに埋もれていたので、起こすに起こせなかったともいえるけど。


 あんまり幸せそうなので、ウサギの召喚獣を1匹プレゼントしようかと思ったら、パーティの人たちに仕事にならなくなるからと、全力で止められた。確かに。


 一方のセシリアさん率いるネコの尻尾も、やはり同じぐらいキツイ。ネコ耳装備はもちろん。尻尾まで付けなければならない分、若干こちらの方がハードルが高いかもしれない。


 まだ、この世界でネコに出会っていないが、セシリアさんのネコ好きは、カタリナさんを凌ぐとも言われている。恐ろしいので、どうかこのままネコと出会いませんように。


 サブリーダーのダニエルさんによれば、A級冒険者なのに、迷子の飼いネコを探す依頼を勝手に受けてくるので、困っているらしいけど、ネコ好きに悪い人はいないから許してあげて欲しい。


「カケル、おはよう! 昨日はよく眠れたか?」


 セシリアさんが、朝の鍛錬から戻ってくる。淡いピンク色の髪を無造作に束ねたセシリアさんの額からは大粒の汗が流れ落ち、大きい胸の谷間には汗が溜まっている。


「おはようございます。セシリアさん。お風呂用意出来ているそうなので、良かったらどうぞ」  
「おおっ、悪いな、一緒に入ろうぜ、カケル」


「本当に残念なんですが、さっき入ってしまったんですよ」
「そうか、じゃあまた今度な」 


 断る言い訳ではなく、残念なのは本心だ。くっ、アーロンさんの誘いに乗らなければ……。


 そんな感じで、セシリアさんは、とてもサバサバした、気持ちの良い人だ。


 クロエと同じレイピアの使い手で、魔法もこなす魔法剣士として名を馳せている。


 ところで、カタリナさんも、セシリアさんも、なぜか獣人には興味を示さない。


 嫌いというわけではないらしいが、パチモノ感が駄目らしい。正直よくわからない。


 獣人と言えば、猫の獣人には会ってみたい。


 本当に語尾に、〜にゃ、と付ける獣人がいるのか、確認しなければ、異世界に来た意味が無いではないか!


「朝から何やらくだらない事を決意されている御主人様、おはようございます」


 クロエさん……あなたの匂い鑑定スキルすごいわ。残念ながら、ユニークスキルなので記憶出来なかったけど。


 ちなみに、スキルの中でも、ユニークスキルは、個人の魂が具現化したものなので、記憶出来ない。サキュバスや吸血鬼などが持つ魅了のような種族固有スキルは記憶可能だ。


「なんのことかわからないけど、おはようクロエ」


「ふふっ、御主人様、今日のクエスト頑張りましょうね!」
「なんだか上機嫌だな。遠征が決まったからか?」
「……はい。御主人様には隠せませんね」


「なあ、クロエ」
「はい」


「昨日、セレスティーナに言ったこと、当然クロエも含めてだからな。俺の前では我慢しなくていいし、どんどん利用してくれて構わない。メイドの願いを叶えるのは、主人の務めだろ?」


「ご、御主人様……私――」


 そこから先は、涙で声にならなかった。


 クロエがセレスティーナやクラウディアと同じ王女であることは、鑑定で知っていた。


 詳しい事情はわからないが、クロエはクロエなりに、国や家族を助ける方法を探していたのだろう。


 真面目で不器用なクロエのことだから、俺に迷惑かけてまで、助けてって言えなかったんだろうな。


 何か俺の周りに、王女様多過ぎな気もするけど、結局やる事は変わらない。


 みんなまとめて、幸せにしてやるまでだ。


「……カケルくん、クロエちゃんとイチャイチャしてるところ申し訳ないんだけど、みんな待ってるから、ね」


 カタリナさんに呼ばれて我に返る。クロエも顔を真っ赤にしてわたわたしている。かわいい。


「お待たせして申し訳ないです。さぁ、行きましょう、幸せを探しに!」


「? 行くのはギルドだけど、やる気があるのは素敵ね! 頑張りましょう」


***


冒険者ギルドにて


「なんだか私だけ出遅れてるような気がするのだけれど……」


 クラウディアが苦悩していたとかいないとか。










 

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