異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
死神 降臨
小鳥のさえずりとともに穏やかな朝がやってくる。今日も絶好の魔物狩り日和だわ……
私は不知火美琴。元アイドルの勇者よ。女神様に送り込まれたこの異世界で、世界を救うために毎日魔物と戦っている。今のところ、世界というより、この街を守るので精いっぱいだけど。
「……夢じゃなかったんだ」
私は自分の胸に手を当てて感涙に咽ぶ。眼下には見たことがないような谷間が形成されているのだ。
やった! 谷間だよ、念願の谷間。神様嘘つかない。イリゼ様、約束守ってくれたんだ。
だが、不安だ……これはあくまで報酬としてもらったもの。女神様は何と言っていたか? 確か、身体を借りるとか何とか……。
『おはよう、美琴』
思案する美琴に突然声がかかる。周りを見回すが、誰もいない。
「うぇっ、だ、誰?」
美琴は、お化けや幽霊があまり得意ではない。
声は美琴の頭の中から聞こえてくる。
『私は死神のミコト。今日からよろしく』
「し、死神? もしかして、身体を借りるって?」
『そう。この世界にいる間、美琴の身体を貸してもらう』
「やっぱり! 死神とかいるんですね!」
『……あまり嫌がってない?』
「死神と話せるとか、マンガの主人公みたいじゃないですか? うわあ、テンション上がる」
『……喜んでもらえるなら何より。基本的には大人しくしてるから、安心するといい』
「わかりました。でも、名前同じなんですね! きっと運命的な何か――」
『……単なる偶然』
「で、ですよね〜、ミコトさんはいつまでこちらの世界にいらっしゃるんですか?」
『……? 美琴が死ぬまでだけど』
「……へ? 死ぬまでって、一生ってことですか?」
『他にどんな意味があるかわからないけど、そう』
「……わ、わかりました。これからよろしくお願いします」
『……ん、よろしく』
「ところで、ミコトさん……ミコトさんのこと、お姉ちゃんって呼んでもいいですか? 私、ひとりっ子だったから、そういうのに憧れが――」
『……嫌』
「…………」
「と、ところで、ミコトさん、身体を借りてまで、この世界に何の御用が?」
『ん、カケルに逢いに行く』
「カケルさん? 何者です?」
『私の伴侶になる人。私と一緒になるために、この世界で神を目指してる。美琴と同じ日本人』
「素敵! 世界や身分の違いすら超える恋ってやつですね〜。頑張って下さいね! 私全力で応援しますから」
『……美琴、他人事みたいに言ってるけど、あなたが、カケルと結婚するの』
「へ……な、な、な、何でですか! あ……もしかして、そのために身体を?」
『……理解が早くて助かる。とてもオーク並みの知力とは思えない』
「あのステータス、絶対おかしいですって! そ、それより、私、カケルさんに会ったこともないのに、結婚だなんて……」
『大丈夫。カケルとなら絶対に幸せになれる。すごい優しくて、それに、Hも上手』
「そ、そんな生々しい情報いりません! 第一、私なんかと結婚してくれるんですかね? 見た目は自信ありますけど、性格こんなんですよ?」
『大丈夫。美琴はかわいい。私と比べられるのは気の毒だけど。それに、少しだけカケルに似てる。きっと、全部まとめて幸せにしてくれる。カケルはそんな人』
「……そうなんだ。なんかカケルさんにちょっと興味出てきたかも! ミコトさん、カケルさんのこと、私にもっと教えて下さい」
なんて事を言ったのが運のつきだった。その後、無茶苦茶カケルさんの自慢話をされた。
「くらえ、聖剣エクスカリバーの一撃!」
私は今日も街に攻め寄せた魔物をひたすら倒す。
「ふぅ、何とか倒したわ。ミコトさんは手伝ってくれないんですね?」
『ルール違反になるし、世界のバランスが壊れるから無理。アドバイスくらいならしてあげる』
「ほぇ〜、やっぱり神様はすごいんですね。さっきの魔物なんて余裕ですか?」
『あの程度なら、1秒もかからない』
「……私が必死こいて半日かかったんですがね」
「ねェ、ミコトさん……なんで私なんかが勇者になったんですか? もっと強くて、才能があって、頭が良くて、例えばカケルさんとか? そんな人が勇者だったらもっとたくさん助けられたのに……」
『自信を持つと良い。勇者には、最も相応しい魂が選ばれる。美琴は自覚が無いみたいだけど、普通はいきなり魔物を倒したり出来ないし、沢山の死体や絶望的な状況に耐えられない』
(そもそも、美琴でなければ、最初に飛ばされた状況で死んでる)
「そ、そうかな? えへへへ」 
……美琴の人生は最後まで不幸に彩られていた。普通なら世界を恨みながら闇に堕ちてしまうほどに。でも美琴はそうならなかった。切り替えが早く、しなやかな強さを持っている。長年死神をやっているけれど、こんな魂そうそうない。
『そう。だからとっとと強くなって、早くカケルに会いに行く』
「はーい、頑張ります」
本当に素直で良い子。イリゼはあんなに多忙なのに、いつも美琴の事を見ていた。私の親友はああ見えてとても心優しい女神だ。きっと今回の事も美琴のためという側面もあったのだろう。多分。
そういえば、カケルも勇者にふさわしい資質をもった魂だった。不幸な事故で亡くなったという条件を除いては。私に出会えたのだから、断じて不幸な事故ではない。ふふ。
***
生まれてすぐ両親を亡くし、親族をたらいまわしにされた挙句、ひどい虐待を受け施設で保護。そこから誰よりも努力してついにトップアイドルに。でも、枕営業を断られた腹いせにデマ報道を流されて、最後は刺されて死んだ。
別に不幸な境遇に同情して勇者に選んだわけじゃない。他にも不幸な人は山ほどいるからね。だけど誰も恨まず、誰のせいにもしない。そんな綺麗な魂めったにない。
本当は男がよかったんだけど……仕方ないよね。だってそんな魂が次こそ幸せになれるように、私はそのために、この世界を創ったのだから。
美琴、今度こそ幸せになりなさい……。
イリゼは、そう呟くと女神の多忙な仕事に戻っていった。
私は不知火美琴。元アイドルの勇者よ。女神様に送り込まれたこの異世界で、世界を救うために毎日魔物と戦っている。今のところ、世界というより、この街を守るので精いっぱいだけど。
「……夢じゃなかったんだ」
私は自分の胸に手を当てて感涙に咽ぶ。眼下には見たことがないような谷間が形成されているのだ。
やった! 谷間だよ、念願の谷間。神様嘘つかない。イリゼ様、約束守ってくれたんだ。
だが、不安だ……これはあくまで報酬としてもらったもの。女神様は何と言っていたか? 確か、身体を借りるとか何とか……。
『おはよう、美琴』
思案する美琴に突然声がかかる。周りを見回すが、誰もいない。
「うぇっ、だ、誰?」
美琴は、お化けや幽霊があまり得意ではない。
声は美琴の頭の中から聞こえてくる。
『私は死神のミコト。今日からよろしく』
「し、死神? もしかして、身体を借りるって?」
『そう。この世界にいる間、美琴の身体を貸してもらう』
「やっぱり! 死神とかいるんですね!」
『……あまり嫌がってない?』
「死神と話せるとか、マンガの主人公みたいじゃないですか? うわあ、テンション上がる」
『……喜んでもらえるなら何より。基本的には大人しくしてるから、安心するといい』
「わかりました。でも、名前同じなんですね! きっと運命的な何か――」
『……単なる偶然』
「で、ですよね〜、ミコトさんはいつまでこちらの世界にいらっしゃるんですか?」
『……? 美琴が死ぬまでだけど』
「……へ? 死ぬまでって、一生ってことですか?」
『他にどんな意味があるかわからないけど、そう』
「……わ、わかりました。これからよろしくお願いします」
『……ん、よろしく』
「ところで、ミコトさん……ミコトさんのこと、お姉ちゃんって呼んでもいいですか? 私、ひとりっ子だったから、そういうのに憧れが――」
『……嫌』
「…………」
「と、ところで、ミコトさん、身体を借りてまで、この世界に何の御用が?」
『ん、カケルに逢いに行く』
「カケルさん? 何者です?」
『私の伴侶になる人。私と一緒になるために、この世界で神を目指してる。美琴と同じ日本人』
「素敵! 世界や身分の違いすら超える恋ってやつですね〜。頑張って下さいね! 私全力で応援しますから」
『……美琴、他人事みたいに言ってるけど、あなたが、カケルと結婚するの』
「へ……な、な、な、何でですか! あ……もしかして、そのために身体を?」
『……理解が早くて助かる。とてもオーク並みの知力とは思えない』
「あのステータス、絶対おかしいですって! そ、それより、私、カケルさんに会ったこともないのに、結婚だなんて……」
『大丈夫。カケルとなら絶対に幸せになれる。すごい優しくて、それに、Hも上手』
「そ、そんな生々しい情報いりません! 第一、私なんかと結婚してくれるんですかね? 見た目は自信ありますけど、性格こんなんですよ?」
『大丈夫。美琴はかわいい。私と比べられるのは気の毒だけど。それに、少しだけカケルに似てる。きっと、全部まとめて幸せにしてくれる。カケルはそんな人』
「……そうなんだ。なんかカケルさんにちょっと興味出てきたかも! ミコトさん、カケルさんのこと、私にもっと教えて下さい」
なんて事を言ったのが運のつきだった。その後、無茶苦茶カケルさんの自慢話をされた。
「くらえ、聖剣エクスカリバーの一撃!」
私は今日も街に攻め寄せた魔物をひたすら倒す。
「ふぅ、何とか倒したわ。ミコトさんは手伝ってくれないんですね?」
『ルール違反になるし、世界のバランスが壊れるから無理。アドバイスくらいならしてあげる』
「ほぇ〜、やっぱり神様はすごいんですね。さっきの魔物なんて余裕ですか?」
『あの程度なら、1秒もかからない』
「……私が必死こいて半日かかったんですがね」
「ねェ、ミコトさん……なんで私なんかが勇者になったんですか? もっと強くて、才能があって、頭が良くて、例えばカケルさんとか? そんな人が勇者だったらもっとたくさん助けられたのに……」
『自信を持つと良い。勇者には、最も相応しい魂が選ばれる。美琴は自覚が無いみたいだけど、普通はいきなり魔物を倒したり出来ないし、沢山の死体や絶望的な状況に耐えられない』
(そもそも、美琴でなければ、最初に飛ばされた状況で死んでる)
「そ、そうかな? えへへへ」 
……美琴の人生は最後まで不幸に彩られていた。普通なら世界を恨みながら闇に堕ちてしまうほどに。でも美琴はそうならなかった。切り替えが早く、しなやかな強さを持っている。長年死神をやっているけれど、こんな魂そうそうない。
『そう。だからとっとと強くなって、早くカケルに会いに行く』
「はーい、頑張ります」
本当に素直で良い子。イリゼはあんなに多忙なのに、いつも美琴の事を見ていた。私の親友はああ見えてとても心優しい女神だ。きっと今回の事も美琴のためという側面もあったのだろう。多分。
そういえば、カケルも勇者にふさわしい資質をもった魂だった。不幸な事故で亡くなったという条件を除いては。私に出会えたのだから、断じて不幸な事故ではない。ふふ。
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生まれてすぐ両親を亡くし、親族をたらいまわしにされた挙句、ひどい虐待を受け施設で保護。そこから誰よりも努力してついにトップアイドルに。でも、枕営業を断られた腹いせにデマ報道を流されて、最後は刺されて死んだ。
別に不幸な境遇に同情して勇者に選んだわけじゃない。他にも不幸な人は山ほどいるからね。だけど誰も恨まず、誰のせいにもしない。そんな綺麗な魂めったにない。
本当は男がよかったんだけど……仕方ないよね。だってそんな魂が次こそ幸せになれるように、私はそのために、この世界を創ったのだから。
美琴、今度こそ幸せになりなさい……。
イリゼは、そう呟くと女神の多忙な仕事に戻っていった。
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