異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

秘密の会談

 受付に並ぶ列は、まだまだ途切れる様子はない。


(まだ、お昼も食べてないんだけど……)


 内心ぼやいてみるが、それは皆同じなので、言ってもしょうがないことだ。ならば少しでも早く終わらせてしまおう。私はまだ……本気を出していないのだから! なんちゃって。さっ次々……。 


「クラウディア! ギルマスが呼んでるよ。急いで3階の応接室に来て欲しいってさ」


 おおっ、これはラッキー? それとも面倒事?……まあ、受付を離れられるなら何でもいいけど。


 受付嬢たちの羨ましそうな視線を受けながら
、私の列に並んでいた冒険者たちからは、この世の終わりのような絶望の視線を送られながら3階へ向かう。


 私って、意外と人気があるのよ。


 応接室に入ると、ギルマス、アルフレイド伯爵、セレスティーナが待っていた。何気にすごいメンバーね。


 私もバカではないので、メンツを見れば呼ばれた理由など直ぐに察しがつく。


「クラウディア! 黒目黒髪の異世界人が現れたというのは本当なのか?」


 ほらね。セレスティーナが食い気味にたずねてきた。


「本当よ。礼儀正しくて、格好良い青年だったわ」


 3人とも目を見張り驚いている。私だって本人に会わなければ信じられなかったでしょうね。


「それで、彼は、カケルくんはどうだった? 鑑定したんだよね?」 


「はい、ですが、現時点ではC級冒険者ほどのステータスでした。魔力などはA級魔導師なみにありましたが」


「魔法特化型なのかな? 正直ちょっと期待はずれだね」


 アルフレイド様が、ガッカリしてるけど、それ午前中の私だから真似しないで。


「アルフレイド様、彼はこの世界に来て、まだ3日目だそうです。驚くべきことですが」


「……それが本当ならとんでもない成長力だね。スキルの方はどうだい?」


「……正直、一番驚いたのはスキルです。見た事も聞いた事もない、能力もわからないスキルを複数所有していました」


「なるほど、異世界人が持つと言われるユニークスキルってやつだろうな」


 ギルマスが、興味深そうに頷く。


「おそらく、彼のスキルだと思いますが、私が鑑定した後、持っていなかったはずの鑑定スキルを所有していました。彼は、私に対してはスキルを行使していないはずなのですが」


「……まさか、受けたスキルを身につけることができるスキルなのか?もしそんな馬鹿げたスキルがあるのなら、間違いなくカケルくんは規格外の存在になるね……」


「そういえば、カケルくんは言葉を話せるんだよね。そうなると勇者なのかな? 勇者以外の異世界人は、言葉に苦労した人が多いらしいから」


 アルフレイド様が、目をキラキラさせている。そういえば、勇者に憧れてたんでしたっけ。


「それは分かりませんが、あのクロエがすごく懐いていたので、悪い人でないことは間違いないですよ」


「そ、そうか……悪い人ではないのだな」


 おや? セレスティーナの顔が赤い。さっきから大人しいと思ったら。後で詳しく話を聞く必要がありそうね。


「それで、カケルくんはどこに行ったのかな?」


「F級の依頼で、セネカ村に角ウサギを駆除しに行っています」


「異世界の英雄候補に角ウサギの駆除をやらせたのか? 勿体無い」


「いえ、ただの駆除依頼ではないのです。ディエゴ村長から南の森の異変を調査したいから腕利きの冒険者を紹介して欲しいと頼まれていたので」


「何? 南の森の異変だと? 何も聞いてないぞ」


 ギルマスが不満げに顔をしかめる。


「ディエゴさんの長年の勘らしいですから、まだ何か起きた訳ではないのですが――」


「……西の森の動きと関連があるかもしれないって?」


「はい。あの時点では、西の森の件が伝わっていなかったのですが、今となっては、その可能性もあるかと」


「そうなると、今回はカケルくんが行ってくれて良かったかもしれないね。結果的に何もなければ尚良いけど」


「ん? なんだか下が騒がしいな……クラウディア、ちょっと様子を見てきてくれないか?」


「はいはい、わかりました、ちょっと見てきます」


 応接室を出て、下に降りると、聞き慣れた声が聞こえてくる。


(クロエ?)


 慌てて受付まで戻ると、受付嬢と揉めているクロエの姿があった。


 汗だくで、体中すり傷だらけになっている。呼吸も荒い。


「だから、早くギルドマスターを呼んで! 緊急事態なの」
「ただいま、ギルドマスターは大事な話し合い中でして……」
「じゃあ、クラウディアを呼んで」
「クラウディアも同席しておりまして……」
「…………わかりました。力づくで通らせてもらいます」


 ……やばい、暴発する。


「クロエ! ストップ! 話なら聞くから、落ち着いて」
「……良かった、クラウディア、ギルドマスターに会わせて。緊急事態なの」


***   


 クロエの報告は衝撃的なものだった。


「オークジェネラルが率いた300体のオークだと……くそっ、西の森に加えて、南の森もか」


「悪い予想が当たってしまったね。でも、早めにわかってよかったともいえる。すぐに南部一帯に連絡を入れよう。ベルナルド、現在ギルドですぐに動かせる上級冒険者はどれぐらいいる?」


「ウサギの耳とネコのしっぽ。どちらもA級冒険者パーティーで実力は確かだ」
「……ごめんね。もうちょっと強そうなパーティーいないのかな?」


「アルフレイド様、名前は確かにアレですが、実力は本物ですよ」
「ま、まあクラウディアが言うなら信じるよ」


「西の森は、予定通り騎士団と冒険者が連携して対応、南の森は、クロエちゃんと、A級冒険者パーティー2組の少数精鋭を先行させようと思う。私が出ても構わないが、敵の狙いがエスペランサ砦であるというのなら、私とセレス殿はここから動かないほうがいいだろうしね」


「クロエ……すまない。本当ならば私も行きたいのだが」


「大丈夫です。貴方は絶対に砦を守って。そのために私は御主人様を置いてここまで来たのだから……」




***




 その後、対策が話し合われ、まずはA級冒険者2組とクロエが先発隊としてすでに出発した。


 先行メンバーの目的は、オークジェネラルの討伐。Aランクであるオークジェネラルは、通常A級冒険者がパーティー単位で討伐にあたる必要がある強力な魔物だ。下手な戦力を送り込んで被害を拡大させるより、少数で確実に倒せるメンバーを送り込むのは、妥当な判断だといえるだろう。


 後発部隊は、各町村の警護に優先的にあたることになる。


 オークの目的が女性の確保である以上、一刻の猶予もない。すでに多数の被害者が出ていることを想定して、救護班も準備をすすめている。


「カケルくん、頼むから無茶しないでくれよ。君になにかあったら取り返しがつかないのだから」


 アルフレイドは、愁いを帯びた端正な顔を暗くする。この場所から動けない自分に歯がゆさを覚えるが、敵の出方がわからない以上、うかつに動くわけにはいかないのだ。


 冒険者の多くが出払い閑散としたギルドを出ると、執事のセバスが馬車を準備してすでに待っている。


「セバス、騎士団本部へいくよ。砦の防衛体制を考え直す必要があるかもしれない」








 

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