異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

ギルド特別依頼発令

 プリメーラ 領主執務室


「アルフレイド様、御多用の中、時間を頂き感謝いたします。」 


 カルロス商会会頭カルロスが、恭しく頭を下げる。


「久しいなカルロス、てっきり死んだと思っていたけど、案外しぶといんだね」


 アルフレイドは、その端正な顔に親しげな笑みを浮かべ、カルロスにウインクする。


 大抵の女性は、それだけで舞い上がってしまうのだが、あの団長殿には全く効果が無い。


「ハハハッ、正直なところ、本当に死ぬところでしたよ」


 豪快に笑うカルロスの言葉に嘘は無い。


「まあ、生き延びたところで、この国の未来は決して明るく無いがな」


 アルフレイドは自嘲気味に笑う。


「それで、世間話をしに来た訳でもあるまい。何があった? 死の淵から舞い戻ってきた事と関係があるのだろう?」


「はい、ある若者が、西の森で、ゴブリンの群れから私の息子家族を救出し、さらには不思議な霊薬で私を助けてくれたのです」


「それは素晴らしい! 西の森の件は私も聞いている。その若者に私も会って礼を言いたいな」


「続きがございます。その若者ですが……黒目黒髪の異世界人でございました」


「ッ!? な、なんだって? それは本当かい、カルロス!」


 アルフレイドは顔色を変え、思わず大きな声を上げてしまう。


 普段の冷静沈着な彼を知るものが見れば、到底信じられないほど、顔が紅潮し、興奮している。


「はい、誓って真実にございます。まずはアルフレイド様にお知らせせねばと思いまして」


「そうか……知らせてくれて感謝するよ、カルロス。それで、その異世界人はどこに?」


「当面この街に拠点を置くそうなので、私が拠点の提供を持ちかけ、現在私の屋敷に滞在してもらっています」


「でかした! カルロス、直ぐに連れて来てよ」


「……申し訳ございません。カケル殿は、クロエ殿と冒険者ギルドへ向かいました」


「クロエちゃん? あの白銀の悪魔殿か。なぜ彼女が異世界人、いやカケルくんと一緒にいるんだい?」


「クロエ殿には、以前から頼まれておりましたので。黒目黒髪の者の情報があれば知らせて欲しいと。今は自ら志願してカケル殿のメイドとなっております」


「なるほど……確かに彼女には必要だろうな。しかしメイドとは……普段の姿からは想像も出来ないけど。まあ、それだけの覚悟があるんだろうね……彼女の目的も私と同じ延長線上にあるからいいけどさ――セバス!」


「はっ! すでに馬車は用意してあります」


「さすがだね。セバス、冒険者ギルドへ行くよ」


***


 カケル様とクロエを見送った後、冒険者ギルドはちょっとした騒ぎになっていた。


 突然やって来たプリメーラ騎士団長セレスとギルドマスターが話し合いをした結果、久しぶりに特別依頼が発表されたのだ。


 特別依頼は、ギルドが必要を認めた場合のみ発動され、ギルド所属の冒険者に拒否権がない強制依頼のひとつだ。ただし、特別報酬に加えて、内容に応じて危険手当まで支給されるので、冒険者にとっては悪い面ばかりでもない。


 セレス騎士団長が、冒険者たちに依頼内容を説明する。


「特別依頼の内容は、西の森に出現したゴブリンの排除だ。現在我々騎士団が調査をすすめているが、現時点で敵の規模は不明。だが、少なくともゴブリンジェネラル以上、もしくはキングクラスの個体が率いている可能性が高い」


 ギルド内がにわかにざわめく。ゴブリンとはいえ、ジェネラルとなれば、ランクはB相当、キングであればランクAに相当する魔物だ。一般の冒険者の手には余る。


「君たち冒険者には、周辺の各町村の護衛および、ゴブリン、ゴブリンリーダーの排除を主にお願いしたい。調査範囲が広大なため正直手が足りない。敵のリーダーの打倒および本拠地への攻撃は、我々騎士団が行う。ただし、状況によっては、上位冒険者の力を借りる可能性はあるが」 


 プラチナブロンドの騎士団長の声は凛々しく聴く者を魅了する力があるかのようだ。いつの間にか、ざわついていた冒険者たちも皆聴き入っていた。


「今回の依頼は、プリメーラ領主、アルフレイド卿の要請でもある。特別報酬を用意しているので、皆、この機会にしっかり稼いでくれ。西の森の安全確保はプリメーラの生命線だが、決して無理はしないで欲しい。最後になるが、どんな些細な情報でも、遠慮せず騎士団に報告してもらえれば助かる。以上だ」 


 セレス騎士団長の説明が終わると、代わってギルドマスターが前に出る。


「詳しいことは受付で確認してくれ。拒否権はないが、稼げる依頼なのは確かだ。ちゃんと列に並べよ」


 話が終るやいなや、冒険者たちが受付に殺到する。


 それはそうだろう。普段ゴブリンなど報酬が安すぎて稼ぎにならないが、今回は倒せば倒しただけ稼ぎになる。特に低ランク冒険者にとっては、安全に稼げる夢のような依頼なのだから。




(まったく……こんな忙しいんじゃ、セレスティーナと話す暇もないじゃない) 


 セレスティーナ――騎士団長が手を振ってくるので、苦笑いで返す。


 次々と並んだ冒険者たちを捌きながら、クラウディアはカケルたちの事が気になっていた。


 西の森の異変と南の森の異変……まさか、関係があるのかしら……。


***


「やあ、冒険者の諸君! 元気そうでなによりだ」


 ギルド中に響き渡るような声。突然の来訪者に皆一様に振り向く。


 声の主は、20代後半のイケメンだった。端正な顔立ちに、さらさらとなびく金色の髪。ある意味でプリメーラで一番有名な男がそこにいた。


『お、おい、何で領主さまがここにいるんだよ』
『……あれが四聖剣の一人、アルフレイド伯爵か。初めて本物をみたぜ』
『どうしよう。嬉しすぎて死にそう。伯爵さま格好良い……』


 ギルド中がざわめき立つが、アルフレイドは意に介さず、ギルドマスターに話しかける。


「ベルナルド、元気してる? カケルくんはどこにいるの? 今日ギルドに来たはずだよ」
「……昨日会ったばかりではないかアルフレイド。すまんが分かるように話してもらえるか?」


 ハテナマークをいくつも浮かべて困惑するギルドマスター。


「ごめんごめん、ちょっと興奮していてね。えっと、今日冒険者登録したカケルという冒険者に会いたいんだけど、わかるかな? クロエちゃんと一緒だったはずだよ」


「……カケル? おお、さっき話題になっていた全属性適応能力オールラウンダー者か。確かクラウディアが担当していたはずだが……」


「ちょ、ちょっと待ってくれ、アルフレイド殿。今、クロエと一緒と言わなかったか? もしかして、そのカケルという男は――」


「うん。セレス団長殿の御察しの通り、カケルくんは異世界人だよ。黒目黒髪のね」 





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