異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

オークとの激闘 前編

 シュヴァインに聞いた内容は、なかなか刺激的なものだった。


 南の森に展開しているオークは、およそ300。先遣隊としてオークジェネラルが率いている。


 目的は、エスペランサ砦を落とすこと。


 エスペランサ砦は、プリメーラ騎士団が、東の魔物の領域に建設中の砦だ。


 魔物に落とされた東側諸国の調査および反攻のための拠点として、プリメーラ騎士団が総力をあげて守りを固める最重要地となっている。


 残念ながら、シュヴァインは大したことは知らず、この森へは、繁殖し、数を増やすために来ただけらしい。


 オークの繁殖力ならば、半年程度で3倍に増やすことが理論上可能だ。


 シュヴァインたちは、繁殖のために、他種族の雌を集め始めたところだという。


 オークには雌がいないが、繁殖スキルによりあらゆる種族との交配が可能であり、絶倫スキルで昼夜問わず性交し、爆発的に増える厄介な種族だ。


 ピクニック気分で軽く考えていた初依頼だが、事態は現在進行形で極めて深刻だった。


 シュヴァインの話を聞いてから、クロエの顔色が悪い。気にはなるが、今は優先すべきことがある。


「クロエ、悪いが冒険者ギルドと騎士団に、このことを知らせてくれ。一刻を争うかもしれない。」


「ッ!? 御主人様はどうなさるのですか?」


「俺は残ってオークどもをなるべく減らしておく。大丈夫だ、敵の拠点に攻め込むような無謀はしない」


「……私が戻るまで、絶対に無理しないで下さいね! 御主人様は……私の、私達の最後の希望なんですから……」


 クロエ……またその表情をするんだな。


「ふぇっ、ご、御主人様?」


 クロエの頭を撫でる。


「心配するな。俺は死神に愛された男だ。絶対に死なないと約束する。オークも食べてみたいしな」


「ふふっ、御主人様、死神に愛されたら死んでしまうのでは? わかりました、行って参ります」


 柔らかい感触とともに、クロエが抱きついてくる。


 ドサクサで耳としっぽを触りたいが、鋼鉄の理性で耐える。良い雰囲気を壊すわけにはいかない。


『精神耐性を記憶しました』


 ……スキルが生えるとか、どんだけ触りたいんだ俺。


 軽く落ち込む俺に首を傾げながら、クロエは街へ戻って行った。


 さてと、それではオークどもを狩りに行くか。


 ラビに索敵させながら、シュヴァインに道案内させる。


 オークどもは現在、雌を集めるために分隊に分かれて行動しているそうだから、各個撃破を狙う。


 ラビやシュヴァインもいるし、分隊なら何とかなるだろう。


***


 森の中を銀色の風が駆け抜ける。


(大変なことになった……) 


 クロエは内心舌打ちする。


 御主人様を1人残していくなど、本来あってはならないが、エスペランサ砦は、その名の通りクロエにとって、いや、全ての人々にとっての希望なのだ。絶対に失うわけにはいかない。


 でも……クロエは黒目黒髪の主を想う。


 御主人様は、とても優しいお方だ。危ういほどに。この世界では、優しいものから死んでいく。


 無茶はしないとおっしゃっていたけれど、例えば、攫われていく人を見たらきっと助けに行ってしまう。今日会ったばかりだけれど、わかるのだ。


 もっとだ、もっと速く。


 クロエは服を脱ぎ、一糸まとわない姿になる。あまり使いたくはないけれど……


『……獣化』


 クロエは銀色の狼に姿を変え、ひた走る。一刻も早くこの危機を知らせるため。一秒でも早く主の元に戻るため。


***


『主、オークの集団がいるうさ。数は8うさ』


 ラビがオークの集団を感知したようだ。くどいようだが、脳内変換はしていない。


『主、分隊のリーダーはハイオーク。強い』
「ああ、ありがとうシュヴァイン。気を付けるよ」


 オークは基本的に、あまり細かいことに注意が向かない。つまり大雑把だ。多少強引に接近しても、気付かれる可能性は低いだろう。


 次第に木々がまばらになってくる。この先には村があったはず、連中……村を襲う気か?


『主、人間の悲鳴が聞こえるうさ』


 ちっ、間に合わなかったか……。


 村から少し離れた場所で、頭が潰された死体が何体も転がっている。いずれも冒険者風の男だ。オークも1体倒れているが、不意打ちに加えて、多勢に無勢だったのだろう。


 死体はリュックに収納していく。


 身体強化によって、俺にも女性の悲鳴が聞こえてきた。


「ラビ、シュヴァイン、悪いがお前たちは正面から派手に突っ込んでくれ。その隙を突く」


『承知した主』『わかったうさ』


 ……待ってろよ、今助けてやるからな。


***


『……お前ら、ほどほどにして、次行くぞ。ノルマ終わらないだろうが』


 分隊のリーダーが呆れたように告げる。


 先ほど捕まえた人族の雌を、部下のオークたちが代わる代わる凌辱しているのだ。


 まあ、この森に来るまで我慢させていたのだから、多少は大目にみないと士気が下がってしまうので、好きにさせているのだが。


 さすがにこれ以上時間をかけるのは不味い。村に行けば、獲物は沢山いるのだ。


『よしっ、出発する――』 


 リーダーが、出発を告げようとするのと同時に、巨大な角ウサギとオークが襲い掛かってきた。


 部下のオークが、角ウサギの角に貫かれて倒れる。


 謎のオークも強い。あっという間に、2体の部下が倒されてしまった。


(何なんだ、こいつ等は)


 全く意味がわからないが、このままだと不味いのだけはわかる。


 ったく、ツイてない。オレ様は、こんなところで躓いている暇はないのだ。


『格の違いをみせてやる』


 オークは進化しない。産まれた瞬間に階級が決まる。王は生まれながらにして王なのだ。


 オレは生まれながらにして、エリートのハイオークだった。エリートとザコの違いは圧倒的なパワーだ。


 リーダーオークは、角ウサギの突進をあっさりと受け止めると、背骨をたたき折る。角ウサギは光の粒子になって消える。


 その様子に驚きながらも、もう1体のオークからの攻撃を真っ向から受けて立つ。


『お前もただのオークにしてはやるようだが、所詮はちょっとましなザコに過ぎん』


 怪力で押し返すと、オークをさば折りで絶命させる。オークもまた光の粒子となって消えてしまった。


(……なんだコレは? わけがわからん) 


 被害の状況を確認しようとするが、体が動かず視界がおかしい。


(なぜオレは地面に倒れているのだ……)


 自分を見下ろすように立つ黒目黒髪の男。それがエリートオークの見た最後の景色だった。











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