異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
冒険者ギルド
「おはようございます、カケル様」
心地よい朝を迎えると、これまた心地よい声が耳をくすぐる。
声のする方を見れば、輝く銀糸のような髪に蒼い瞳の犬耳?いや狼耳? のメイドさんが控えている。一目見れば忘れないので、昨日は屋敷にはいなかったのかもしれない。
瞳の色は違えど、一瞬ミコトさんを彷彿とさせるほどの美少女だ。しばし見惚れてしまった。
「カケル様、本日より専属メイドとなりましたクロエと申します。どうかよろしくお願いいたします」
「えっ、専属って俺の? そうか、こちらこそよろしく。クロエさん」
恐るべしカルロスさん。この俺のストライクゾーンど真ん中にあえて直球で投げ込んでくるとは……。
「はい、よろしくお願いいたします。身の回りのことはもちろん、お困りのことがあれば何でもお申し付けください。それから……カケル様、私のことはどうかクロエとお呼びください」
「わかった、クロエ、よろしく頼む」
「はい! お任せください。カケル様。あ、それから私は銀狼の獣人ですので、お間違いのないようにお願いいたします」
やはり狼だったか。うっかり犬耳とか言わなくてよかった。
「ところで……異世界というのは、話す言葉も同じなのでしょうか? カケル様は普通に話しておられますが」
「いや言葉は違うな。俺は一度聞けば、大抵の言葉は話せるようになるからな。そういえば、ゴブリンの言葉も話せるぞ」
「カケル様、す、すごいです! もしかして、狼語も分かりますか?――*************」
『狼語を記憶しました』
「覚えたぞ――黒い瞳が素敵です……って照れるな。ありがとうクロエ」
「うそ……狼語は私たち狼の獣人でも話せない人が多いのに……」
クロエがすごいキラキラした目で見つめてくる。うん、かわいい。しっぽ触りたい。  
その後、クロエに寝癖を直してもらったり、着替えを手伝ってもらいながら死神のローブに着替える。クロエは俺の髪をとかしながら、黒髪や黒目を褒めまくるので非常に照れくさい。男は女性の自然なタッチに弱いんだよな。
***
「カケル様、本日はどのようなご予定でしょうか?」
朝食後、上目遣いでクロエが聞いてくる。かわいい。絶対わざとやってるよね?かわいいからいいけど。
「今日は冒険者ギルドへ行って冒険者登録をしようと思ってる。ついでに服とか身の回りの物を揃えないといけないから、後は買い物かな」
予定を告げると、クロエは、少し考えてから微笑む。狼耳がピコピコ動いてる。触りたい。
「かしこまりました。すぐに準備をして参りますのでお待ちください」
ん? 準備ってなんの準備だろ。
すぐにクロエが外套を羽織り戻ってくる。
「お待たせして申し訳ございません。それでは参りましょうか」
どうやらクロエが一緒に街を案内してくれるらしい。断る理由もないし、お願いすることにした。フリアたちは、しばらく忙しそうだから、迷惑になってしまうしな。
俺の場合、一度通った場所は忘れないので、道に迷うことはないのだが、一人よりも二人の方が楽しいに決まっている。
それによく考えたら、俺、この世界の物価も常識も何も知らない状態なんだよな。うん、お願いしない選択肢ははじめからなかった。せっかくだし、今日はクロエに色々教えてもらうことにしよう。
***
冒険者ギルドは、第三街区と第四街区の境界にあり、カルロスさんの屋敷からだと歩いて10分もかからないそうだ。ほんと便利なとこに住んでるよねカルロスさん。
「カケル様は、冒険者ギルドは初めてですか?」
俺の隣で輝くような銀髪をなびかせる美少女メイドが微笑みかける。
「ああ。というよりも、こちらの世界の街へ来たのも初めてだから、正直何も分からない。悪いんだけど、その都度教えて貰えると助かる」
「かしこまりました。誠心誠意お役に立てるよに死力を尽くします」
「いや、死力は尽くさないでいいから……でも、頼りにしている。クロエ」
「はい! では早速冒険者ギルドについてですが……」
冒険者については、F~Sのランクに分かれているそうだ。Fランクが初心者で、Sランクが最高。Sランクの冒険者は、この国に3人しかおらず、貴族以上の権限と力を持っているらしい。
あっという間に、冒険者ギルドへ到着する。
柄の悪いチンピラ冒険者に絡まれるんじゃないかと、無意味にドキドキしてきた。
ギルドの建物は、三階層のレンガ建てで、かなり大きい。建物面積だけなら、カルロスさんの屋敷より広いかもしれない。まあ個人の家と比べるのはどうかと思うけれど、かなりの広さだ。
入口もかなり広い。高さ三メートル、幅五メートル程あり、これなら大きな素材や、大柄の人が武器を装備したままでも余裕で通れそうだ。
ギルドに入ると、受付カウンターが左右に分かれていて、左側のカウンターには綺麗な受付嬢が笑顔で並び、右側のカウンターでは、厳ついおっさん達が、不機嫌そうにガンを飛ばしている。おっさんのカウンターは、解体や素材専門の受付なんだとか。
受付の横には、依頼が大量に貼られた掲示板が有り、冒険者たちが群がり内容を吟味していた。
ギルド内はかなりの広さがあるが、併設された酒場には、昼前だというのに沢山の冒険者がいて、若干狭く感じるほどだ。
受付カウンターへ向かう俺達に何故か視線が集中し始めた。やはりクロエほどの美少女がギルドに来ればこうなるか……悪いことしたな。
かと言って、1人で待たせておくのは危険だし、後で美味しいものでも御馳走して許してもらうか。
『オイ、見ろよ! とんでもない美少女だぞ』
『うっひょー、マジで可愛いな。お前声掛けてこいよ』
『オイ、お前らクロエを知らねえってことは新顔か? 止めておけ、死にたくなきゃな』
『あれが噂のクロエか……見た目はスゲェ良い女なのに……』
……どうやら注目されていたのは、クロエの見た目だけが理由ではないようだ。
周囲の声を無視して、空いたカウンターへ。
対応してくれたのは、青い髪を後ろで束ね、眼鏡をかけている知的な雰囲気のお姉さん。さすが受付嬢だけあって、みんな女優顔負けの美女揃いだけど、この人は纏っているオーラが別格だ。 
「おはよう。クロエ、今日はお休みじゃなかったの?」
「おはよう。クラウディア。今日はこちらのカケル様のメイドとして、付き添いで参りました」
「は? メイドって……あなた、まさか見つけたの?」
「はい……やっと見つけました」
クロエが熱い眼差しをこちらに向けているような気がする。ん? 見つけたって俺の事なのか。
「本当に……この人がそうなの? ちょっと失礼」
クラウディアまで、何故か熱い眼差しを送ってくる。
『鑑定を記憶しました』
あれ? 今、クラウディアに鑑定されたのか? いや鑑定欲しかったからめっちゃ嬉しいけど。やっぱり異世界は鑑定がないと始まらないしな。
「……確かに結構強いけど、正直ちょっと期待外れかな」
クラウディアさん……初対面なのに言い方ひどくない?
「クラウディア、カケル様は、一昨日来たばかりなのですよ」
「は? 一昨日? 嘘でしょう」
クラウディアが信じられないといった様子で俺を見る。
「よくわからないが、俺が来たのは一昨日で間違いない。あと、そろそろ冒険者登録をしたいんだが頼めるかな?」
「も、申し訳ありませんカケル様。私としたことが……クラウディア、すぐに登録手続きお願いします」
クロエが我に返り、慌てて謝罪してくる。
「いや、構わない。早速お願い出来るかな。魔物を狩りたくてウズウズしてるんだ」
「それは頼もしいです。うふふ。では、こちらに魔力を少しだけ注いでくださいね。血を1滴でも構いませんが」
クラウディアが差し出したのは、サッカーボール大の透明な球体。頷いて魔力を注ぐ。
魔法を使えるようになって、魔力を動かすコツがわかるようになったのだ。早くデスサイズに魔力を注いで、切れ味を試してみたい。
球体が虹色に輝き出す。
「お、全魔法適性……さすがですね……」
クラウディアが若干表情を引きつらせながら適性結果を教えてくれる。
「カケル様は全ての魔法に適性をお持ちなのですね! さすがです、御主人様」
クロエが誇らしげに叫ぶ。いやクロエさん、声大きいから……。
ギルド内がざわつき始める。あーあ。
『オイ、全魔法適性が出たぞ』
『確かに珍しいが、器用貧乏になりやすい。まだ何とも言えないだろ』
『それよりクロエが御主人様って、アイツ一体何者だよ……』
……確かに何でもできると器用貧乏になりやすいかもな。
虹色の輝きが一際強くなり、球体から青銅色のカードが排出される。どういう仕組みなんだコレ?
「カケル様、こちらがギルドカードとなります。このカードには討伐した魔物が自動的に記録され、魔物のランクと数によってランクアップします。位置情報もわかりますので、遭難や盗難時も安心ですよ」
なかなか便利なシステムだな。ランクアップがわかりやすいのが特に良い。
「このシステムを創ったのは異世界人か?」
「やはり、わかりますか。はい、ギルド創設者の、ヒデキ=タカハシ様が創ったと言われております」
……ありがとう。見知らぬ高橋さん。貴方のおかげで、異世界生活が捗りそうです。
***
「――以上で、説明は終わりです。何かご質問はございますか?」
「大丈夫だ。わかりやすい説明ありがとう。ところで、クロエは冒険者だったのか?」
クラウディアにふと聞いてみる。
「はい。クロエは最年少のCランク冒険者で、当ギルドの期待の星ですよ。白銀の悪魔という二つ名まであります」
「ちょ、ちょっとクラウディア!余計なことまで言わなくていいですから」
白銀の悪魔か……確かに物騒な二つ名だな。悪魔のように強いってことか?
「良いじゃない。どうせすぐバレるんだし。カケル様ちょっとお耳を」
クラウディアさんが、耳元でクロエの二つ名の由来を教えてくれた。
美女に耳元で囁かれるなんて、良い香りがするし内容が全然入って来なかったけど、瞬間記憶が働いてくれたのでセーフ。
何でも、クロエの見た目で言い寄ってくる男共が後を絶たず、キレたクロエが片っ端から半殺しにしたことから付いた二つ名だそうだ。
うん。ギルドの冒険者たちが恐れるのも無理もないな。俺も怒らせないように気を付けよう。
クロエと視線が合うと、可愛らしく微笑む。うん。可愛いな。でも、耳としっぽ触らせてとか言ったら、やっぱり半殺しにされるのだろうか。
「あら、クロエの笑顔なんて珍しい。余程懐かれたのですね。カケル様は」
確かにクロエは基本無感情だけど、俺の前だと結構笑っていたな。だけど……。
「……クラウディアが、何を言ったか分かりませんが、音も葉もない風評被害ですから!」
うん。ふくれっ面のクロエも可愛いな。
「他人の評価なんて気にしないよ。俺から見たクロエは、白銀の天使だし」
「――っ! そ、そうですか? それならば良いのですが……」
クロエのしっぽがブンブン左右に揺れている。クラウディアさん、ニヤニヤしないで。
「そうだ! せっかくだし、依頼を見ておこうか、クロエ」
「そうですね。行ってみましょうか」
掲示板に向かおうとすると、クラウディアに呼び止められる。
「それなら、ちょうど良い依頼が入ってるわよ。南の村での討伐依頼。最初のクエストとしてはちょうど良いと思うわ」
Fランク魔獣の角ウサギの駆除か……。午後の腹ごなしに丁度いいかもしれない。村の人たちも困ってるだろうし、何事も経験だ。
「わかった。その依頼を受ける」
「カケル様、依頼受けていただきありがとうございます。では、これが依頼の詳細と地図になります。討伐証明部位は頭の角、村長に依頼完了の承認印を貰うのを忘れないでくださいね。依頼料の残金はそれが無いと、支払われませんので」
依頼を受けた冒険者には、ギルドから依頼報酬の一部が前金(支度金)として支給されるが、依頼をキャンセルしたり、失敗した場合は、当然、前金は返却しなければならない。
そのため、冒険者たちは無謀な依頼を受けにくくなることで、生存率が上がり、ギルドや依頼者は、達成率が上がって誰も損をしないということらしい。
冒険者にとって、依頼を見極めることはとても重要で、成功したいならば必須となる能力だ。
「じゃあ、そろそろ行こうか、クラウディアさん、お世話になりました」
「行ってらっしゃい。私のことはクラウディアって呼んでね」
「分かった、クラウディア。また明日来るよ」
クラウディアと別れて、二人でギルドを出る。
(黒目黒髪の異世界人か……クロエ、絶対に離しちゃ駄目よ。私達の悲願のためにも)
二人を見送ると、クラウディアは慌ただしく受付業務に戻っていく。
心地よい朝を迎えると、これまた心地よい声が耳をくすぐる。
声のする方を見れば、輝く銀糸のような髪に蒼い瞳の犬耳?いや狼耳? のメイドさんが控えている。一目見れば忘れないので、昨日は屋敷にはいなかったのかもしれない。
瞳の色は違えど、一瞬ミコトさんを彷彿とさせるほどの美少女だ。しばし見惚れてしまった。
「カケル様、本日より専属メイドとなりましたクロエと申します。どうかよろしくお願いいたします」
「えっ、専属って俺の? そうか、こちらこそよろしく。クロエさん」
恐るべしカルロスさん。この俺のストライクゾーンど真ん中にあえて直球で投げ込んでくるとは……。
「はい、よろしくお願いいたします。身の回りのことはもちろん、お困りのことがあれば何でもお申し付けください。それから……カケル様、私のことはどうかクロエとお呼びください」
「わかった、クロエ、よろしく頼む」
「はい! お任せください。カケル様。あ、それから私は銀狼の獣人ですので、お間違いのないようにお願いいたします」
やはり狼だったか。うっかり犬耳とか言わなくてよかった。
「ところで……異世界というのは、話す言葉も同じなのでしょうか? カケル様は普通に話しておられますが」
「いや言葉は違うな。俺は一度聞けば、大抵の言葉は話せるようになるからな。そういえば、ゴブリンの言葉も話せるぞ」
「カケル様、す、すごいです! もしかして、狼語も分かりますか?――*************」
『狼語を記憶しました』
「覚えたぞ――黒い瞳が素敵です……って照れるな。ありがとうクロエ」
「うそ……狼語は私たち狼の獣人でも話せない人が多いのに……」
クロエがすごいキラキラした目で見つめてくる。うん、かわいい。しっぽ触りたい。  
その後、クロエに寝癖を直してもらったり、着替えを手伝ってもらいながら死神のローブに着替える。クロエは俺の髪をとかしながら、黒髪や黒目を褒めまくるので非常に照れくさい。男は女性の自然なタッチに弱いんだよな。
***
「カケル様、本日はどのようなご予定でしょうか?」
朝食後、上目遣いでクロエが聞いてくる。かわいい。絶対わざとやってるよね?かわいいからいいけど。
「今日は冒険者ギルドへ行って冒険者登録をしようと思ってる。ついでに服とか身の回りの物を揃えないといけないから、後は買い物かな」
予定を告げると、クロエは、少し考えてから微笑む。狼耳がピコピコ動いてる。触りたい。
「かしこまりました。すぐに準備をして参りますのでお待ちください」
ん? 準備ってなんの準備だろ。
すぐにクロエが外套を羽織り戻ってくる。
「お待たせして申し訳ございません。それでは参りましょうか」
どうやらクロエが一緒に街を案内してくれるらしい。断る理由もないし、お願いすることにした。フリアたちは、しばらく忙しそうだから、迷惑になってしまうしな。
俺の場合、一度通った場所は忘れないので、道に迷うことはないのだが、一人よりも二人の方が楽しいに決まっている。
それによく考えたら、俺、この世界の物価も常識も何も知らない状態なんだよな。うん、お願いしない選択肢ははじめからなかった。せっかくだし、今日はクロエに色々教えてもらうことにしよう。
***
冒険者ギルドは、第三街区と第四街区の境界にあり、カルロスさんの屋敷からだと歩いて10分もかからないそうだ。ほんと便利なとこに住んでるよねカルロスさん。
「カケル様は、冒険者ギルドは初めてですか?」
俺の隣で輝くような銀髪をなびかせる美少女メイドが微笑みかける。
「ああ。というよりも、こちらの世界の街へ来たのも初めてだから、正直何も分からない。悪いんだけど、その都度教えて貰えると助かる」
「かしこまりました。誠心誠意お役に立てるよに死力を尽くします」
「いや、死力は尽くさないでいいから……でも、頼りにしている。クロエ」
「はい! では早速冒険者ギルドについてですが……」
冒険者については、F~Sのランクに分かれているそうだ。Fランクが初心者で、Sランクが最高。Sランクの冒険者は、この国に3人しかおらず、貴族以上の権限と力を持っているらしい。
あっという間に、冒険者ギルドへ到着する。
柄の悪いチンピラ冒険者に絡まれるんじゃないかと、無意味にドキドキしてきた。
ギルドの建物は、三階層のレンガ建てで、かなり大きい。建物面積だけなら、カルロスさんの屋敷より広いかもしれない。まあ個人の家と比べるのはどうかと思うけれど、かなりの広さだ。
入口もかなり広い。高さ三メートル、幅五メートル程あり、これなら大きな素材や、大柄の人が武器を装備したままでも余裕で通れそうだ。
ギルドに入ると、受付カウンターが左右に分かれていて、左側のカウンターには綺麗な受付嬢が笑顔で並び、右側のカウンターでは、厳ついおっさん達が、不機嫌そうにガンを飛ばしている。おっさんのカウンターは、解体や素材専門の受付なんだとか。
受付の横には、依頼が大量に貼られた掲示板が有り、冒険者たちが群がり内容を吟味していた。
ギルド内はかなりの広さがあるが、併設された酒場には、昼前だというのに沢山の冒険者がいて、若干狭く感じるほどだ。
受付カウンターへ向かう俺達に何故か視線が集中し始めた。やはりクロエほどの美少女がギルドに来ればこうなるか……悪いことしたな。
かと言って、1人で待たせておくのは危険だし、後で美味しいものでも御馳走して許してもらうか。
『オイ、見ろよ! とんでもない美少女だぞ』
『うっひょー、マジで可愛いな。お前声掛けてこいよ』
『オイ、お前らクロエを知らねえってことは新顔か? 止めておけ、死にたくなきゃな』
『あれが噂のクロエか……見た目はスゲェ良い女なのに……』
……どうやら注目されていたのは、クロエの見た目だけが理由ではないようだ。
周囲の声を無視して、空いたカウンターへ。
対応してくれたのは、青い髪を後ろで束ね、眼鏡をかけている知的な雰囲気のお姉さん。さすが受付嬢だけあって、みんな女優顔負けの美女揃いだけど、この人は纏っているオーラが別格だ。 
「おはよう。クロエ、今日はお休みじゃなかったの?」
「おはよう。クラウディア。今日はこちらのカケル様のメイドとして、付き添いで参りました」
「は? メイドって……あなた、まさか見つけたの?」
「はい……やっと見つけました」
クロエが熱い眼差しをこちらに向けているような気がする。ん? 見つけたって俺の事なのか。
「本当に……この人がそうなの? ちょっと失礼」
クラウディアまで、何故か熱い眼差しを送ってくる。
『鑑定を記憶しました』
あれ? 今、クラウディアに鑑定されたのか? いや鑑定欲しかったからめっちゃ嬉しいけど。やっぱり異世界は鑑定がないと始まらないしな。
「……確かに結構強いけど、正直ちょっと期待外れかな」
クラウディアさん……初対面なのに言い方ひどくない?
「クラウディア、カケル様は、一昨日来たばかりなのですよ」
「は? 一昨日? 嘘でしょう」
クラウディアが信じられないといった様子で俺を見る。
「よくわからないが、俺が来たのは一昨日で間違いない。あと、そろそろ冒険者登録をしたいんだが頼めるかな?」
「も、申し訳ありませんカケル様。私としたことが……クラウディア、すぐに登録手続きお願いします」
クロエが我に返り、慌てて謝罪してくる。
「いや、構わない。早速お願い出来るかな。魔物を狩りたくてウズウズしてるんだ」
「それは頼もしいです。うふふ。では、こちらに魔力を少しだけ注いでくださいね。血を1滴でも構いませんが」
クラウディアが差し出したのは、サッカーボール大の透明な球体。頷いて魔力を注ぐ。
魔法を使えるようになって、魔力を動かすコツがわかるようになったのだ。早くデスサイズに魔力を注いで、切れ味を試してみたい。
球体が虹色に輝き出す。
「お、全魔法適性……さすがですね……」
クラウディアが若干表情を引きつらせながら適性結果を教えてくれる。
「カケル様は全ての魔法に適性をお持ちなのですね! さすがです、御主人様」
クロエが誇らしげに叫ぶ。いやクロエさん、声大きいから……。
ギルド内がざわつき始める。あーあ。
『オイ、全魔法適性が出たぞ』
『確かに珍しいが、器用貧乏になりやすい。まだ何とも言えないだろ』
『それよりクロエが御主人様って、アイツ一体何者だよ……』
……確かに何でもできると器用貧乏になりやすいかもな。
虹色の輝きが一際強くなり、球体から青銅色のカードが排出される。どういう仕組みなんだコレ?
「カケル様、こちらがギルドカードとなります。このカードには討伐した魔物が自動的に記録され、魔物のランクと数によってランクアップします。位置情報もわかりますので、遭難や盗難時も安心ですよ」
なかなか便利なシステムだな。ランクアップがわかりやすいのが特に良い。
「このシステムを創ったのは異世界人か?」
「やはり、わかりますか。はい、ギルド創設者の、ヒデキ=タカハシ様が創ったと言われております」
……ありがとう。見知らぬ高橋さん。貴方のおかげで、異世界生活が捗りそうです。
***
「――以上で、説明は終わりです。何かご質問はございますか?」
「大丈夫だ。わかりやすい説明ありがとう。ところで、クロエは冒険者だったのか?」
クラウディアにふと聞いてみる。
「はい。クロエは最年少のCランク冒険者で、当ギルドの期待の星ですよ。白銀の悪魔という二つ名まであります」
「ちょ、ちょっとクラウディア!余計なことまで言わなくていいですから」
白銀の悪魔か……確かに物騒な二つ名だな。悪魔のように強いってことか?
「良いじゃない。どうせすぐバレるんだし。カケル様ちょっとお耳を」
クラウディアさんが、耳元でクロエの二つ名の由来を教えてくれた。
美女に耳元で囁かれるなんて、良い香りがするし内容が全然入って来なかったけど、瞬間記憶が働いてくれたのでセーフ。
何でも、クロエの見た目で言い寄ってくる男共が後を絶たず、キレたクロエが片っ端から半殺しにしたことから付いた二つ名だそうだ。
うん。ギルドの冒険者たちが恐れるのも無理もないな。俺も怒らせないように気を付けよう。
クロエと視線が合うと、可愛らしく微笑む。うん。可愛いな。でも、耳としっぽ触らせてとか言ったら、やっぱり半殺しにされるのだろうか。
「あら、クロエの笑顔なんて珍しい。余程懐かれたのですね。カケル様は」
確かにクロエは基本無感情だけど、俺の前だと結構笑っていたな。だけど……。
「……クラウディアが、何を言ったか分かりませんが、音も葉もない風評被害ですから!」
うん。ふくれっ面のクロエも可愛いな。
「他人の評価なんて気にしないよ。俺から見たクロエは、白銀の天使だし」
「――っ! そ、そうですか? それならば良いのですが……」
クロエのしっぽがブンブン左右に揺れている。クラウディアさん、ニヤニヤしないで。
「そうだ! せっかくだし、依頼を見ておこうか、クロエ」
「そうですね。行ってみましょうか」
掲示板に向かおうとすると、クラウディアに呼び止められる。
「それなら、ちょうど良い依頼が入ってるわよ。南の村での討伐依頼。最初のクエストとしてはちょうど良いと思うわ」
Fランク魔獣の角ウサギの駆除か……。午後の腹ごなしに丁度いいかもしれない。村の人たちも困ってるだろうし、何事も経験だ。
「わかった。その依頼を受ける」
「カケル様、依頼受けていただきありがとうございます。では、これが依頼の詳細と地図になります。討伐証明部位は頭の角、村長に依頼完了の承認印を貰うのを忘れないでくださいね。依頼料の残金はそれが無いと、支払われませんので」
依頼を受けた冒険者には、ギルドから依頼報酬の一部が前金(支度金)として支給されるが、依頼をキャンセルしたり、失敗した場合は、当然、前金は返却しなければならない。
そのため、冒険者たちは無謀な依頼を受けにくくなることで、生存率が上がり、ギルドや依頼者は、達成率が上がって誰も損をしないということらしい。
冒険者にとって、依頼を見極めることはとても重要で、成功したいならば必須となる能力だ。
「じゃあ、そろそろ行こうか、クラウディアさん、お世話になりました」
「行ってらっしゃい。私のことはクラウディアって呼んでね」
「分かった、クラウディア。また明日来るよ」
クラウディアと別れて、二人でギルドを出る。
(黒目黒髪の異世界人か……クロエ、絶対に離しちゃ駄目よ。私達の悲願のためにも)
二人を見送ると、クラウディアは慌ただしく受付業務に戻っていく。
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