異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

黒目黒髪の英雄

「カケルさん。本当にありがとうございました。この御恩は一生かけても返しきれません」


 あれから一時間……今度は家族全員から御礼を言われ続けている。嬉しいし、とても有り難いんだが、みなさん……そろそろ寝ませんか?


「ロナウド、カケルさんもお疲れなんだから、そろそろ休まないと……」 


 ナイスだ、さすがマリアナさん。もう眠くてヤバかった。


「む……そ、そうだな。すまないカケルさん。私たちは回復薬のおかげで元気一杯ですので、ゆっくりお休み下さい」


「じゃあお言葉に甘えて、休ませてもらいますね」


 しばらくは野宿を覚悟していただけに、避難所とはいえ、初日から安全な場所で寝られるのは正直ありがたい。明日は街へ行くことになったし、せっかくだからミコトさんの寝袋を使おう!  


 寝袋を取り出しながら、ふと気づく。俺のリュックは通学用のサイズで決して大きくない。


 こんなしっかりした寝袋がどうやって入っていたんだ? それに今更だが、最初から殆どリュックの重さしか感じていなかったことにも今更気付いた。


 もしかして――避難所の備品を片っ端からリュックに入れてみる――全部入ってしまった。しかもリュックの重さは変わらない。しかも、取り出すときの重さも感じないおまけ付きだ。


 よく考えれば、神様の手作りが普通な訳ないよな……ありがとう……ミコト……さん。


 寝袋は恐ろしく快適で、俺は入った瞬間に眠りに落ちてしまった。コレはヤバいです。


***


 次の日の朝。目覚めると、マリアナさん達が朝食を用意してくれていた。


 避難所に戻ってくる時に、荷馬車から食料品を持って来たのだ。


 よくよく考えてみれば、この世界に来てから神水以外口にしていなかったな俺。


 盛大にお腹が鳴り、みんなと笑いながら、朝食を食べる。保存食だから塩気が強く、大味だけど空腹と団らんは最高の調味料だ。


 フリアもすっかり元気を取り戻し、年相応の無邪気な女の子に戻ったみたいだ。目が合うと、向日葵が咲いたような笑顔で笑う。


「ところで、カケルさんはどうしてプリメーラへ?」


 皆が食べ終わるのを見計らって、ロナウドさんが訊いてくる。


 プリメーラと言うのは、これから向かう街の名前だ。うーん、なんて説明すれば良いかな。


「実は、俺はこの国の人間ではなくて、遠く離れた所から来たんです。だから、この国の事、何も知らないので、とりあえず街へ出ようと」


 なんか怪しい説明になってしまったけど、嘘は言っていないよな。異世界とか言っても通じないだろうし。


「なるほど! もしかして、カケルさんは異世界から来たのですか?」 


 えっ? なんだ、異世界で通じるのか。話が早くて助かるわ。


「その通りです。ですので、出来れば、この世界の常識とか教えていただけると助かります」


「…………」  


 あれ、おかしいな? みんな固まってしまったぞ? 何か変な事言ったかな。


(どうしよう……冗談半分で言ったらカケルさん本物の異世界人だった。黒目黒髪だから、まさかとは思っていたが、あわわわわ……)


「か、カケルさん――いや、カケル様、知らなかったとは言え、勇者様に大変失礼の数々、どうかお許し下さい」 


「はっ? いやいや、俺は勇者では無いから様とか止めてください。この世界では異世界人は皆勇者なんですか?」 


「いえ、ですが、黒目黒髪の異世界人は、皆特異な力を持ち、歴史に名を残す英雄となっておりますので」  


「なるほど……ちなみに、この世界では黒目黒髪は珍しいのですか?」  


「はい、少なくとも、この国では異世界人の血を引くもの以外では、まずいないと思います。故に、この国では黒目黒髪は、特に黒い瞳は最高のステータスなんです」 


 おお……日本では普通の黒目黒髪が、ステータスシンボルとは。嬉しいような、目立って面倒なような微妙なところだ。


「まあ、俺は勇者と違って極めて個人的な目的でこの世界に来たので、普通に接して貰えると助かります」   


「分かりました、カケルさん。でも、私達家族を救ってくれた貴方は間違いなく勇者でしたよ。少なくとも私達にとってはね」  


 みんなが強く頷いて同意する。フリアやフリオの視線がキラキラしていて、何かくすぐったい。


「そういえば、さっきのカケルさんの言葉、おとぎ話や伝説のくだりと同じでした。異世界の方は、みんなそういう説明をするものなのですね」


 ロナウドさんたちが、興味深そうに指摘してくる。


 げっ、俺の説明って異世界人のテンプレだったのか。なんか恥ずかしい。話題を変えるか。


「ところで、ロナウドさんたちは、何で急いで街へ行こうとしていたんです?」 


 いつものように、集団で移動していれば、こんな事にならなかった筈だが、急がなければならない事情があると言っていた。 


「実は、私の父が危篤だと知らせが届きまして……私のせいで皆を危険な目に会わせてしまいました」 


「家族が危篤なら一刻も早く駆けつけようとするのが当たり前ですよ、ロナウドさん」


 俺が同じ立場だったら、間違いなく同じ行動をとっていただろうしな。


「そうよ。それに、無理やり付いていくって言ったの私達なんだから、貴方が責任を感じる事はないのよ」


 マリアナさんがそっと身を寄せ、夫を抱きしめる。


「それに……おかげでカケルさんと出会えましたから」


 フリアがキラキラした瞳でそんな嬉しいことを言ってくれるので、思わず頭を撫でてしまった。


「えへへ……」


 フリアは、嬉しそうに笑う。うん、可愛い。母親譲りのエメラルド色の髪と瞳。マリアナさん美人だから、将来はきっとフリアも美人になるだろうな。


「だったら、すぐに出発しましょう。俺はいつでも大丈夫ですよ」


「こちらの都合で申し訳ないです。では出発しましょうか」


 特に準備するものもないので、すぐに出発の準備が整う。荷馬車は失ってしまったが、ここから街までは、2時間も歩けば到着する距離だ。


***


「あれ、お父さん、この荷物は?」


 避難所の前に置かれた荷車をみて、フリアが不思議そうにしている。


「ああ。これは戦利品だな。ゴブリンどもから頂戴してきたんだ」


 ロナウドさんがニヤリと笑う。


 実は、昨夜戻ってくるのが遅くなったのは、戦利品を集めていたからだ。


 あのゴブリンの洞窟は、もともと盗賊のアジトとして使われていたようで、色々な物が溜めこまれていた。盗賊どもがどうなったのかはゴブリンのみぞ知るだが、せっかくなので、使えそうなものは全て回収させてもらった。


 さらに、ロナウドさんによると、魔物が持つ魔石はお金になるというので、とりあえず、ボスと上位種のみ魔石を回収し、残った死体はファイヤーボールで燃やした。


 魔石の取り出しについては、ミコトさんの解体用ナイフが大活躍。なんと手に持った状態で対象をみると、魔石の位置や、討伐証明部位、有用な素材など、頭の中に情報が入ってくるのだ。切れ味も半端ないし。ほんとミコトさん、マジ女神!死神だけど。


 という訳で、戦利品を山分けしようとしたんだけど、ロナウドさんがなかなか受け取らない。仕方ないので、お金と魔石は俺が貰い、嵩張るそれ以外のものはロナウドさんが運ぶことを条件に受け取ってもらった。


 荷馬車と馬を失ったんだから、貰えるものは貰えば良いのに律儀な人だと思う。


 でも、ロナウドさんによれば、今回は急ぎの出発だったため、あまり高価なものは積んでおらず、戦利品を売れば、大幅にプラスになるらしいから良いのかな。


 それにしても、異世界の街とか初めてだから、どうしてもテンション上がる。やっぱり中世風で、獣人とかエルフとか、色々な種族が住んでるのかな? ロナウドさんに聞いても良いんだけど、自分の眼で見るまでの楽しみにしておこう。








  





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