不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~
再開
視界がぼやける。まぶしい光に包まれていたので,目が慣れるのに時間がかかった。かすむ目をこすりながら周りを見渡すと,人影が見えた。
「大丈夫・・・・・・ですか?」
だんだんと目の焦点が定まり始める。木々の生い茂る村のはずれといったところだろうか。そこで声を掛けられた女性に目をやる。
ハイブランドの白いスニーカーから白くて細い足が伸びている。つやのある足はただ細いという感じではなく,普段から運動をして余計なものをそぎ落としているような印象を与える。ダメージの入ったショートパンツのジーンズは快活な雰囲気を彼女に与え,スポーツブランド音ロゴが大きく入ったTシャツが全体のバランスをカジュアルに仕立て上げている。そのシャツのブランドが山のように膨らむところで目が留まり,思わず赤面してしまった。そのまま視点を上げると,肩口まで髪を伸ばして前髪を上げた女性と目が合った。ナチュラルメイクで化粧っけはあまり感じられないが,黒目が大きくて筋の通った鼻をしており,知り合いにいたらモテただろうなと思う。お姉さんのような雰囲気があるが,歳はそう離れていないに違いない。
「ねえ,あなた,まさる・・・・・・まさるなの 」
「そうだけど・・・・・・どこかで会ったかな?」
プログラムは成功だ。何年もかけて作ったバーチャル世界に入り込むことができた。RPGの世界に飛び込むことが出来たらどれほど幸せと学びを得ることができるだろうとずっと研究開発をしてきた。身をもってその世界に飛び込むことができたが,自分の知り合いを登場人物に組み入れた記憶はない。でも,こういうイレギュラーなことが起こるのが冒険の醍醐味だ。
ぼくに話しかけた綺麗な女性は,分かりやすく頬を福ら褪せて機嫌を損ねている。こんな美人と冒険出来たらどんな困難も楽園に代わりそうだ。ぼくのフィアンセ役にもぴったり。どうにかご機嫌を取りたいけど,あいにく女性の扱いは運動よりも苦手だ。
「ひどいわね。私のことを忘れるなんて」
前髪を書き上げながら目の前の女性はぼくに近づいた。そして,でこがくっつくんじゃないかとひやひやするほどの距離で動きを止め,「本当に分からないの?」と問い詰めてきた。
ドキドキしながらその目を見つめていたが,ふと聞き覚えのある声だということに気が付いた。面影は・・・・・・言われてみればそうかもしれない。心臓が高鳴るのを抑えながら,彼女の肩に手を置いて揺さぶった。
「リンナ・・・・・・? もしかしてリンナなの⁈」
「そうよ。忘れたなんて言ったらぶっ飛ばしてた」
思わず飛び上がりそうになった。久しぶりの再会を行くりと味わう前に,後ろから声がした。
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