不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

覚悟


 どうしたの? とリンナに問いかけると,不敵な笑みを浮かべて彼女は言った。

「私たち,勝てるわ」

 誇らしげな彼女をしばらく見つめていた。リンナが言う言葉の意味をかみ砕いて理解しようとしたものの,結局何を言おうとしているのかがわからなかった。

「勝てるって,竜王にだよね?」
「当り前じゃない。何を今さら言ってるの? 他に何があるのよ。まさか,自分に勝つとか? まあ,あながち間違いではないかもね」
「安心したよ。でも,何が言いたいのかさっぱり分からない。あの剣の通りそうもない皮膚をどうやったら貫けるのか,ぜひ聞かせてよ」

 ちがうわ,とリンナはかぶりを振った。

「剣をいくら振りぬいてもかなわない。あなたがきった半魚人とは話が違うんだから」
「じゃあどうするっていうんだ。もったいぶらずに教えてよ」

 リンナは雄大の方を一瞥してまたこっちを向いた。雄大と竜王は微動だにせずにらみ合っている。いや,二人の間には何かしらのやり取りがあるのかもしれない。でも,しばらくは動きがなさそうだ。
リンナは胸を張った。そして,思い出して,と言った。

「あいつは,私たちのことを簡単に殺すことができると言った。でも,おもしろくないとも。じつはそうじゃないのかも。やつは物理的に私たちを攻撃することはない。私たちも竜王を物理的に傷つけることは難しい。でも,竜王のゲージは減った。あれはやつのライフを示すゲージであることは本人が認めたのだから間違いない。問題は,なぜゲージが減ったのか」

そこまで言い切ると,思い出したかのようにリンナは息継ぎをした。

「竜王にダメージを与えるのは’覚悟’よ。雄大は手を下さずに竜王にダメージを与えた。私たちの思いを一つにすれば,あいつに勝てる」

 そう言ってリンナは竜王の方を向いた。その顔は全てにけりをつける勇ましい表情をしていた。


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