不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

大きな声で


「ぼくは・・・・・・」

 雄大はうつむいて何かを呟いた。

「聞こえない! 大きな声で言え!」

 竜王の声が空気を震わせた。
 雄大は睨みつけるようにして,目の前を見上げた。そして,肩が持ち上がるほど杯いっぱいに空気を取り込んだ。

「ぼくは地球を救う! お前には屈しない! 消えてなくなるのはお前の方だ!」

 そう言って剣を取り出し,めちゃくちゃに振り回した。力任せに振り回した剣は無様に空を切っている。
 え,リンナがつぶやいた。丸くなった。その目の先を追うと,そこにはゲージが浮かび上がっていた。

「どういうこと。だれも攻撃していないのに」
「いつからあったの?」

 リンナに聴くと,ここに入ってからずっとあったということだった。

「ということは,あれはもしかして・・・・・・」

 リンナがうなずいた。

「そう。きっとあれは竜王のゲージよ。ずっと気づいていないふりをしていたけれど,今さっきAのゲージが減ったの。どういうことだと思う? あれは竜王のゲージなのは間違いないはずなんだけど・・・・・・」

 雄大の剣を弾き飛ばした竜王がこちらに顔を向けた。

「その通り。そいつは私のゲージだ。でも,分かるだろ? お前たちのものとは大きさもまるで違うし,もちろん質量だって違う。お前たちが死ぬほどのダメージを受けたからといって,私もくたばると思われたら心外だ」

 それはそうだ。見るからにタフな見た目だ。きっとガードも相当に硬いはず。どうすれば・・・・・・。
 悩んでも出ない答えを求めてリンナの方を見ると,彼女はなぜか笑っていた。


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