不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

作って見せる


「みんな何かあるんだ。この世界にやってきた人たちには」

 雄大が神妙な顔をしてつぶやいた。リンナは地面にお尻をついてうなだれ,ついさっきまでの殺気立った空気管は消えさり,代わりにどんよりと沈むような重苦しい空気管をまとっていた。

「リンナ,ぼくは進むよ。そのためにここに来たんだ。あの扉の向こうにぼくたちの世界を壊そうとするばけものがいる。ぼくはそいつを倒す。そして,元の世界に戻ってゲームを楽しむし,ゲームを作って人が成長できるような物語を作るんだ。そのために,この物語を終わらせる」

 リンナの顔を覗き込むようにして言った後,立ち上がって雄大を見た。
 雄大はうなずき,ぼくの横へついた。振り返って,目の前にそびえたつ受講感のある扉を見上げた。ひとつうなずき,扉を押そうとすると後ろから声がした。

「本当に,人が成長するゲームを作れるの?」

 リンナが睨むようにして上目遣いでこっちを見ている。その言葉は間違いなくぼくに向けられていた。

「作るよ。カズキ君も楽しく遊んで正答できるようなものを作ってみせる」

 リンナは腕組みをして考え込むようにして目を閉じた。さっきまでの暗い雰囲気はもうすでに消えている。

「信じるわ。まさるのこと」

 リンナは立ち上がって,ぼくと雄大の横に並んだ。

「みんなが幸せになるものを作ってよね。楽しいからって依存症になって良いわけじゃないんだから」

 ぼくは深くうなずいた。リンナと雄大が笑う。三人で両手を前に突き出し,扉に手のひらをあてる。声を掛けるでもなく,ぼくたちは同時に体重をかけて扉を押した。


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