不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

目的地


 目的地に近づくと,雲行きが怪しくなってきた。いつ雨が降ってもおかしくないような曇天の曇り空は,それだけでぼくたちの気分を沈ませた。遠くの方では雷がときおり鳴り響いているが,そのたびに雄大が小さく声を上げていた。

「いちいちうるさいわね! 黙って歩けないの?」
「リンナは怖くないの? もう少し女の子らしくてもいいと思うんだけど」
「だれが男勝りの暴君だって?」
「いや,そこまでは言ってないんだけど・・・・・・」

 リンナが雄大の脇腹に裏拳を入れようとすると,雄大が光の速さで逃げていった。

「着いたね。いよいよだ」

 目の前には厳かな城がそびえ立っていた。両サイドに煙突のような屋根が着いており,中心は円形の形をした城は,世界遺産を彷彿とさせる。ただ,長い間その場所に存在していてことは覆われたツタの量で想像することが出来た。悪天候もあいまってとてもじゃないが観光でふらっと寄ろうという気持ちにはなれそうもない。

「まさか,今更『やめよう』とか言い出さないわよね?」

 リンナが顔をのぞき込んでくる。少しだけ良い匂いがした。リンナが近くに寄ってくると,少しだけどきどきする。

「さあ,行きましょう。最後の戦いに。この世界を終わらせに」

 リーダーシップを発揮してぼくたちを導くリンナは,ジャンヌダルクのような存在だ。ただそこにいて,一声かけてくれるだけでぼくの心は鼓舞された。
 この城の中には地球を破壊する力を持った竜がいるのだ。ぼくたちはその竜を退治しなければならない。そうすることで地球は救われる。でも,そのあとこの世界はどうなってしまうのだろう。
 意気込んで竜のいる城に乗り込むと同図に,心の中で濁った渦がのような感情がぐるぐると回っていることに気付いた。ぼくは,リンナがこの世界を終わらせるたいと思っていることに同意できないでいた。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品