不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

特攻


 村を出てからの目的地までは一週間かかった。ライアンが残した地図はありがたかった。どこまで進むべきで,どこで休息を取るべきかという計画を立てることができ,見通しを持つことが出来た。
 記号が付けられていた目的地に着くまでに多くの苦労があった。鉄で覆われたような固いサソリや,火を噴くプテラノドン,大型のニャンゴロンもいた。
 肝を冷やしたのは,卍の形をしたサボテンに出くわしたことだ。

「あら,かわいいモンスターね」
「リンナ! 近づいたらだめだ!」

 リンナは怪訝な顔をしてこちらを振りむいた。雄大は何事かと言った様子で飛び跳ねるようにして後退し,リンナの後ろに隠れている。

「何よ,おっきな声を出して。サボちゃんもおびえているじゃないのよ」
「そいつは臆病な生き物だけど,パニックになったら何をするか分からない。その針が皮膚に突き刺さったら,猛毒が駆け巡って死んでしまう。うかつに近づいたらだめだ。少々遠回りになっても,迂回して進もう」

 なるほど,とリンナは腕組みをして呟いた。だが,腰にかけていた剣を引き抜いて十分に間合いを取って相手の様子を伺っている。まるで獲物を見つけたライオンが草むらに隠れて襲いかかろうとするみたいに。

「ちょっと,リンナ。何してるの。危ないよ」

 声を潜めて雄大は言った。
 だめだ! と叫んだときには遅かった。リンナは剣を右手に閃光のように飛び出していた。


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