不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

遺言!?



 翌朝,宿屋を出ようとすると受付で呼び止められた。

『おはようございます。しっかり休めたでしょうか? これ,昨晩預かったものです』

 受付の女性の手には巻物の形をした紙があった。表面は土で汚れが目立っている。

『『ポケットに入っていた私物を渡しそびれた』といって,昨晩埋葬した者が持ってきました。お仲間が亡くなられたのですね。このたびはご愁傷様です』

 そう言って受付の女性が差し出した巻物を両手で受け取った。これはきっとライアンが残したメモだ。受け取るべきかどうか迷ったけど,ライアンが残した何かを引き継ぎたい。中に何が記されているのかも気になるところだった。中身を読むのが少しだけ怖い。昨日は,運命は変えられる,という話をしたけれど,もしこの中身が遺書のような記述なら,ライアンは自分の死を予期していたことになる。自分の歩いて行く台本に殺されることが記されていて,その通りに生きていくなんて悲しすぎる。

「どうせ余計なこと考えているんでしょ? いいから,ライアンが残した何かを読んでみましょう。そしたら,なにか分かることがあるかも知れないじゃない」

 受け取った巻物を広げた。リンナと雄大はぼくの左右に立って,顔を寄せ合うような形で文字を追った。そこには,地図と共にこれから向かうべき場所が記されていた。

「このバッテンの印がついているところに行けば良いのよね? それに,ここ読んで」

 リンナが巻物の下の方に書かれた注意書きのようなところを指さした。そこには次のように記されていた。


 勇者を志す三人と共に村を救うために尽くす
 叶えば,最後の敵を共に討つ


「これって・・・・・・」

 雄大の手は震えていた。

「雄大の言った通りだったのよ。ライアンは私たちと共に世界を救うつもりだったの。私たちの力不足でこんなことになってしまったけど,でも・・・・・・」

 リンナはぼくを見つめた。ぼくは力強く頷いた。

「運命は変えられる」

 自分に言い聞かせるように言った。
 ライアンの分まで,ぼくたちは精一杯生きて運命を切り拓くことを誓った。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品