不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

運命


「いい人だったよね」

 ライアンの亡骸は棺に納められ,土葬で葬られた。リンナが合唱をして供養している。特にリンナにとっては短い付き合いだったけど,思うことがあるのだろう。揉めてばかりだったけど,端から見ていても良いコンビだった。

「大切なことをたくさん教えてもらった。それなのに,何も返せなかった」
「これから一緒に返していこう。これからの私たちの生き方で」
「そうだね。これからどのように生きていくべきか,ライアンは教えてくれたから」

 出会った頃からの今日までのことを思い返した。一番長い時間を過ごしたぼくは,いろいろなことを学ばせてもらった。人は死ぬけど,思いは紡がれる。ライアンの中でも走であって欲しい。
 ふと,さみしさがこみ上げると共にライアンの存在について思いを巡らせた。

「ライアンは・・・・・・始めから死ぬ運命だったのかな」

 雄大とリンナが黙ってぼくを見つめた。ぼくが何を考えているのか,次に口にする言葉が想像できないと言った様子だが,決して急かすことはしなかった。ぼくは言葉を選ぶために,たっぷりと間を取って言った。

「この世界にとって,ライアンはただの登場人物に過ぎないわけだよね? ということは,ライアンには始めから役割が与えられていて,死ぬことは決まっていたのかなって・・・・・・。だとしたら,何だか悲しいよね」
「どうしてそんなこと言うのよ。そんなわけ・・・・・・無いじゃない」
「でも,ライアンは死んだ。ぼくの目の前に決められたイベントのように現れて,道筋を示してくれたのだとしたら,恩師が死ぬというのも設定として決まっていたんじゃないかな」

 そんなこと,と言い返そうとするリンナの声が虫が鳴いているように萎んでは消えた。きっと,リンナはぼくの考えにある程度理解を示している。ただ,受け入れられないのだ。偉そうに話をするぼくも,すぐには受け入れられそうにもない。ましてや,ライアンはぼくをかばって死んだのだ。
 雄大は違った。ぼくとリンナがうつむいていると,「でもさ」と彼は光る目で語り始めた。


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