不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

困難な道


「きちんと言えるじゃない。頑張りなさいよ」

 つり上がった目はさらに細区くなり,三日月のようになった。八重歯が覗いているから,どうやら笑っているらしい。自分の気持ちに嘘はないが,この人の笑顔を見るとなぜかホッとして間違った答えを出さなくてよかったと安心した。

「じゃあ,とりあえずここあらは二人が冒険に出発ね」

 狐目の女が隣に立っている男の方を向いて言った。男はそれにうなずいている。

「ここから別の世界に案内してあげるわ。困難に直面することもあるだろうけど,頑張りなさい。向こうで出会う仲間とともに」
「今からどこへ向かうんですか? その先には誰か仲間になってくれるの? 二人って,ライアンは?」
「質問が多い。それに,これから先はあなた達だけで進みます。いつまでも大人を頼りにしない」

 え? とライアンを見た。ライアンはそっぽを向いている。

「ライアン、どういうこと? 修行をつけてくれるって約束したじゃん! そんなのひどいよ!」

 ライアンは鼻の頭をぽりぽりとかいている。どういうこと? と狐目の女が問いかけた。

「そういうことだ。もう少しだけ,こいつらに稽古を付ける」

 女は何か察したような顔をした。勝ち気な顔が少しだけ暗くなる。

「その道を選ぶのね。でも・・・・・・大丈夫なの?」
「大丈夫も何も,こいつらはこれからどんなことも乗り越えると誓ったんだ。どうとでもなる。いや,乗り越えなければならない」
「・・・・・・分かったわ。あなたを尊重します」

 そういうと,女はこちらを向いた。

「もうしばらくライアンはあなたたちに付きそうとのこと。でも,勘違いしないで。いつかは分かれる。そう遠くない時期にね。そうしたら,君たちは自分たちで進まないといけない。分かったわね?」

 ライアンと一緒に旅が出来る。そのことで胸が一杯になった。ライアンと雄大とハイタッチをした。こっちの道の方が辛いわよ,と狐目の女が呟いたのはきっと聞き間違いだ。


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