不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

異国の地にて

 自分が攻撃されていると雄大が気付くのには時間がかからなかった。クラスでの伝達事項のうちで雄大だけが知らない内容があると言うことが立て続けに起こった。朝会がある日は体育館に登校後すぐ集合することや,教室の移動があることを伝えられないことが続いた。何かあるたびに「忘れていました」と担任の先生に言い訳をしていると,次第にだらしがないやつというレッテルを担任からも貼られた。授業中、メモ用紙のようなものが回り始めても,それが自分の元へ届くことはなかった。時折,男子がぼくの方を見てクスクスと笑っているのが目に入る。無視を続けていたある日,掃除の時間に例のメモ用紙が落ちていることに気付いた。誰も自分のことを見ていないことを確認すると,そのメモには,悪口がこれでもかというほどぎっしりと埋め尽くされていた。筆跡が異なるものが連なっていたことからクラスの全員が自分に牙をむいていることは容易に想像できた。
 家では,親に心配をかけたくなくてきさくに振る舞った。それもいつの日か限界を迎えた。珍しく転勤の続かない年が続いたが,雄大は限界だった。とうとう雄大の父さんは転勤を自ら志願した。次の勤務先はオーストラリアということだったが,雄大にとっては良い機会だろうと言うことで,中学校に上がるタイミングで家族揃ってオーストラリアに引っ越しをした。
 不安な気持ちがなかったわけではないが,これまでの関係性から解放されるという安心感に包まれていた。でも,オーストラリアでの暮らしはそんなに甘いものではなかった。

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