不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

消えた友達,引きこもるぼく


 休憩時間になると,いつものようにそっちゃがぼくの席へとやってきた。この頃は,山根くんが何も言わなくても,クラス全体がぼくたちを嘲笑の目で見ていた。そっちゃがぼくの席に近寄った途端にひそひそ話が始まる。弱い者通しが固まって楽しそうにしているよ,と呟いているのが脳内で勝手に再生される。実際にそんな言葉が聞こえてきたわけではない。なぜなら,その声はぼくの声だったから。視界の中で誰かが声を潜めるように会話をしているのを見ると,それがどのような言葉で自分を嘲笑しているのかを想像して,頭の中でカセットテープのように再生とリピートが繰り返された。
 バン,と大きな音を立てて机を叩き,勢いよく立ち上がった。「ほっといてくれよ!」とわめくようにして叫ぶと,そっちゃの肩を強く押した。そっちゃは後ろによろめいて,ぼくの前の席に座っていた人にぶつかった。ぼくはかまわず机の上にあった教科書やノートをなぎ払うように散らかした。何かを叫びながら暴れていたように思うが,何を言っていたのか思い出せない。もしかしたらそれは言葉ですらなかったのかもしれない。まるで他人のことのように断片的にしか思い出せない。覚えているのは,そっちゃが次の日から学校に来なくなったこと。そのまま転校してしまい,二度と顔を合わすことが出来なくなったことだ。
 ぼくは次第に学校に行かなくなり,卒業式も出ずに小学校を卒業した。
 お母さんは,そんなぼくの変わり様をひどく悲しんだ。中学校からは一念発起して頑張ろうとなんとか入学式には参加したが,その次に日にはまた元の生活に戻っていた。何をやってもだめなぼくが唯一心安らげる時間は,ゲームに没頭している時間だった。


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