不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

師弟関係


 老人から話を聞いた後,のどがつっかえるように息苦しくなった。水の中で溺れているみたいに,地上を目指して泳いでも泳いでも太陽が見えないような深い悲しみが襲ってきた。結局,どこの世界も同じだ。上に立てる人と虐げられる人がいて,日の目を見る人を恨めしく思っても,その人からあふれ出る雰囲気や人望はなかなか変えられない。自分には持っているものがない。そのことは常々思ってきたことだ。
 うつむいていてはだめだ。,眉間にしわを寄せるようにキッと力を込めて顔を上げる。老人を睨み付けるようにして向かい合った。

「それでも・・・・・・」

 息を整えた。

「それでもぼくは,人に応援されるか分からないけど,挑戦したい。勇者になりたいだなんてもう言わない。地球に住む大切な人たちを守るために,ぼくは進みたい」

 胸を張る。話しながらつばが飛ぶのも気にせず言い切った。誰かに向かって宣言したり,主張をしたのなんていつぶりだろう。もしかしたら初めてのことかも知れない。
 時おり顔につばがかかっているのを意にも介さず真剣な顔で聞いていた老人が,表情を崩した。

「良い顔だ。少しの間,稽古をつけてやろう」

 ありがとうございます,と深く,何度も頭を下げた。待て待て,と老人は笑いながら制止した。

「分かっていないことがもう一つある」

 ごくりとのどを鳴らした。何を言われるのだろう。どんなことを言われようとも覚悟は決まっている。それでも少しだけ,怖い。

「この老いぼれを敬え。上達は師をあがめることからだ。私の名前はライアン。以後、敬意を持って呼ぶこと」

 そんなことかよ,と内心ツッコミを入れながら,はいと胸を張って返事をした。

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