不登校だったおれが竜王相手に世界を守るために戦う話~学校に行けなくてもコマンド操作なら得意ですから~

文戸玲

恐怖する指の先

 突然,ひっ,と裏返った声と共に老人が腕に抱きついてきた。その声と感触に反応して思わずギャーッと飛び上がると,ぼくのその悲鳴にさらに驚き,老人が腰を抜かして尻餅をついた。ぼくはしばらく見えない恐怖に全身を包まれて身体を震わせて声を上げた。こんな勇者がいるものか,と冷静な気持ちを取り戻してやっと,老人が口に手を当ててガタガタと震えているのが目に入った。
どうかしましたか? と尋ねるぼくの声は真冬のロシアをコートも着ずに歩き人のように震えていた。もちろんそんな人を見たことはないのだけれども。
騒人はぼくよりももっとおびえていた。とにかく落ち着かせようと近づいて背中をさすろうとすると,地面について射楯を挙げてぼくの後ろを指さした。アルコール中毒者のように震える指が指す方向を見ると,思わず目をむいた。


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