絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 ~クソ雑魚メンタルだけど転移後は自分のために生きるよ~
ニンニク最高!
『寒くないか?』
『大丈夫だよ』
僕は今、空にいる。正確に言うと空を飛ぶプテュエラの背中に乗っている。彼女の背中は大きくて、凄くふわふわしている。いつまでもこうしていたい。風が凄くて声が聞こえないから、例の脳内に直接話しかける機能を使ってる。
『フレイムベアの毛皮のおかげでぽっかぽかだよ』
 
『それならよかった』
あの後プテュエラとしっぽりしてたら、ベステルタが帰ってきて我慢できなくなったみたいで一戦交えた。三人でまったりしている時、ベステルタが狩ってきたフレイムベアの毛皮を少し加工して被れるようにしてくれた。
なめし方なんて分からないから最初はすごい臭かったけど、試しに浄化してみると、べたべたするけど臭さはとれた。浄化スキルの万能さがすごい。
おかげで全然寒くない。っていうか汗掻くくらい暖かい。これ、人間にも需要あるんじゃないかな。
『そろそろ見えてきたぞ……ふむ』
プテュエラが指差す。そこにはちょっと高めの丘があった。なるほど高地に生えてるのか。
徐々に減速し、着陸するのかと思いきや、丘の真上でホバリングする。な、なんか周りで尋常じゃないほど風が唸り始めたんだけど。数秒で風の玉が出来上がる。玉って分かるのは球状に空間が歪んでいるからだよ……。
「少し掃除しておくか」
そう言うと、限界まで凝縮された風の玉から、無数の透明な何かが放たれた。それは真っ直ぐ丘に飛んでいき……おわった? 着弾したはずだが何の音もない。それが逆に恐ろしい。
「うわぁ」
丘に降りてみるとひどい有り様だった。
フレイムベアや馬鹿でかい猪、ぶっといとぐろをまいた蛇が、四肢や首を飛ばされ胴体は輪切りになり、バラバラ死体になって散乱していた。
「フレイムベアにダンプボア、ブラッドサーペントか。思ったより多かったな」
プテュエラの横顔は何の感情も抱いていないようで、絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。殲滅ってそういうことか。ホーミングミサイルじゃん。制空権の概念が無い世界に一方的な面制圧とかエグすぎる。いともたやすくおこなわれるえげつないホーミングミサイルだよ。
「……一応回収しておくか」
猟奇バラバラ現場を隠滅するように目に見える範囲から片っ端に収納していく。
フレイムベア先輩ばかり食べてたらマジで絶滅するかもしれないしな。食べれそうなやつは試してみよう。なーに、かえって栄養になる。浄化あるし。
「おい、野菜を取るんじゃないのか。そいつら不味いぞ」
ちょっと気が急いているプテュエラ。この人冷静と情熱の間が狭いな。
「この肉も浄化したら美味しくなるかもよ?」
「止めはすまい」
くいっと顎を上げ凛々しい表情。辺りを警戒モード。よだれ垂れてるよ。舐めたいよ。
「はいはい。じゃあ野菜収穫していくかな」
散らかった魔獣たちをあらかた収納し、辺りを物色していく。ほうほう、確かに野菜っぽいのがいろいろ自生してるな。
これはトマトかな……? でもトマトってこんなにドブ煮込んだような色してたっけ。なんかとげ生えてるし。うーん。
地面から伸びてるそれっぽそうな草を引っこ抜いてみる。
……なんかダークマターみたいなの出てきたけどたぶん玉ねぎだよね。形は玉ねぎなんだけどめっちゃピンク。けばけばしくて目が痛い。若者の街で育ったのかな?
おっ、ニンニク発見。よかった。これは普通だ。普通のニンニクだ。ニンニク最高!
「おい! それを捨てろ!」
ばしっ! プテュエラが羽でニンニクをはたき落とした。ニンニク様に何するんじゃい!
「それは毒草だぞ! 速効性が強くて一粒かじれば魔獣だって暫く動けなくなるし亜人もお腹壊すから食べない。人間が食べたら一発であの世行きだ!」
えっ?
フレイムベア先輩の体格を一粒で?
フグ毒超えてね? そんな危険なものなのか。見た目は大粒のニンニクなんだけどなぁ。臭いも完全に一緒。うーん……。絶死ニンニクとでも言っておこうか。うますぎて死ぬ、という意味になってほしい。
しばらく歩き回って食べられそうな、もしくは見覚えがありそうな野菜を収納していった。結局絶死ニンニクも少し取って帰った。もちろん全部浄化したよ。
帰りもプテュエラの背に乗っからせてもらった。ほんとふわふわだよね。いつまでもこうしていたい。そんな僕を見てフッと笑う横顔がたまらぬ。護衛されたい。ちょっと残念なところあるけど。
ベステルタの家に戻って早速いろいろ作ってみることにした。
「ちょっとそれ猛毒のやつじゃないの、正気?」
「私は止めたぞ」
ベステルタでさえも眉を顰め嫌そうな顔をする。くっ、ほんとに散々な評価だな。ふっ見てて下さい、ニンニク先輩の本当の力お見せしますよ。ていうかプテュエラは止めはすまいって言ってたのに。保身が早いよ。
「まあ見てて」
浄化した絶死ニンニクをそこら辺の石で潰し、すっかりフライパン代わりになっている岩プレートでじっくり焼いていく。フレイムベアから抽出した油を引いてはいるがやっぱり下に落ちちゃうな。勿体ない。切実にフライパンが欲しい。
部屋の中によい香りが充満していく。
これこれ!これだよ。この食欲を掻き立てる香り。
試しに絶死ニンニクの欠片を舌に乗せてみる。これで異常に舌先が痺れたりしたらアウトだが、そんなことはなく何も問題はなかった。ていうか早く食べたいよ。僕の中で絶死ニンニク=高級ニンニクの図式が完成した瞬間だった。
「どういうことなのこの香り……。お腹が空いて仕方ないわ」
「止めはすまい」
二人も毒草ってことを忘れてこの香りに夢中なようだ。ふふ、仕方ないよね。プテュエラについてはもう何も言わないよ。
「おまたせー」
どんっ。テーブルにフレイムベアの絶死ニンニクステーキを置く。ただのステーキとは言えでかい肉塊が三人分となるとこのテーブルも少し手狭になってくるな。
そもそもこのテーブル、ステーキがあんまり似合わないよ。ベステルタに大きめの木でも斬り倒してもらおうかな。
「きたか」
「きたわね」
すっかり臨戦態勢。待たせるのは悪い。早く食べよう。
「それじゃあいただきます」
なかなか忘れられない習慣を口にして、木で作った簡易な箸でステーキを口に運ぶ。
「なにこれ……おいしい……。凄まじい香りね……」
「はぐはぐはぐ」
うっとりするベステルタと血走った目で平らげていくプテュエラ。そんなに喜んでもらえると嬉しいよ。
二人の様子は誇張ではなく、この絶死ニンニクの風味は圧倒的に豊かで素晴らしい。強烈な匂いだけど嫌みではなく、ほくほくとした食感と甘み、ほんの少しだけ爽やかな苦味がある。やっぱり高級ニンニクだ。
「これってこんなに美味しかったのね。もちろん浄化があってこそだとは思うけど」
「ニンニクって言うんだよ。敬ったほうがいい」
「ニンニクか。敬わざるを得ないな。最高だ。生きていてよかった」
そういう二人はすでにぺろっと平らげており、まだかな? という目で僕を見ている。まだ半分も食べてないんだけどな。仕方ない、どんどん焼くか。
「亜人の生を感じるわ」
「もっとくれ」
わんこそばみたいに肉塊を消費していく二人。とりあえず僕のは確保したからいいけど、物理的におかしいスピードだよね? フレイムベアの肉、硬い訳じゃないけどかなり分厚いし。顎の筋肉どうなっているんだろう。
「ふう、美味しかったわ」
「またよろしく頼む」
結局明日の分まで平らげてしまった二人。旺盛すぎる。フレイムベア消滅するんじゃないの? 生態系に悪影響を及ぼさないのかな。ちょっと心配になって訊いてみた。
「あんなの害獣に決まってるじゃない。いくら減っても問題ないわよ」
「肉は不味いし弱いくせに凶暴だし、まあ害獣だな。毛皮に価値はあるらしいが、人間たちには難しいだろう」
「昔フレイムベア三頭に襲われた小国が壊滅してたわね」
「一頭なら高位冒険者か傭兵、騎士団を集めてなんとかってところだな」
フレイムベア先輩、外では害獣どころか災害クラスの化け物だった……。もっとやばいのが目の前にいるけど。
「じゃあ狩りまくっても大丈夫?」
「全然問題ないわよ。あいつら雑魚の癖に繁殖力強くて定期的に狩らないと。むかつくわ」
「当て付けのようにぽこぽこ増えるからな。私は適当に間引いてるぞ」
吐き捨てるように言い放つ。
フレイムベアさんに同情の気持ちが湧いてきた……。ていうか人間からしてみたら悪夢みたいな魔獣だよね。災害クラスの強さに繁殖力。あれ、亜人いなかったら詰んでない?
「でも、こんなに美味しいならあの害獣も役に立つわよね。見直したわ」
「ああ。本当にな。もうフレイムベアさえあればいい」
嬉しそうにフレイムベアの美味しさについて語る。もうそこら辺のスーパーに売ってるスナック菓子について話すような感じだからね。
おっと、いかん、このままでは他の肉が食べられなくなってしまう。
「うーん、でも同じのばかりじゃ飽きないかな。ダンプボアとかブラッドサーペントもとってきたから浄化して食べてみようよ」
正直、フレイムベアの全身の肉をローテしてるだけでまったく飽きないんだけど、色んな肉を食べてみたい気持ちもある。だって異世界の、おそらく浄化しないと食べられないレアな肉だよ? そんなの食べない方が失礼だよ。
「!? ちょっと! 他にあるなんて聞いてないわよ! プテュエラどういうこと!」
 
「と、止めなかっただけだ」
語彙少なくない?
がくがくとプテュエラの肩を揺らすベステルタ。
「大丈夫だよ。たくさん収納してきたからさ。みんなで食べよう?」
「ふーっ。そうね。そうしましょ」
ひとまず矛を収めてくれた。
「助かった、ケイ。感謝する」
「プテュエラは後で話があるわ」
「くっ」
仲が良いね。二人は……。うーん、ちょっと寂しいなー。
するとベステルタが気付いてニヤニヤしてきた。
「あら、ケイがさみしそうにしてるわね。どうする? 食後の運動する?」
「ふっ。寂しいなら中に入ってくればいいさ」
翼を広げるプテュエラ。さあ、飛び込んでこい! って感じ。少し卑猥な言い回しだな。でもご相伴に与らせてもらうとしよう。
片方が杭打ちしてる間にもう片方と口内ケア。終わったら交代して杭打ちして深く口内ケア。終わったら犬の散歩しながら口内ケア。みんなで口内ケアで口内ケア。杭を口内ケアしてもらいつつ口内ケア。うーん、なんのこっちゃ。でも幸せ。その日はそのまま意識がなくなるように寝た。
『大丈夫だよ』
僕は今、空にいる。正確に言うと空を飛ぶプテュエラの背中に乗っている。彼女の背中は大きくて、凄くふわふわしている。いつまでもこうしていたい。風が凄くて声が聞こえないから、例の脳内に直接話しかける機能を使ってる。
『フレイムベアの毛皮のおかげでぽっかぽかだよ』
 
『それならよかった』
あの後プテュエラとしっぽりしてたら、ベステルタが帰ってきて我慢できなくなったみたいで一戦交えた。三人でまったりしている時、ベステルタが狩ってきたフレイムベアの毛皮を少し加工して被れるようにしてくれた。
なめし方なんて分からないから最初はすごい臭かったけど、試しに浄化してみると、べたべたするけど臭さはとれた。浄化スキルの万能さがすごい。
おかげで全然寒くない。っていうか汗掻くくらい暖かい。これ、人間にも需要あるんじゃないかな。
『そろそろ見えてきたぞ……ふむ』
プテュエラが指差す。そこにはちょっと高めの丘があった。なるほど高地に生えてるのか。
徐々に減速し、着陸するのかと思いきや、丘の真上でホバリングする。な、なんか周りで尋常じゃないほど風が唸り始めたんだけど。数秒で風の玉が出来上がる。玉って分かるのは球状に空間が歪んでいるからだよ……。
「少し掃除しておくか」
そう言うと、限界まで凝縮された風の玉から、無数の透明な何かが放たれた。それは真っ直ぐ丘に飛んでいき……おわった? 着弾したはずだが何の音もない。それが逆に恐ろしい。
「うわぁ」
丘に降りてみるとひどい有り様だった。
フレイムベアや馬鹿でかい猪、ぶっといとぐろをまいた蛇が、四肢や首を飛ばされ胴体は輪切りになり、バラバラ死体になって散乱していた。
「フレイムベアにダンプボア、ブラッドサーペントか。思ったより多かったな」
プテュエラの横顔は何の感情も抱いていないようで、絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。殲滅ってそういうことか。ホーミングミサイルじゃん。制空権の概念が無い世界に一方的な面制圧とかエグすぎる。いともたやすくおこなわれるえげつないホーミングミサイルだよ。
「……一応回収しておくか」
猟奇バラバラ現場を隠滅するように目に見える範囲から片っ端に収納していく。
フレイムベア先輩ばかり食べてたらマジで絶滅するかもしれないしな。食べれそうなやつは試してみよう。なーに、かえって栄養になる。浄化あるし。
「おい、野菜を取るんじゃないのか。そいつら不味いぞ」
ちょっと気が急いているプテュエラ。この人冷静と情熱の間が狭いな。
「この肉も浄化したら美味しくなるかもよ?」
「止めはすまい」
くいっと顎を上げ凛々しい表情。辺りを警戒モード。よだれ垂れてるよ。舐めたいよ。
「はいはい。じゃあ野菜収穫していくかな」
散らかった魔獣たちをあらかた収納し、辺りを物色していく。ほうほう、確かに野菜っぽいのがいろいろ自生してるな。
これはトマトかな……? でもトマトってこんなにドブ煮込んだような色してたっけ。なんかとげ生えてるし。うーん。
地面から伸びてるそれっぽそうな草を引っこ抜いてみる。
……なんかダークマターみたいなの出てきたけどたぶん玉ねぎだよね。形は玉ねぎなんだけどめっちゃピンク。けばけばしくて目が痛い。若者の街で育ったのかな?
おっ、ニンニク発見。よかった。これは普通だ。普通のニンニクだ。ニンニク最高!
「おい! それを捨てろ!」
ばしっ! プテュエラが羽でニンニクをはたき落とした。ニンニク様に何するんじゃい!
「それは毒草だぞ! 速効性が強くて一粒かじれば魔獣だって暫く動けなくなるし亜人もお腹壊すから食べない。人間が食べたら一発であの世行きだ!」
えっ?
フレイムベア先輩の体格を一粒で?
フグ毒超えてね? そんな危険なものなのか。見た目は大粒のニンニクなんだけどなぁ。臭いも完全に一緒。うーん……。絶死ニンニクとでも言っておこうか。うますぎて死ぬ、という意味になってほしい。
しばらく歩き回って食べられそうな、もしくは見覚えがありそうな野菜を収納していった。結局絶死ニンニクも少し取って帰った。もちろん全部浄化したよ。
帰りもプテュエラの背に乗っからせてもらった。ほんとふわふわだよね。いつまでもこうしていたい。そんな僕を見てフッと笑う横顔がたまらぬ。護衛されたい。ちょっと残念なところあるけど。
ベステルタの家に戻って早速いろいろ作ってみることにした。
「ちょっとそれ猛毒のやつじゃないの、正気?」
「私は止めたぞ」
ベステルタでさえも眉を顰め嫌そうな顔をする。くっ、ほんとに散々な評価だな。ふっ見てて下さい、ニンニク先輩の本当の力お見せしますよ。ていうかプテュエラは止めはすまいって言ってたのに。保身が早いよ。
「まあ見てて」
浄化した絶死ニンニクをそこら辺の石で潰し、すっかりフライパン代わりになっている岩プレートでじっくり焼いていく。フレイムベアから抽出した油を引いてはいるがやっぱり下に落ちちゃうな。勿体ない。切実にフライパンが欲しい。
部屋の中によい香りが充満していく。
これこれ!これだよ。この食欲を掻き立てる香り。
試しに絶死ニンニクの欠片を舌に乗せてみる。これで異常に舌先が痺れたりしたらアウトだが、そんなことはなく何も問題はなかった。ていうか早く食べたいよ。僕の中で絶死ニンニク=高級ニンニクの図式が完成した瞬間だった。
「どういうことなのこの香り……。お腹が空いて仕方ないわ」
「止めはすまい」
二人も毒草ってことを忘れてこの香りに夢中なようだ。ふふ、仕方ないよね。プテュエラについてはもう何も言わないよ。
「おまたせー」
どんっ。テーブルにフレイムベアの絶死ニンニクステーキを置く。ただのステーキとは言えでかい肉塊が三人分となるとこのテーブルも少し手狭になってくるな。
そもそもこのテーブル、ステーキがあんまり似合わないよ。ベステルタに大きめの木でも斬り倒してもらおうかな。
「きたか」
「きたわね」
すっかり臨戦態勢。待たせるのは悪い。早く食べよう。
「それじゃあいただきます」
なかなか忘れられない習慣を口にして、木で作った簡易な箸でステーキを口に運ぶ。
「なにこれ……おいしい……。凄まじい香りね……」
「はぐはぐはぐ」
うっとりするベステルタと血走った目で平らげていくプテュエラ。そんなに喜んでもらえると嬉しいよ。
二人の様子は誇張ではなく、この絶死ニンニクの風味は圧倒的に豊かで素晴らしい。強烈な匂いだけど嫌みではなく、ほくほくとした食感と甘み、ほんの少しだけ爽やかな苦味がある。やっぱり高級ニンニクだ。
「これってこんなに美味しかったのね。もちろん浄化があってこそだとは思うけど」
「ニンニクって言うんだよ。敬ったほうがいい」
「ニンニクか。敬わざるを得ないな。最高だ。生きていてよかった」
そういう二人はすでにぺろっと平らげており、まだかな? という目で僕を見ている。まだ半分も食べてないんだけどな。仕方ない、どんどん焼くか。
「亜人の生を感じるわ」
「もっとくれ」
わんこそばみたいに肉塊を消費していく二人。とりあえず僕のは確保したからいいけど、物理的におかしいスピードだよね? フレイムベアの肉、硬い訳じゃないけどかなり分厚いし。顎の筋肉どうなっているんだろう。
「ふう、美味しかったわ」
「またよろしく頼む」
結局明日の分まで平らげてしまった二人。旺盛すぎる。フレイムベア消滅するんじゃないの? 生態系に悪影響を及ぼさないのかな。ちょっと心配になって訊いてみた。
「あんなの害獣に決まってるじゃない。いくら減っても問題ないわよ」
「肉は不味いし弱いくせに凶暴だし、まあ害獣だな。毛皮に価値はあるらしいが、人間たちには難しいだろう」
「昔フレイムベア三頭に襲われた小国が壊滅してたわね」
「一頭なら高位冒険者か傭兵、騎士団を集めてなんとかってところだな」
フレイムベア先輩、外では害獣どころか災害クラスの化け物だった……。もっとやばいのが目の前にいるけど。
「じゃあ狩りまくっても大丈夫?」
「全然問題ないわよ。あいつら雑魚の癖に繁殖力強くて定期的に狩らないと。むかつくわ」
「当て付けのようにぽこぽこ増えるからな。私は適当に間引いてるぞ」
吐き捨てるように言い放つ。
フレイムベアさんに同情の気持ちが湧いてきた……。ていうか人間からしてみたら悪夢みたいな魔獣だよね。災害クラスの強さに繁殖力。あれ、亜人いなかったら詰んでない?
「でも、こんなに美味しいならあの害獣も役に立つわよね。見直したわ」
「ああ。本当にな。もうフレイムベアさえあればいい」
嬉しそうにフレイムベアの美味しさについて語る。もうそこら辺のスーパーに売ってるスナック菓子について話すような感じだからね。
おっと、いかん、このままでは他の肉が食べられなくなってしまう。
「うーん、でも同じのばかりじゃ飽きないかな。ダンプボアとかブラッドサーペントもとってきたから浄化して食べてみようよ」
正直、フレイムベアの全身の肉をローテしてるだけでまったく飽きないんだけど、色んな肉を食べてみたい気持ちもある。だって異世界の、おそらく浄化しないと食べられないレアな肉だよ? そんなの食べない方が失礼だよ。
「!? ちょっと! 他にあるなんて聞いてないわよ! プテュエラどういうこと!」
 
「と、止めなかっただけだ」
語彙少なくない?
がくがくとプテュエラの肩を揺らすベステルタ。
「大丈夫だよ。たくさん収納してきたからさ。みんなで食べよう?」
「ふーっ。そうね。そうしましょ」
ひとまず矛を収めてくれた。
「助かった、ケイ。感謝する」
「プテュエラは後で話があるわ」
「くっ」
仲が良いね。二人は……。うーん、ちょっと寂しいなー。
するとベステルタが気付いてニヤニヤしてきた。
「あら、ケイがさみしそうにしてるわね。どうする? 食後の運動する?」
「ふっ。寂しいなら中に入ってくればいいさ」
翼を広げるプテュエラ。さあ、飛び込んでこい! って感じ。少し卑猥な言い回しだな。でもご相伴に与らせてもらうとしよう。
片方が杭打ちしてる間にもう片方と口内ケア。終わったら交代して杭打ちして深く口内ケア。終わったら犬の散歩しながら口内ケア。みんなで口内ケアで口内ケア。杭を口内ケアしてもらいつつ口内ケア。うーん、なんのこっちゃ。でも幸せ。その日はそのまま意識がなくなるように寝た。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
141
-
-
124
-
-
337
-
-
58
-
-
15254
-
-
59
-
-
70810
-
-
221
-
-
35
コメント