絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 ~クソ雑魚メンタルだけど転移後は自分のために生きるよ~

萩原繁殖

プテュエラ

「プテュエラ久しぶり」

「ああ、元気そうだな……って、なんだそれは?  非常食か? 趣味が悪いぞ」

 ばっさばっさと大きな翼をはためかせる亜人。僕とベステルタとまとめて包めるくらい大きい。そして美しい。黄金と漆黒の羽が入り交じっている。と、鳥系かぁ……。はい、タイプです。大好きです。いきなり非常食呼ばわりする冷徹さもGoodです。

「初めましてプテュエラさん。私は種巣啓と申します。ケイと「うっわしゃべったぞ」呼んでください」

 癖の無い金髪をボブカット風に揃え、軍人みたいな被り物をしているプテュエラさん。どこで手に入れたんだろ。露骨に僕を怪しんでいる。その容赦の無い態度、ありがとうございます。でもちょっとストレート過ぎて凹みます。

「くくく、プテュエラ、ケイは非常食じゃないわ。契約者よ。驚くのは無理無いけどちゃんと話してあげて」

「あ、ああ」

 楽しそうに身体を捩らせて笑うベステルタ。楽しそうならいいよ。もう。

「ん? 契約者? ん? 人間?  お前、話せるのか? つまりあれか、そういうことか?」

 混乱しつつも既に結論に達しそう。さて、出会って何秒で即アクエ○オンするんですかね。

「ベス、いいのか?」

 話しかけるプテュエラさん。
 あっ、ベスって愛称いいな。今度僕もそう呼ぼう。

「もちろん。ケイはわたしたちの希望よ。大事に扱ってね」

「もちろんだ!」

 軍人系クール美女っぽいけど、意外に感情あらわにするんだなと思った瞬間、ぶわっと一陣の風が駆け抜ける。

 ガシッ。
 肩に鋭い痛み
 いたっ。
 ふわっ。え、な、なに?

 いつの間にか青い空。白い雲。なぜか全裸の僕。おそら、きれい。

「さむっ! なんで全裸なの!」

「すまん、我慢できなくてな」

 するとプテュエラさんの声が上から聞こえた。えっ、上?

「ちょ、ちょっとなんで空飛んでるの! なんで全裸なの!」

「私は空が落ち着くんだ」

 やだこの子、話通じない……。
 そしてふわっと抱きすくめられる。ベステルタよりずっと獣っぽい匂い。でも落ち着く。暖かい……。

「いやいや! 騙されないよ!」

「騙してなどいない。空が好きなんだ。だから空でする」

 ひえええぇぇぇぇ。

 僕は人類で初めて空でいたした人間として記録されるべきなんじゃないかな。

 もう、主導権の握れ無さがベステルタの比ではなかったよ。空じゃ何もできない。身動きしたら落ちると思うとね。

 何がなんやらのうちに第一ラウンドは終わって、こってり搾り取られた。一通りやって満足したプテュエラさんはやっと僕と一緒に地上に戻ってきた。そして一気にもどした。

「おろろろろろ」

「ちょっとプテュエラ! やり過ぎよ! いきなり空に連れ去るなんて貴女らしくもないわ!」

「す、すまない。興奮してしまって」

「おろろろろろ」

「ケイは脆弱な人間なのよ? 全裸に剥いて寒い空にいたら風邪も引くし、気分も悪くなるわ。分かってる? わたしたちの希望なのよ? 貴女は知り合いの中でも冷静だと思ったから引き合わせたのに……」

「うっ……面目無い」

 ぶちギレモードのベステルタさん。
 おろおろするプテュエラさん。
 誰でもいいから背中さすってください。あと服をカエシテ……カエシテ……。

「すまない、ケイ。この通りだ」

 申し訳無さそうに土下座するプテュエラさん。ちょっとくらい意地悪してもいいよね?

 僕はプテュエラさんの後ろに回りいろいろ眺める。いろいろと、とてもよい形をしています。スレンダー体型で、ほっそりしている。金髪のきっちりしたボブカットに、軍人みたいな帽子を被っているのが可愛らしい。

 鋭い猛禽類のような眼差しとシャープな輪郭は見る物の佇まいを直させる迫力がある。首から上はそんな感じだが、下はほぼ鳥だ。あれだ、ハーピーってやつ。


 服は着ていないからいろいろ丸見えなんだけど、うまく隠れている。首から上はクール美人。下はハーピー。うーんギャップがすごい。最高ですね。

「ゆ、許してもらえないだろうか」

 顔面蒼白でぶるぶる震えるクール美人。すみません、もう少し目に焼き付けたいです。

「肩も痛かったし寒かったし吐いちゃうしで散々でした」

「うぅ……すまない。全て私が悪い。どうか私の命で償うから、他の亜人には種をやってくれ。頼む、この通りだ」

 怜悧な美貌を歪め、ほろほろと涙を流すプテュエラさん。やべ、やり過ぎた。ベステルタも「もう勘弁してあげて」と目で訴えている。

「いえ、気にしないで下さい。亜人の方々の境遇は伺っています。仕方ないことです」

 アルカイックスマイルを浮かべる。決まったかな。ベステルタは気持ち悪そうに見ているけど、大丈夫なはず。

「くうぅ……、すまない。恩に着る。この『殲滅の風鷲プテュエラ』はケイを契約者と認め尽くすことを誓おう」

 なんか二つ名物騒すぎない? ちょっと肝が冷えてきた、今更だけど。

「はいはい。じゃあプテュエラも反省したことだし、ご飯にしましょう」

 ベステルタがぱんぱんと手を叩いて仕切ってくれた。

「そうだな、コス茶もたくさん取れたし早速やるか?」

 涙目で期待した眼差しで僕を見てくるプテュエラさん。
 おいおいこの人反省してねーな。けっこう残念な人なのか?

「プテュエラ」

「す、すまないジョークなんだ。あまりこういう状況に慣れてなくて」

 ベステルタが低い声でたしなめてプテュエラさんがあわあわと恐縮している。なるほど、普段は本当に冷静で頼りになる亜人なんだろうな。ベステルタは大胆だけど慎重な性格だし、そういうところはきちんと見ているはず。ほんとにたまたまなんだろうな。

 仕方ないか。仕事できて頼れるクールなOLが想定外の出来事にわたわたしてしまってる感じと思えば可愛い気がする。

「はぁ……。ほんとに頼むわね? 貴女そんなに残念だったっけ? 一緒にケイを支えてほしいの。まあとにかく中に入っていろいろ話しましょう」

「ああ。もう大丈夫だ」


 おっ、切れ長のまなじり。きりっとした。すっごい、護衛されたい……。

 たらったったった。ベステルタさんのおうちでご飯です。洞窟メシ、今夜も始まります。

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