悪魔座
追われる男
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
激しい息遣いで汗だくになりながら走り続ける。
方向もわからないまま、男はただ必死に逃げていた。
年は二十代後半だが無造作に伸ばされた髪と無精髭のせいで一回りは老けて見える。
この男、川合玉三は二年前に起きた殺人事件の容疑者として全国指名手配中の身だ。
十代の頃から非行を繰り返し、恐喝、暴行、傷害で少年院や刑務所に何度も入っており、逮捕と出所を繰り返している。
二年前の事件当時もその素行は変わらず、仕事帰りの電車の中で自分好みの女性を物色しては後を付け、人気の無い場所に連れ込み性的欲求を満たしてきた。
しかし中には当然必死に暴れて抵抗する女性もいる。
そういった自分の思い通りにならない時には逆上して、隠し持っているサバイバルナイフで無惨に相手の命を奪っていったのである。
その凶行による犠牲者となったのは三人。
全て二十代の女性である。
三人も殺害しただけあって大きな事件としてニュースでも取り上げられ、周辺の地域では連日警察による大規模な捜査やマスコミの徹底的な聞き込み取材が始まった。
マスコミが入手した情報は随時テレビや新聞などで報道され世間の注目を浴び、触発された警察も威信を掛けて捜査を行った結果、川合が容疑者として浮上。
自分に容疑が掛けられている事を感じ取った川合は刑務所に服役していた時の囚人仲間だった福本の事を思い出した。
福本は出所後に逃がし屋の様な仕事をしていると聞いたことがある。
すぐに福本に連絡を取り内容を話すと、福本は金さえあれば逃がしてやれると言った。
言われるままに大金を支払うと、福本の手配で闇医者による整形手術を行い確保された逃亡ルートを使って警察の包囲網をかいくぐる事に成功。
その後も警察の捜索は続いたが時が経つにつれマスコミで取り上げられる事も少なくなっていくと徐々に事件の事も世間から忘れ去られていった。
二年も経った今では遠く離れたこの土地で怪しまれることなく別人としての生活を送ることが出来ている。
そして、この日もいつもと変わらず何気ない一日が終わるはずであった。
仕事が終わってパチンコに寄った帰り道。
久しぶりに五万も勝った川合はかなり上機嫌に足取り軽く歩いていた。
時間は夜の10時。
人通りの少なくなった路地裏を歩いて時
「・・・川合玉三」
それはまさしく二年ぶりに聞く偽名ではない自分の名。
かすかに、だがはっきりと名前を呼ばれ川合は全身の血の気が引く感覚がしたが、振り返って声の主を確認する。
しかし、そこに人の姿は無い。
(き、気のせいか・・・)
疲れているんだろう。
額にたまった汗を拭いながら、自分に言い聞かせ再度歩きだそうとした瞬間 ー
「川合玉三」
二度目の声、間違いない。
(警察か!?)
今度は振り返らず、次の瞬間には走り出していた。 
(今さら捕まってたまるか!)
家の周辺にはすでに警察がいる可能性がある。
戻る訳にはいかない。
とにかくこの場から少しでも離れる為に全力で走った。
激しい息遣いで汗だくになりながら走り続ける。
方向もわからないまま、男はただ必死に逃げていた。
年は二十代後半だが無造作に伸ばされた髪と無精髭のせいで一回りは老けて見える。
この男、川合玉三は二年前に起きた殺人事件の容疑者として全国指名手配中の身だ。
十代の頃から非行を繰り返し、恐喝、暴行、傷害で少年院や刑務所に何度も入っており、逮捕と出所を繰り返している。
二年前の事件当時もその素行は変わらず、仕事帰りの電車の中で自分好みの女性を物色しては後を付け、人気の無い場所に連れ込み性的欲求を満たしてきた。
しかし中には当然必死に暴れて抵抗する女性もいる。
そういった自分の思い通りにならない時には逆上して、隠し持っているサバイバルナイフで無惨に相手の命を奪っていったのである。
その凶行による犠牲者となったのは三人。
全て二十代の女性である。
三人も殺害しただけあって大きな事件としてニュースでも取り上げられ、周辺の地域では連日警察による大規模な捜査やマスコミの徹底的な聞き込み取材が始まった。
マスコミが入手した情報は随時テレビや新聞などで報道され世間の注目を浴び、触発された警察も威信を掛けて捜査を行った結果、川合が容疑者として浮上。
自分に容疑が掛けられている事を感じ取った川合は刑務所に服役していた時の囚人仲間だった福本の事を思い出した。
福本は出所後に逃がし屋の様な仕事をしていると聞いたことがある。
すぐに福本に連絡を取り内容を話すと、福本は金さえあれば逃がしてやれると言った。
言われるままに大金を支払うと、福本の手配で闇医者による整形手術を行い確保された逃亡ルートを使って警察の包囲網をかいくぐる事に成功。
その後も警察の捜索は続いたが時が経つにつれマスコミで取り上げられる事も少なくなっていくと徐々に事件の事も世間から忘れ去られていった。
二年も経った今では遠く離れたこの土地で怪しまれることなく別人としての生活を送ることが出来ている。
そして、この日もいつもと変わらず何気ない一日が終わるはずであった。
仕事が終わってパチンコに寄った帰り道。
久しぶりに五万も勝った川合はかなり上機嫌に足取り軽く歩いていた。
時間は夜の10時。
人通りの少なくなった路地裏を歩いて時
「・・・川合玉三」
それはまさしく二年ぶりに聞く偽名ではない自分の名。
かすかに、だがはっきりと名前を呼ばれ川合は全身の血の気が引く感覚がしたが、振り返って声の主を確認する。
しかし、そこに人の姿は無い。
(き、気のせいか・・・)
疲れているんだろう。
額にたまった汗を拭いながら、自分に言い聞かせ再度歩きだそうとした瞬間 ー
「川合玉三」
二度目の声、間違いない。
(警察か!?)
今度は振り返らず、次の瞬間には走り出していた。 
(今さら捕まってたまるか!)
家の周辺にはすでに警察がいる可能性がある。
戻る訳にはいかない。
とにかくこの場から少しでも離れる為に全力で走った。
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