世界最強のゾンビになって生き返ったが、とりあえず元の世界に帰る旅に出る
233話「新生連合国軍
「甲斐田君!」
「皇雅君…!」
「コウガさん…!」
提案を告げてからもう一度周りを見る。誰もが驚愕した反応をしている中、藤原と高園とクィンがとても嬉しそうに笑顔をこぼしていた。
「コウガさん、今のお言葉は本当ですか…?」
ミーシャは目を大きく開いて本当?本当?って感じで俺に確認してくる。しかし彼女からもどこか喜びの感情が出てる気がする。
「本当だ。本気でこの連合国軍と手を組みたいと考えている。今日はそのことでここに来たんだ」
カミラに目を移すと彼女はその通りだという表情をしていた。やっぱりそういう用件だったか。この先の戦いに対して、連合国軍と共闘するべきだと彼女も考えていたんだな。
「連合国軍と手を組む、か。軍に加入する、ではないんだな」
ガビルが静かな声音で話しかけてくる。
「あーそうだな。軍に入る……もまー…ありだと思ってる。俺を連合国軍の戦士にしたいならそれでも良いぜ。藤原や高園たちと同じ俺も異世界人だしな」
「その言葉……今の我らにとっては希望そのものだ。魔人族の勢力は減ったとは思うが新たな脅威が加わった以上その戦力は未知であり非常に危険だ。
一方の我ら連合国軍は今も魔人族とまともに戦える兵士・戦士が必要としている。君のような者なら是非我が軍に入って欲しいところだ」
ガビルの言葉に誰も反対を述べる者は出てこなかった……かと思った。
「以前ガビル国王から同じような提案を持ち掛けたがお前はそれを拒否した。今さら手を組みたいというのはどういう風の吹き回しだ?」
八俣倭が俺に鋭い視線をぶつけて問いかけてきた。剣呑な雰囲気を纏った彼を見た国の要人たちはもちろん、元クラスメイトどもやクィンですらも身を竦ませる。フミル国王がどうしたんだと八俣を治めようとしているが聞く耳持たずの態度だ。
「確かに俺のこれは手のひら返しって捉えられても仕方ねーって思ってる。総大将でもある国王の頼みを突っぱねたのは俺だ。俺と鬼族だけでやっていけるって大見得切ったことも確かだ。あの時の俺は本気でそうだって思ってたからな」
「……………」
「けど現実はそう甘くなかった。魔人族軍の数は大戦が始まった直後と比べてだいぶ少ないけどその戦力はまだそんなに落ちていない。対してこっちは数も戦力も減ってしまっている状況だ。俺一人でも残りの魔人族を殺すくらいはできる。けど仲間たちを護りながらだと難易度はだいぶ上がる。
ましてや新たに出てきたバルガ……奴とまともに戦って勝てるかどうか分からねー」
「分からないだと?ザイートを殺したことでさらに強くなったお前がか?」
「……本能からの勘ってやつかな、ただ戦って勝つ……そんな次元で終わりそうにねーと予感している…。奴を殺し切るには俺だけじゃきつい。サポート役…一緒に戦ってくれる誰かが必要だ。
まずは鬼族、それと竜人族だけど……彼らはだいぶ消耗している。鬼族も魔人族軍との戦いで精一杯になる。彼女らの戦いもあることだし」
アレンたちのネルギガルドへの復讐…は伏せておいた。
「お前が持つ手札だけでは足りない、だから連合国軍と組むことを取りにきたわけか」
「……ああ」
「やはり勝手だな。お前の思い通りに俺たちが動くとでも?」
俺を睨んだままの八俣に藤原やクィンが何か言おうとする。それらを遮って八俣の目を見る。
「勝手……やらせてもらうさ!俺の目的…元の世界に帰る為なら、手段を選ばないつもりだ。だから連合国軍と組む。足並み揃える必要があるなら揃えてやるさ。たとえ自分勝手だといわれようともな」
八俣が微かに目を見開く。周りからもざわざわと声が漏れる。
「仲間を護る。魔人族どもに殺させない」
アレンとカミラとクィンと藤原を見て言う。ちらと高園にも目を向ける。
「元の世界に帰すと約束してくれた人を死なせない」
ミーシャを見て言う。
「それらの為に、連合国軍と一緒に戦わせてほしい」
全てはっきりと言葉にして言い切った。八俣は目を伏して黙り込んだ。
ああそうだ、一緒に戦いたい理由はまだあったな……。
「それと……誰かを頼ることも必要だからな。そのことを最近思い出させてくれたんだ。頼る数は多い程良い。八俣倭、あんたのことも頼りたいって考えてるんだぜ」
「……!!」
「ほう」
俺の言葉に最初に反応したのは高園だった。彼女こそが思い出させてくれた張本人だからな。高園は頬を赤くさせて俺に嬉しそうな視線を向けていた。
一方の八俣は意外そうに俺を見るとさっきまでの剣呑さを引っ込めて面白そうに口角を上げた。
「頼るか……。世界最強と言っても過言ではないお前が、お前より弱い俺たちを頼る、そう言ったのか」
「ああ。アレンとカミラ、鬼族も竜人族も、そしてここにいる全員も頼ってやるよ。そうすれば俺は本当の意味で誰よりも強くなれてるって思わねーか?」
勝ち気に満ちた態度で言ってやると八俣はくっくっくと笑い出した。そして良いだろうとこぼすと、
「認めよう。甲斐田皇雅、お前とその仲間たちと共に魔人族軍を殲滅するぞ」
俺の連合国軍の加入を認めてくれた。
「頼りにしてるぜ 先輩」
「俺もがっつり頼らせてもらうからな 後輩」
こうして俺と鬼族は人族大国の連合国軍とも正式に共闘することが決まり、俺は連合国軍の戦士として認められた。ミーシャがよかった~と年相応に喜んでみせたりクィンがほっとした顔を見せて笑ってたりと色々な反応をする中、アレンに話しかける。
「そういうわけで俺は連合国軍と一緒に魔人族と戦うことになった。でもアレンたちは構わず、鬼族総出でネルギガルドへの復讐に集中して欲しい。奴を殺すことで魔人族軍の戦力を大きく削ぐことになるしな」
「コウガ、私たちの為にもここのみんなと組んでくれたの?」
「そうとも言える。あとネルギガルドを殺した後もし余力があったら、アレンだけでも俺のところに来て欲しい。何ていうか、俺がもしヤバくなってたら支えてほしいんだ……」
「……!ん、任せて!」
アレンは嬉しそうに笑って俺の手を握りながら了承してくれた。互いに手を繋いでいるところに高園をはじめとする元クラスメイトどもが近づいてきた。
「………甲斐田って本当に変わったよね。ここ最近で急にさ?」
「まぁ俺もそう思うよ。自分でも言わないようなことを言った気がしてる。まーこんなこと言うようになったのはお前に諭されたからかもな」
曽根の言葉に俺はそう返すと高園を見る。高園はまた赤面して目を逸らす。しかし顔からは喜びが溢れ出ている。
「私たちのことも頼るつもりなの?」
「ま、そうならざるを得なくなったら頼るよ、お前らも。曽根、米田、堂丸もな」
「ふーん、そ」
「う、うん……何が出来るか分からないけど、頑張ります…!」
「……っ。ま、まぁ俺が敵の総大将を倒すってことになっても文句は無しだからな!」
曽根はそっぽ向いて照れくさそうにして、米田は魔法杖をぎゅっと握って返事して、堂丸は強気になって言い返した。
「……ついでにテメーも頼るかもしれねー。藤原と似た性質の攻撃ができるみたいだしな」
「…………」
ただ中西だけは暗い表情のままでろくに返事もしなかった。
しばらくしてから俺を加えた「新生連合国軍」が結成され、新生魔人族軍に勝利すべくガビルが色々言葉を並べてから勝利の誓いを大いに叫んだ。それが終わると改めて今後についての会合が始まった。
そこに八俣が割って入り、俺たちに何かを見せるべく懐から石のようなものを取り出した。
「そいつは“魔石”。今の魔人族をつくりあげた元凶であり、奴らに勝利する為の俺たちの切り札にもなり得るものだ」
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