世界最強のゾンビになって生き返ったが、とりあえず元の世界に帰る旅に出る
215話「テメーらの自己責任だ!」
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「ククククク…!まぁ余興にしては楽しめた方か。人族のたくさんの悲鳴と絶叫、血と死を見ることが出来た。兵士団長とやらが無様に敗北した様を見せつけられた民どもの絶望した面もケッサクだった…!」
回想を終えたザイートはまた愉快そうに笑う。そうしているうちにラインハルツ王国付近に着地する。陸地に立ったところでわざと戦気と魔力、そして瘴気を思い切り噴き出して存在感を引き出す。
その数分後にザイートを連合国軍が取り囲んだ。その中心にラインハルツの兵士団長ラインハート改め、八俣倭(日本人)もいた。
「一目見ただけで分かった。そこの黒髪のお前が同胞を討った兵士だな?」
「やれやれ、まさか魔人族のトップが出向いてくるとは…。それとどの魔人族のことを言ってるのか分からないが、昨日ここに来た魔人族は俺が全員斬ってやったぞ、ザイート」
「んん?お前、は……………………そうか、そういうことだったのか!
クククハハハハハ!!まさか百年以上前に我らを滅ぼしたあの忌々しい異世界人がいたなんて!お前の顔もよぉく憶えているぞ!!」
ザイートは倭を目にした途端全てを理解した。そして強敵と会えた嬉しさとも、かつて自分たちを滅亡寸前まで追い込んだ怨敵に対する憎しみともつかないような哄笑を上げた。
「クロックが殺されたのも納得がいった。あの時よりもさらに力をつけたようだなァ?これは愉しめそうだ……!」
「お前みたいな奴をも殺す為につけた力だ。そしてそれは間違いじゃなかった。お前は俺がここで終わらせる!!」
そしてザイートと倭による一騎打ちが始まった。連合国軍の誰もが二人の戦いに手を出せずにいた。マリスも固唾を呑むばかりで一歩も動くことが出来ないでいた。
「はぁ……はぁ………っ」
「グァハハハハハ……!」
倭が切り札である「限定超強化」を発動して本気を出す。それを見たザイートも本気でいこうと「限定進化」を発動しようとした、
その時だった――――
「ん?.........おいおい、マジかよ」
「……?」
ザイートは力を突然霧散させて別の方に意識を集中させた。倭は油断なく剣を構えて警戒している。
「……………悪い癖が出ちまった。俺のホームからこんな濃密な戦気が感じ取れてることにも気付かないで戦ってた。しかも同胞の戦気が大勢消失しているだと?
この戦気………ああそうか、奴が入り込んでるのかァ…!」
独り言を終えるとザイートは倭に背を向けた。その態度にさしもの倭も戸惑いを見せる。
「悪いなァ、お前とはまた今度だ。我がホームに異物が紛れ込んでやがる。それも、俺がずっと殺したいと思っているメインの対戦相手がな…!命拾いしたな、またいずれ―――」
それだけ言い残すとザイートはラインハルツ領域を、デルス大陸を発った。
「ったく、何がまた今度だ。出来れば二度とご免だ、あんな化け物」
強化状態を解除した直後、倭は息を荒げてその場に座り込んだ。その彼をマリスたちが心配そうに介抱する。
「奴が俺との戦いを放棄してまで別件を優先した理由………おそらく甲斐田の奴だな。そういえばあいつは今単独で魔人族の本拠地に強襲を仕掛けたんだってな。ぶっ飛んだ奴だ」
疲れた様子の倭だがどこか面白そうに笑う。そして空を見上げて皇雅に言葉をかける。
(悪い、あの化け物をどうにか出来るのはお前だけだ。この世界の為に、ザイートを討ってくれ…!)
「――土足で人ん家に上がり込んでんじゃねーぞ!!ベロニカを殺させはしねー。それ以上の好き勝手は許さん、待ってろぉ!
カイダコウガぁ!!」
*
「何なのこの男は……!?屍族として蘇った駒たちの一人一人の戦力が、最上級の屍族や魔物と同等、いえそれ以上なのよ!?」
場所は再び魔人族の本拠地……ベロニカの個室。
大量のモニターがある部屋、床に幾何学模様が何重にも巻かれた術式に手をついたまま、ベロニカは冷や汗を流しながらモニターに映っている亜空間の中の様子を見ていた。オリジナルの召喚魔術で呼び出した駒たちによって蹂躙されてズタボロになって無様に這いつくばる皇雅の姿を、始めはそう予想していた。
だが現実はその予想が大きく覆された。蹂躙されているのはその逆…召喚兵たちであり、皇雅の規格外の武術・魔法攻撃によって何度も殺されていく様を見て、ベロニカは大いに戦慄する。
しかし召喚兵たちが殺される度に憎悪と戦力が増すようになっている以上、いずれはこちら側に勝機が訪れることだろうと高を括り、召喚魔術の質をさらに上げる。
「私自身も余力はたっぷり残っている。焦ることはない...いずれ精神をすり減らしきって憔悴しきった彼を無力化させるのは容易なのよ…!」
そのはずだ、と自身に言い聞かせて召喚魔術に集中する。
(けど何なの、この凄く嫌な感じは?払拭できない…何か、マズい予感が……)
ベロニカが抱く漠然とした悪い予感は、その約十分後…皇雅が全ての屍兵を10回以上ずつ殺したあたりで的中することになる―――
*
何だか、以前の自分に戻った気がする―――
今目の前にいる敵全ては、俺が嫌悪してやまなかった、死んでほしいとも思ったことがあるような奴らだった。
そいつらと戦っているうちに(実際は俺の一方的な蹂躙だが)、半年前の自分が戻ってきたようだった。あの、殺伐とした人格がまた戻ってきたのだ。今以上に他人を嫌い、敵としか見られない。そんな自分に戻ってきたのだ…!
他人は皆敵……全員が俺を攻撃・排除しようとする敵なんだと、思い込んでいる自分。
去年の…学校で起きた俺がクラスで完全に孤立するきっかけとなった事件と同じ、あれと同じ様に俺は他人には攻撃されるんだって思い込んでいる。
今も同じだ、目に映る奴らは他人…敵だ。しかも全員明確な敵意と憎悪、殺意も向けてきている。
俺はこいつらに理不尽をはたらいたことも悪いこともしなかったのに、俺だけがこうして攻撃されようとしている。排除されようとしている。殺されようとしている。
自分たちが死んだのは…あんな化け物どもに殺されたのは他でもない自分たちのせいだというのに……。自分たちの失態と怠慢を全て棚に上げて、全部俺のせいだと理不尽な非難をしてきやがる……。
そんな奴らと相対した俺の中から、躊躇いも良心も消えたのだった―――
「「「「「死ね甲斐田ああああああああああ!!!」」」」」
ひとまず闘技場内にいる元クラスメイトどもとドラグニアの王族ども、サントの冒険者どもとハーベスタンの貴族どもを全員返り討ちにしたが、最初と同じく全員変わらず元気よく俺を殺そうとかかってくる。
「おい、元クラスメイトども。テメーらにはまだ言ってなかったな、改めて言ってやるよ。
テメーらがモンストールどもに殺されたのは全部テメーら自身の責任だ!」
かつて高園たちに言い放った言葉を、こいつらにも聞かせてやる。その間にもきっちり返り討ちにしていく。
魔力の刃が混じった竜巻に大西を放り投げてズタズタにする。
「ぎぱがあああああああああああ!!!」
「テメーらが血の滲むような鍛錬をやっていればモンストール如きに殺されることなんてなかったはずだ。異世界召喚の恩恵をもらってたんだからな。Sランクの敵だろうとテメーらだったら本当は勝てたはずだったんだ」
片上を重力で縛り付けて日本刀で首と胴体を分断させる。
「いだあ”あ”あ”あ”あ”あ”!!てめえ”え”え”え”え”え”!!!」
「なのにテメーらは無様に敗れて殺された。どうせテメーらは平凡レベルの鍛錬すらちゃんとやってなかったんだろ?異世界召喚の恩恵にすっかり浮かれて努力することを放棄したんだろ?」
安藤が魔法攻撃と「魔力光線」をやたら撃ってくるがその全てを反射させて自爆させる。
「いゃああああああ!?どうして効かないのよおぉおおお…!!」
「そんなだったからあの時テメーらには惨たらしい死という最悪の結末が訪れたんだ!テメーら自身がそうさせたんだ!」
カドゥラ元国王に対しては暗黒魔法による精神汚染攻撃を仕掛けた。テメーの国は滅んだだの、生き残った国民たちはテメーのことを恨んでいると、中にはもう忘れていることなど、こいつが最も嫌がる言葉を脳に刻み込んでから、首の骨を砕いて殺した。
「そんなはずない......そんなはずはない!!でたらめ―を”......ば...」
「こ、のおおおお―――ガッッ っひ……っ」
たまたま近くにいた陰湿女の鈴木がナイフを持って殺そうとしてきたので後頭部を掴んで、即席でつくった強酸の水溜まりに叩きつけて押し付けて沈める。
「がごぼげろどろぼぼっぼおぼぼごぼぼげらおぎょぼ......!!」
その間攻撃してきた早川や柿本を重力で潰して炎と雷で丸焦げにしてからバラバラに細かく斬り裂いた。
「「熱い痛い熱い痛い熱い痛い痛い痛い痛いいだい”いだい”いだい”......!!」」
「あの日モンストールどもに殺された主な原因は、テメーらの普段の怠惰な日々のせいだ!テメーら自身で切り抜けるべきだった修羅場をテメーら自身で潰しただけだろうが!」
ハーベスタンでちょっかいかけてきた豚体型の貴族冒険者の体の部位を「魔力弾」で一つ一つ撃ち抜き、最後は頭を吹き飛ばした。
「テメーは関係ねーんだよ、すっこんでろクソ雑魚」
「ぶぎょお”お”お”お”お”!!!ぐ、ぞがあああ―――っぺべ………」
大声上げて突進してきた須藤をカウンターで顔面を潰してから、がら空きになった背中に剣を何本も突き刺して絶命させた。
「ごっっぷぅ……クソ、がぁ……!」
「それをテメーらは揃いもそろって……俺が助けなかった?見殺しにしたせい?馬鹿馬鹿しい!俺みたいに死んでからぶっ飛んだ恩恵を得た後でもなぁ、俺は日々鍛錬してたぞ?だからSランクモンストールの群れだろうが魔人族だろうが獣人族だろうが全部に勝利して生き残ってきた。自分に責任をもって行動したからこうしていられてんだよ。
分かるか?全部テメーら自業自得で殺されたんだよ馬鹿どもが!テメーらの自己責任だ!!」
数瞬の沈黙。しかし返ってくる言葉は……
「「うるせぇエエエエエエ!!」」
「「責任とか知るかぁアアアアア!!」」
「「助けにこなかった甲斐田が悪いだろうがよぉオオオオオオ!!」」
俺が悪い、責任転嫁ばかりの汚いものばかりだった。
「はぁ……死んで脳まで腐ったか。もういいや。言って分かるような連中じゃねーって元々分かってたし」
俺の脳が、感情が氷点下まで下がっていく気がした。ここからはただこいつらを殺すことに徹してやる。
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全員それなりに過激なやり方で殺したのだが、折れるどころか怒りや憎しみをさらに増大させて蘇ってくる。そして馬鹿の一つ覚えみたいに殺してやるだの俺を貶める言葉をぶつけてくる。
俺は呆れながらもどこか嗜虐心が芽生えていくのを感じながら、三回目の蹂躙へと移った。
それから五回目、七回目、十回目と連中を返り討ちに、しかもわざと残酷に殺していったところで変化が生じた。
サントのクソ冒険者どもとハーベスタンの貴族連中の姿が消えていた。残ってるのは元クラスメイトどもとカドゥラ元国王とマルス元王子となっていた。
「数が減った……?いつまで続くかって思ってたけど、この召喚魔術にもどこか突破口があるみたいだな。よし、引き続きこいつらを返り討ちにしていくか」
そう思って連中を迎え撃つ。心なしか連中の勢いが少し小さくなってる気がする。気にせず「魔力光線」を撃ちまくる。撃ち損じた奴らの一人に飛びかかって武術で滅多打ちにしていく。
「ん……?俺は今見ての通り隙だらけだぜ?後ろから刺す絶好のチャンスだろうが。来いよ、殺し放題だぜ?」
マルスに乗りかかって執拗に殴りながら、後ろを向いて大西や須藤らを挑発する。
「う...う、おおおおおおおお!!」
「い、言われなくても、ぶち殺してやらぁあああああああ!!」
少し躊躇いを見せていたが叫び声とともに武器を構えて突進してくる。大西が俺の脳天目がけて剣を横薙ぎに振るおうとする。しかし大地魔法でガチガチに硬化した俺の体に衝突した瞬間、奴の剣がボキリと折れた。青い顔して折れた剣を見る大西にマルスを投げつけた後、「身体武装硬化」で左腕を大砲に変えるとそこから焼夷弾を撃ち放ってまとめて灰にした。
(……なんか、勢い弱くなってね?何だよ、テメーらのしょうもない憎悪はやっぱりこの程度か)
呆れのため息を吐くと、今度は俺から攻撃に出た―――
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