世界最強のゾンビになって生き返ったが、とりあえず元の世界に帰る旅に出る

カイガ

201話「会合への誘い」



 鬼族の仮里へ帰った俺たちをカミラが迎えてくれた。今日の激闘の疲れをある程度抜いた後、カミラも交えて今日の大戦のことを振り返る。

 「この里は被害ゼロと言っていい。カミラの軍略が思い通りにいったのと、鬼族戦士全員の活躍があったからこそだ」
 「コウガも、でしょ?」
 「まあな。あとはそうだな……“序列”の奴らが攻めて来なかったってのもあったか。奴らは人族の大国、竜人族のサラマンドラ王国に侵攻してたな」
 「………“序列”の魔人族に攻め込まれた戦場とその近くの大国は、どこも甚大な被害が出ていると聞いています。ましてやイード王国に至っては……滅亡したとも」
 「ああ。俺がこの目で確かめたから間違いない。何もかもが滅んでいた。土地も建物も人もな」

 俺の感想に誰もが少し黙ってしまう。他にもハーベスタン王国と亜人族のパルケ王国、アレンたちが助けにいったサラマンドラ王国、サント王国、そして南に存在するラインハルツ王国も甚大な被害が出ている。というかどこも滅茶苦茶にされている。

 「コウガ、オリバー大陸にネルギガルド私たちの仇が来ていたって話……」

 アレンが少し険しい顔で俺に問いかけてくる次いでカミラ以外のみんなも同じように見てくる。

 「“序列5位”ネルギガルド。奴はそう名乗っていた。連合国軍と亜人族兵士団の両方を壊滅寸前になるまで殺戮を繰り広げて、亜人族の国王ディウルと王子アンスリールを瀕死にさせて、そして……ダンクを殺害した」

 ダンクのことを聞いたみんなに動揺が走る。全員彼の強さを知っていたからなおさら衝撃を受けている。

 「ダンクの最期をこの目で見届けていた。だから俺は思うんだ、彼の死を無駄にさせたくないって。最期に言われたからな、魔人族に勝てって」

 俺の言葉を誰もが真剣に聞いていた。ダンクの意志が少しでも伝わったのか、魔人族と戦う意思を強めていた。

 「あいつは…あいつだけは私たちで殺さないとダメ。必ず、復讐してみせる……!」

 アレンの決意の言葉に他の鬼たちも強く頷く。アレンたち旅の仲間全員が揃えばネルギガルドを討伐するのは不可能じゃなくなる。

 「ただ、気をつけてほしいことが一つある。奴の実力的に戦士序列は――」

 続きを言おうとしたとことに通信端末が鳴って遮られる。通信の相手はクィンだった。

 『コウガさん、今鬼族の里にいますか?』
 「ああいるけど。用は?」

 前置きを省いて用件を尋ねる。クィンも同じ気持ちだったらしくすぐに言いたいことを話してくる。

 『連合国軍の会合にコウガさんにも来ていただきたいのです。コウガさんのお陰で助かった者が大勢いるのでそのお礼と、お願いしたいことがあるのです。場所はサント王国です。来てくれませんか……?』

 割と切実な声音でそう言ってきた。いったんアレンとカミラの方を見る。二人とも「行って良い」と言いたげに首を縦に振った。

 「まあ非常事態だし、俺に聞きたいこともあるんだろうな。良いぞ。会合はもう始まってるのか?」
 『いえ、まだ……今から約3時間後……夕刻になる頃です。ラインハルツ王国やハーベスタン王国の方々は距離と時間から考えて遠方からでしか出来ませんが』

 俺が行くと知るとクィンは嬉しそうに話しだす。いつどこでどのタイミングで始めるのかを大体の予想も交えて教えてくれる。

 「ハーベスタンとラインハルツから来る奴らを俺のアイテムで瞬間移動させるから予定より早く始められると思うぞ。全員実際に顔合わせての方が良い話できるんじゃね?」
 『私とミワにも見せたあの瞬間移動ですか……。出来るなら是非お願いしたいです』
 「任せろ。そっちも準備が要るだろうから、2時間後に全員揃えてそっちに来させるよ。国王さんにもよろしく伝えてほしい。
 ところで藤原は回復できてるか?」
 『はい!ミワは……まだ万全にまで回復は出来ていませんが、深刻な怪我を負っているわけではないので、安静にしていればそのうち全快すると思います!』
 「そうか。じゃあまた後で………」

 そう言って切ろうとしたところにクィンから待ったをかけられる。

 『最後になってしましましたが、私がこうして話せているのはあの時コウガさんが助けに来て下さったお陰です!改めて、ありがとうございます!』
 「おう。じゃあまた」

 端末越しではきっと喜びに満ちた笑顔で言ったのだろうな。そう思いながら通信を終える。

 「というわけだから、連合国軍の連中と話してくる。カミラも来るか?」
 「いえ、私が行っても大した話にはならないでしょうし。代わりにアレンも行ってみては?」
 「ん?良いならコウガについていく」

 そういうわけでアレンと一緒にサント王国に行くことになった。その前にまずはハーベスタンにワープしてニッズ国王を回収してサント王国へ連れていく。その際にアレンもサントに残して次へ行くことに。
 行き先はラインハルツ王国なのだが、人族の大国であの国だけ唯一行ったことが一度も無い。だから自力で行くしかない。アレンをいったん預けたのはそのためだ。
 全速力で飛ばして一時間程度でデルス大陸に到着、ラインハルツ王国にも着いた。

 「本当に南国なんだな。常夏の国って感じだ」

 そろそろ夕方になろうとしているのにまだ陽炎が生じているくらい暑いようだ。それよりもこの国の雰囲気は暗く、ピリピリしているように感じる。さっきまで魔人族との大戦があったのだから当然か。

 「誰……?」

 俺の真横から水の刃が出現して続いて女の声がする。警戒に満ちた声音だ。

 「サント王国から連絡が回ってねーか?連合国軍の会合へ迎えにきた使者ってかんじの」
 「……………あなたが、例の?」

 未だに刃を向けたまま訝しむ女兵士は人族じゃない。魚の鱗らしきものが見える。亜人か何かか?

 「マリス、そいつがカイダコウガで間違いない。刃を収めろ」

 前方から男の声がする。剣…いや、刀を二本差した和装の兵士だ。

 「あんたは……」
 「カイダコウガだな?兵士団長のラインハートだ。話はさっきサント王国から聞いている。俺たちを一瞬で連れてってくれるんだって?」
 「ああ。連れていくのは国王とあんただけか?」
 「いや、そこのマリスっていう兵士も連れていく」

 マリスという女兵士に指差して言うラインハート……に、目を向ける。

 「まだその名で……」
 「…………会合で話すつもりさ。そろそろ明かすべきだろうと思っていた」
 
 俺とラインハートのやり取りをマリスは訝しげに見ていた。それからすぐ、国王……フミルも連れた状態でサント王国へワープする。

 「…!本当に一瞬で着いたな。ぶっ飛んだアイテムだなそれ」
 「信じられない……!あなた何者なの!?」
 「おおおおお!?何なのだこれは!?」

 三人とも俺の瞬間ワープに驚きを隠せないでいる。これで各大国の要人は全員連れてこれたな。会合までまだ時間あるし、アレンと何か時間潰しとくか。



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