世界最強のゾンビになって生き返ったが、とりあえず元の世界に帰る旅に出る
世界大戦編 前編 167話「専属軍略家」
時間は皇雅とアレンがサント王国から出発したところまで巻き戻る――――
サント王国付近の港で船を買って海に出る。行き先はハーベスタン王国と数日前から決めている。通常の船よりも10倍速い航海速度で海を渡り、半日以内でオリバー大陸に上陸、ハーベスタン王国に着いた。
ここに来た目的はただ一つ、仲間と合流する為だ。
「お久しぶりです、コウガ……アレン!」
緑色のセミロングヘアを二つ結びで束ねて、よく似合っている眼鏡をかけて、白いローブを着こなした少女……じゃなかった、女性……カミラ・グレッド(19)は、俺とアレンの姿を見るなり可憐な笑みを浮かべて再会を喜んだ。身長がこの世界の平均女性よりも低いから年下と勘違いしてしまうが、彼女は俺たちより年上だ。
「連絡で聞いた通り、今は二人だけ旅をしているのですね」
「ああ。藤原とはサント王国で別れてきた。それにしてもこうしてまた会うのは、まだ一週間程度ぶりだというのに、何だかすごく久しぶりな気がするものだよな」
「ふふふ、コウガもやっぱりそう思いますか。何だか不思議ですよね」
顔を合わせて笑い合う。そして俺たちをカミラの家に招いてくれる。これまでの一週間……サント王国へ行き、その後獣人族の国「カイドウ王国」の潜入調査に行ったことを二人の口から話した。
「人口が最も多いとされていた魔族・獣人族は、もうこの世から滅び去ってしまったのですね。汚らわしいモンストールの力と共に…」
「ああ。あいつらは言うなれば邪悪に染まった魔族、か。仮に鬼族による復讐が無かったとしても、あの魔族はこの世界にとって害悪なものだったはずだ。滅んで良かったんだろうな」
「獣人族は鬼族に非道極まる行為をしていたのでしたね。そうあって欲しくなかったと願ってましたが、本当に残念です。ですがアレンたちの力で獣人族が滅んだのは大きな進展です。敵勢力の戦力を大きく削ぐことが出来たと言って良いはずです」
「ん……獣どもはみんなクズだったけど、戦闘力は侮れないものだった。仲間たち一緒に戦っても追い詰められたところもあった」
「そして………コウガが戦った魔人族。コウガと互角に戦えるだけでも十分に脅威過ぎますね…」
「あの魔人族は今もどこかで生きている。いずれは俺のところにまた来るか、別の国か村を支配して戦力を補充してるかもしれないな。油断はできない」
*皇雅は魔人族……ウィンダムが既に死んでいることには気付いていない。
カミラには獣人族の真実と魔人族の暗躍について全て詳しく話した。今後魔人族が獣人族と同じような支配をやりそうな人族の国か村を予測してもらい、俺たちがそこに行って魔人族を討つというプランを練ってもらうためだ。
三人で話し合って魔人族の動向をある程度予測してみたところで、鬼族の現在の住まいについての話に変わる。
「獣人族の里は昔から自然豊かであると伝わってました。アレンたちならその緑などを維持出来るでしょうね」
「うん。これからみんなで良い里にしていく」
「コウガも鬼族の里にしばらく暮らすのですよね?」
「ああ。修行の旅に出るから里にいることはそんなにないと思うけど、俺の今の家は、あそこだ」
俺の言葉にアレンが頬を緩ませる。俺が里に暮らすと言った時もすごく喜んでたしな。
「コウガ、アレン。お二人をここに呼んだのはそのことについてなんです」
カミラの一言に俺とアレンも「?」な反応をする。
「私も鬼族の里に住まわせてくれませんか?」
「え……!?」
「ほう?」
カミラの発言にアレンは目を丸くさせる。
「仮とはいえ今は鬼族が暮らす里が出来たのですよね?それを聞いた時から私は決心していたんです。私もそこで暮らしたい、と」
「それはつまり……この国での生活を、ハーベスタン王国の軍略家を終わりにする、ってことだよな?」
「はい。コウガ、私は―――」
カミラは俺と向き合い、手を自身の胸に当てて―――
「あなたの専属軍略家になりたいのです!」
はっきりとそう告げた。
「ここで一旦別れた時も、そう言っていたな。今もその気持ちは変わらず、なんだな?」
「はい。私が真に仕えたいと思う人は、コウガですから」
カミラは頬を少し赤らめてそう答える。
「アレンも、以前私に里に来てほしいと言ってくれてましたよね?その約束をちゃんと果たせることになりますよ」
「うん……来てほしい。カミラに教えてほしいこといっぱいある!」
アレンはカミラの手を取って小さくはしゃぐ。
「カミラが望むなら当然一緒に来てほしい。国王にはこのことはもう話したのか?」
「まだです。コウガたちがここに来て、鬼族の里に住まわせてくれることを了承してくれたら王宮に行って話す予定ですので、今からですね!」
「そうか……ん?もうこの国を出るつもりなのか?」
「はい、この国は私にはやっぱり合わないので……。親がいないこの地には親しい人もいませんので…」
「分かった。そういうことなら、俺たちと一緒に行こう」
「ん!みんな歓迎してくれるよ」
俺とアレンの誘いにカミラがすごく嬉しそうに微笑んだ。
それからカミラは王宮に行ってニッズ国王にこのことを話した。国を去ることを突然聞かされた国王たちはひどく驚き止めようとしたが、カミラの強い意志にあてられたのか、了承した。俺のところに行くことは伏せて、カミラはハーベスタン王国に見切りをつけた。
国王たちはそこまで必死にカミラを止めようとはしなかったそうだ。以前のモンストール襲撃の件やダンク率いる亜人族という頼もしい戦力がいることから彼女がいなくなっても困らないと判断したのか。
確かにカミラの言う通り、こんなところにいるより親しいアレンとこれから親しくなれそうな鬼族のところに来る方が楽しいいだろう。連れて行くべきだ。
カミラを正式な旅仲間・鬼族の仲間に引き入れたところでハーベスタン王国をさっさと去る。ダンクのところに行こうか考えたが特に話すことも無いのでスルーした。彼らの病はいずれ藤原あたりが治してくれるのだろうか。
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