世界最強のゾンビになって生き返ったが、とりあえず元の世界に帰る旅に出る

カイガ

146話「クラスメイトの増援」



 (え!?今から行くの…!?)
 (うん。もう決めたから)

 時は少し遡り、サント王国王宮内。異世界召喚された少年少女たちが使っている部屋にクラスメイトたちを集めた曽根美紀は、縁佳を助けるべくカイドウ王国へ向かうと言った。普段は全く喋らない米田小夜は思わずそう尋ねる。堂丸勇也も中西晴美も同じように驚いていた。

 (やっぱり縁佳が心配。藤原先生やサントの強い兵士たちが一緒だとしても、もしものことがあればって思うと……っ)
 (美紀ちゃん…)
 (今さらになるんだけど、私も獣人族の国へ行くわ!国王様に言って行く許可をもらう!もらえなくてもこっそり行ってやる!)

 曽根は強い意思を込めてそう宣言する。同時に出発前に皇雅が言ったことを思い出す。

 (テメーで限界決めてちゃ、成長はそこまでだ。この世界では特にな。俺は限界を無視して突き進んで今の自分になった。テメーがどうしたいのか、考えてみろよ)

 彼の偉そうな言い方に納得はしてないものの、後からその言葉が曽根の胸に刺さったのだ。

 (縁佳が勇気出して戦おうとしてるなら、私があの子の盾として一緒に戦わないと……!)

 そう思いながら米田に目を向けてこうお願いした。
 
 (小夜、言いにくいんだけど、あなたにも一緒に来てほしい。あなたの力がきっと必要になるわ)
 (え、ええ!?私も……!?)

 それからも曽根が真摯に頼んだ結果、米田も行くことを決意した。

 (私も……縁佳ちゃんが心配だから。弱い私でも出来ることがあるなら、力になりたい…!怖いけど………)
 (大丈夫、小夜のことも私の盾で守ってあげるから!)
 
 二人とも行く決意をしたところに堂丸が割り込んでくる。

 (俺も行くぜ!高園なら大丈夫かもしれないけど万が一ってこともあるし!先生や兵士団、強そうな鬼たちはともかく、甲斐田の野郎に高園は任せておけないしな!)
 (そう?じゃああんたが斬り込み役お願いね。敵が襲ってきたらそのデカい銃でぶっ飛ばしてね)
 (お?おう、任せとけ!)

 そうして堂丸も同行することが決まった。しかし中西だけは彼女たちの輪には入ろうとしなかった。

 (わ、私は行かないからね!?すごく危険なところなのかもしれないんでしょ?任務でもない戦いに行くつもりはないから!)
 (分かったわ。無理に行かせようなんて思ってないから。もし許可がおりなかった場合、私たちが出て行くことは内緒にしててね!)

 そうして曽根・米田・堂丸は国王に頼み、追加で任務に加わることを許されて、3人で急いでカイドウ王国へ向かったのだった―――


                  *

 「―――私の予感は正しかったみたいね。けっこうピンチみたいじゃない。本当に間に合って良かったわ!」
 「う、うん。それよりよくここまで来られたね。他の獣人戦士の集団と遭遇しなかったの?」
 「いや、いっぱいいたわ…とても不気味だった。でも兵士さんたちが食い止めてくれて、お陰ですぐ来られたわ!」

 事情を聞いた縁佳は3人のクラスメイトが増援にきてくれたことを嬉しく思った。クィンがぼろぼろにされ自身も窮地に立たされていたところだった故に、親しいクラスメイトたちが来てくれたことは希望そのものだった。

 「あのチーターみたいな獣人と今戦ってるのね」

 重厚な鎧を着て大きな盾を召喚する曽根。

 「何だアイツ、俺一人だと勝てそうにないな…!でもみんなで行けば勝てるよな!?」

 曽根とは反対に軽い装備の堂丸は背負っていた大筒を構える。

 「まずは、クィンさんのケガを見なきゃ…!」

 濃いめの緑色のローブを着て手に錫杖を持っている米田はクィンの心配をする。米田に同意した曽根がクィンを担ぎ、持ってきていた回復薬を飲ませて癒す。

 「………ありがとうございます。まさかあなたたちが増援に来てくれるとは…」
 「ここからは私たちも一緒に戦います!協力すればアイツに勝てますよね?」
 「苦戦はさけられませんが、勝機はきっとあります!不甲斐ない私にどうか力を貸して下さい!」

 クィンの言葉に全員「はい!」と応える。

 「ケッ!人族のガキが増えただけかよ。全員俺より弱い雑魚。全く負ける気がしねェな!」

 全身から邪悪なオーラと黒い瘴気を噴き出して「咆哮」する。

 「俺がアイツの隙をつくってやる!」

 先に飛び出たのは堂丸だ。大筒をハンネルに向けて銃口に魔力を溜める。

 “属性射撃”

 銃口から赤い魔力の砲弾が発射され、ハンネルに飛来する。堂丸も縁佳と同じように弾に魔力を込めて射撃することが出来る。

 「狙撃手の女のよりも遅ェ」

 しかしさらに強化されたハンネルの俊敏な動きに躱される。堂丸は動じることなく次の射撃を放つ。今度の砲弾はより正確にハンネルを捉えていた。「精密射撃」によって命中精度を高めたのだ。

 「こざかしい、こんなので俺がやれるかァ!」

 ハンネルは今度は躱すことをやめて、剣で砲弾を両断した。爆発が起きて煙で辺りが包まれる。

 「せいぜい単独でAランクモンストールとタメ張れる程度のガキが!効かねェんだよ!」
 「何だとチーター野郎…!」

 ハンネルの侮辱発言に堂丸は怒りを示すも安易に突っ込むことはしなかった。しかし堂丸の代わりにハンネルに突撃する物体が現れた。

 「あァ?魔物?いや獣か?」

 それらはハンネルと同じサイズの狼や馬のような魔物だった。黒い魔力を纏った獣たちが一斉にハンネルに攻撃を仕掛ける。

 “召喚魔術”

 これらは米田による魔術だ。彼女が思い描いた生物を召喚する魔術。召喚獣の力は米田本人の実力に比例する。

 「こんな雑魚ども何体もよこそうが無駄だァ!」

 ハンネルの方が実力は圧倒している故に、召喚獣たちは次々に撃破されていく。召喚獣を通して火や闇の魔法攻撃を放つも、ハンネルに大きなダメージは与えられていない。

 「はぁ!!」

 しかしそれに乗じたクィンの「魔法剣」による追撃は効果があり、ハンネルを攻めていく。

 「く、ウゼェ!!」

 ハンネルは憤ってクィンに全力の剣撃をくらわせようとするが、その直前で彼の動きに異変が生じる。

 ドガン! 「あァ!?斬ったのか?いや……っ」

 ハンネルはクィンがいる方とは反対のところへ斬りにかかり、剣先が地面に刺さった。それから何も無い空間へ剣を振るう奇行を見せる。

 「これは……!」
 「大丈夫です!あのチーター野郎、米田の“幻術”にかかっただけですから」

 クィンの疑問に堂丸はしてやったりといった様子で答える。呪術師である米田は「幻術」も使うことが出来る。耐性がないハンネルは彼女が創り出した幻に簡単に嵌まった。

 「今のうちに!」
 「おう!」
 「うん!」
 「はい!」

 米田の合図に縁佳・クィン・堂丸が一斉に攻撃を放った。

 “火炎射砲《フレアバズーカ》”
 “疾風弾”
 “嵐刃波《らんじんば》”

 堂丸が放った炎の砲撃、縁佳が撃った風のライフル弾、クィンが放った風の刃。容赦なくハンネルの全身に浴びせた。

 「ぐぅおおお!!どっから、きやがったあああ!?」

 激高したハンネルは闇の「魔力光線」をでたらめに撃ち出す。うち一つが縁佳たちの方向に飛んでくる。

 「任せて」

 そこに曽根が立ち塞がり、彼女の前から巨大な盾が出現する。その盾はハンネルが撃った光線を難無く防いでみせた。

 「あの高密度の魔力の光線を……!凄い防御力です」
 「ありがとうございます。縁佳、今のうちに遠くへ。あなたが全力出せるのは遠距離からでしょ!」
 「うん。ありがとう!」

 そう言って縁佳は再びハンネルから離れたところへ移動して狙撃態勢に入る。
 
 「敵はまだ弱ってません!ですがここが攻め時です!」
 「舐め、るなアアア!!」

 クィンの号令に皆が勢いづき、対するハンネルはさらに激高する。


 (一気に決着をつけないと……あの獣人相手に長期戦は危険過ぎる。全ての力を引き出すのは、今しかない!!)
 
 そう決意した縁佳は、内なる力を、その全てを「限定的な時間」を条件に引き出した――


 “限定強化”


                 *


堂丸勇也 ガンシューター
固有技能 全言語翻訳可能 気配感知(+索敵)加速 遠見 炎熱魔法レベル6 光魔法レベル5 精密射撃 属性射撃


米田小夜 呪術師
固有技能 全言語翻訳可能 危機感知 気配遮断 魔力障壁 加速 闇魔法レベル5 火魔法レベル5 幻術レベル2 
召喚魔術 


曽根美紀 盾戦士
固有技能 全言語翻訳可能 魔力防障壁 全属性耐性 剛力 加速 絶牢壁 大地魔法レベル6




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