世界最強のゾンビになって生き返ったが、とりあえず元の世界に帰る旅に出る

カイガ

134話「獣人族の正体」



 新たにやってきたヒグマ獣人、ゴリラ獣人、ミノタウロス獣人、大猿獣人。4体全員今までの獣人戦士とはランクが違う。

 「どいつもこいつもGランク級だ」

 「鑑定」でステータスを見たところやっぱりその強さはある。そしてやはり黒い瘴気が出ている。さらに固有技能にも、やっぱり「アレ」がある。
 4人に加えてさらに多くの獣人戦士も到着する。さっきとほとんど変わらない規模の集団だ。

 「鬼族が8匹、人族が3匹、残りの一人は人か何なのかは知らんが弱そうだ」
 「鬼族の生き残りがまだいたとはな。しかもけっこうな戦気だぞ」
 「けっ!忌まわしい鬼どもが国外では絶滅したと思ってたのにまだこんなに残ってたとはな!」
 「まあいい。鬼どもにはどうやってこの国に侵入したのかを拷問で訊きだそう。人族どもは殺してかまわん。勝手に侵入したこいつらが悪い」

 問答無用で鬼たちを捕らえ、それ以外は殺そうという手段に出る獣人ども。

 「“幹部”戦士が4人も揃っている。侵入者どもなんて瞬殺だ!」
 「ゴリラのゴレッド。ミノタウロスのブルゴ。大熊のレイル。大猿のケオナ。これだけ揃うと壮観だな!」

 周りにいる雑兵どもの聞いてもない幹部とやらの名前を耳にする。「幹部」ね。この魔族にもそういった階級があるようだ。“序列”って言ってたな。

 「おい、あと一人の幹部、イオサの奴はどうした?」
 「知らね。あの野郎のことだ、のんびり来てるんじゃねーか?」

 どうやら幹部は5体いるらしい。まあどうでもいいけど。

 「俺もやろうか?」
 「ううん。この獣どもは私たち鬼族でやる。クィンたちは他の雑魚たちをお願い」
 
 アレンは手短にそう返答と指示を出して、8人が幹部の獣どもと対面する。

 「私だけ一人で戦う。他のみんなは組んで戦って」
 「いけそうなのね」
 「ん。負ける気がしない。それに私は………怒《いか》っている」

 アレンの存在感が大きく膨れ上がる。彼女の変化に気づいたゴリラ獣人……ゴレッドはさっきまでの悪意ある笑みを引っ込めて、戦士の目をする。

 「何だこの赤い鬼。おい、こいつは俺がやる。戦士“序列5位”であるこの俺がな!」
 「はいよ。じゃあ俺はそこの二人を」

 アレンとゴレッドが戦い始めた直後、残りの鬼ペアと幹部戦士どもも激突する。
 セン・ガーデルとブルゴ。ギルス・キシリトとレイル。スーロン・ソーン・ルマンドとケオナ。
 それぞれ数か所へ散って戦闘を始める。そしてクィンと藤原と高園も残りの雑兵どもと戦い始める。

 「まずはあの弱そうな男のガキだ!」

 獣どもは一斉に俺を狙いにかかる。俺はつまらなそうに上へ跳んで、姿を消す。気配も消してやる。

 「なっ!?どこへ………」

 狼狽する獣人どもに、クィンがすかさず剣で斬り伏せていく。

 「藤原、“聖水”を使ってみろ」
 「え………?」

 藤原に近づいてそう指示を出す。彼女は少し戸惑いながらも言う通りに「聖水」をつくりだす。「聖水」が込められた水魔法をクィンと高園に当たらないように周囲の獣どもへぶつける。
 水でできた中型サイズの円盤が獣人どもを次々に撃ち抜く。通常ならこの程度の攻撃はせいぜい怯ませる程度にしかならないが………

 「「「「「ぎゃああああああ!?!?」」」」」

 しかしここにいる獣人のほとんどが、水の円盤をくらうと煙を上げて絶叫する。

 「な…?」
 「え、え!?」

 クィンと高園もその光景に驚いている。攻撃を撃った藤原本人ですら驚愕している。

 「やっぱりだ。黒い瘴気を纏った獣人どもには、あんたの“聖水”魔法が特攻になる!」
 
 逆に瘴気を纏っていない通常の獣人どもには大したダメージを与えられていない。あいつら、もがき苦しんでいる仲間を見て少しパニくっている。

 「“聖水”が効くのは、甲斐田君と、モンストール。あと、魔人族にも効くんだったよね?
 ねぇ甲斐田君。これってもしかして……」
 「正解だ。あんたが推測してる通りだ。もう確実にそうだ」

 冷や汗を流しながら問いかけてくる藤原に肯定を示す。

 「どういう、ことなのですか?」

 戸惑うクィンにはっきり答えてやる。

 「こいつら獣人族は――――」



 「――――モンストールの力を持ってる」

 ゴレッドと対面しているアレンは、憎悪に満ちた目で獣人族の正体を暴いた。

 「ほぉう?よく見抜いたな。まあこの隠せない瘴気を見ればバレるか」

 ゴレッドは己の体から噴き出している瘴気を見ながらアレンの言葉を認める。近くにいるガーデルが生理的嫌悪の感情がこもった目を獣人たちに向ける。

 「お前らは、いったい何をしたの?」
 「何、簡単なことさ。俺たち獣人戦士の大半は、《《モンストールの肉を喰らったんだ》》。もちろんただ喰らっただけじゃない。ある手順を踏んでから喰らうことで、我ら獣人族の大半はモンストールの力を手にしたのだ」

 ゴレッドの言葉に他の幹部戦士たちも凶悪な笑みを浮かべる。アレン他全員が獣人たちにさらなる嫌悪の視線を飛ばす。

 「モンストールの力は凄まじいものだ。まずは単純に力が増した。昔と比べて倍以上の力を我らは手にした」
 「だが力以上に素晴らしい変化があった。それは生命力だ!同胞たちを倒してここまできた貴様らはもう気付いてるだろうが、この力を手にしたことで生命力と頑丈さが昔とは比べ物にならないくらい増大した!」
 「致命傷を負っても倒れない、心臓を潰されても即死しない。さらには首を刎ねられてもしばらくは死なない!」
 「この特殊技能は “超生命体力”・“不死レベル”と呼ばれる!この力で我らはどの魔族よりも強くなれたと言って良い!!」

 幹部戦士たちが口々に自身たちの新たな力を説く。その間もアレンたちは不快げに彼らを睨んでいる。

 「貴様らが今まで倒してきた同胞たちはまだ未完全だ。力は有していたもののまだコントロール出来ずにいた。
 だがここにいる幹部の我らや“ボス”、そして“将軍”たちはこの力をきちんとものにしている!それぞれが単独でSランクモンストールと互角以上に戦うことができる!
 貴様らに勝ち目など微塵もないわ!!」

 強気で傲慢な言葉を発して咆哮する幹部たち。対するアレンたちは獣人たちの威嚇に微塵も動揺していなかった。

 「………不愉快だ」
 「ああ。ただただ、気持ち悪い」
 「こいつらは、もうモンストールと同じと思っていいんだよな」
 「問題無し」
 「やっと、力をもう少し解放して戦えるかも」

 全員の戦気と存在感が膨れ上がる。幹部たちはその変化に動じる。

 「何だ?我らのこの素晴らしい力を持たない鬼どもが……!貴様らの時代はとっくに終わってるんだ!ズタボロにしてから我らの奴隷にでもしてくれるわ!!」

 そうして、アレンたちと獣人の幹部戦士たちが一斉に殺し合いを始めた。

 
 

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