トップウォーター
ロッド
生活できれば良い。ああ、これが夢といえば夢か。しかし、あと二か月もしたら雇用保険は切れる。何かしらの職に就かなければいけない。気持ちが闇に引きずり込まれる。物書きとは、主にインターネットで募集している企業の商品紹介のブログだ。これを幾つも重ねることで今月は二万稼いだ。二万だ。雇用保険が途切れたら俺の収入は二万。だが希望的観測もある。俺は県が主催する文学賞、静岡踊り子文学賞に応募した。これを受賞すれば五十万入る。そしてこの文学賞は後援が葉光社という大手の出版社であるというのがポイントで、受賞すれば書籍化されて作家としての道が約束される。そうなれば金なんて銀行口座に大股でドカドカと図々しく入っていけるだろう。今はそのためのスペースを空けているところだ。ああ、夢は作家といえるかもしれない。
スプーンをカゴに入れた俺は、ブラックバス用のルアーに目をやった。魚の形をしたプラスチック製に長い嘴のようなものがついている。魚は鳥になりたいのかもしれない。きっと、トビウオは大きなエラで水面を跳ねるが、本当は空を飛びたいのだ。他の魚も一緒さ。理由がある。それは、俺がよく空を飛ぶ夢を見るからだ。きっとそんな夢を魚も見ているに違いないのだ。地上や水中の退屈にね。
クランクベイトと表記されたそのルアーの説明を読んでみると、「このルアーは水深三メートルを潜ります」とあった。長い嘴は水中に潜るために取り付けられたものだった。左右に振ってみるとカタカタと音が鳴った。クランクベイトの腹の中で玉が鳴る。クランクベイトも腹が減ってそこら辺の球を食っちまったのさ。
俺はトップウォーターの棚を見た。いろんな種類、カラーのトップウォーター達が干されている。いや吊るされている。そう並べられている。
ポッパー、ペンシルベイト、バズベイト。
ポッパーは肥えている。きっと大食いに違いない。ペンシルベイトは痩せているから菜食主義であろう。バズベイト・・・。こいつは一体。これについては、回転式の鉄の板と、白と黄色の何本もの紐がついた針が付けられている。何も食わずどうやって生きているのだ。
俺は、ワカサギカラーのポッパーとオイカワカラーのペンシルベイトをカゴに入れた。
あとは釣竿とベイトリールを買おう。マスターに聴いても情報は得られなかったため、ここは自分の嗅覚に頼ろう。
ベイトリールは、高級でそのどれもが服装を正し清潔であった。安くて一万円。俺は一万円代の太鼓型のベイトリールを手に取った。指でトントントンと拍子を取った。カチカチと音が鳴った。太鼓のような柔らかく、そして重く低い豪快な音は出なかった。そしたら、俺一人じゃなくて、みんなでベイトリールを叩いたらどうだろう。頼りのない音も集まれば大きな音となって会場に響くであろう。ベイトリール楽団。人々はその音色とリズムに酔う。スタンディングオベーションさ。
釣竿コーナーに向かうとそこにバスロッドと書かれた一角がった。釣竿のことをロッドというらしかった。このロッドは魔法も使えるのかしら。
「あの、すいません。このバスロッドで魔法を使えますか」
「それはお客様次第です」
そう言って店員は笑った。
俺はトップウォーターに最適。と紹介されたロッドを手に取った。他のロッドとは違ってハンドルは黄色で、竿の棒の部分は白をベースに青色の縞模様であった。ハンドルを握り竿先で空中に弧を描いた。魔法をかけてみたのである。
「お客様、店内で魔法の使用は固く禁じられております」
店員に注意されたので、俺は慌てて魔法を中止した。
ブラックバス用と明記された糸を取って俺はレジに向かった。二万三千円を支払い、これでアカネさんとのブラックバス釣りの準備は整ったのである。
スプーンをカゴに入れた俺は、ブラックバス用のルアーに目をやった。魚の形をしたプラスチック製に長い嘴のようなものがついている。魚は鳥になりたいのかもしれない。きっと、トビウオは大きなエラで水面を跳ねるが、本当は空を飛びたいのだ。他の魚も一緒さ。理由がある。それは、俺がよく空を飛ぶ夢を見るからだ。きっとそんな夢を魚も見ているに違いないのだ。地上や水中の退屈にね。
クランクベイトと表記されたそのルアーの説明を読んでみると、「このルアーは水深三メートルを潜ります」とあった。長い嘴は水中に潜るために取り付けられたものだった。左右に振ってみるとカタカタと音が鳴った。クランクベイトの腹の中で玉が鳴る。クランクベイトも腹が減ってそこら辺の球を食っちまったのさ。
俺はトップウォーターの棚を見た。いろんな種類、カラーのトップウォーター達が干されている。いや吊るされている。そう並べられている。
ポッパー、ペンシルベイト、バズベイト。
ポッパーは肥えている。きっと大食いに違いない。ペンシルベイトは痩せているから菜食主義であろう。バズベイト・・・。こいつは一体。これについては、回転式の鉄の板と、白と黄色の何本もの紐がついた針が付けられている。何も食わずどうやって生きているのだ。
俺は、ワカサギカラーのポッパーとオイカワカラーのペンシルベイトをカゴに入れた。
あとは釣竿とベイトリールを買おう。マスターに聴いても情報は得られなかったため、ここは自分の嗅覚に頼ろう。
ベイトリールは、高級でそのどれもが服装を正し清潔であった。安くて一万円。俺は一万円代の太鼓型のベイトリールを手に取った。指でトントントンと拍子を取った。カチカチと音が鳴った。太鼓のような柔らかく、そして重く低い豪快な音は出なかった。そしたら、俺一人じゃなくて、みんなでベイトリールを叩いたらどうだろう。頼りのない音も集まれば大きな音となって会場に響くであろう。ベイトリール楽団。人々はその音色とリズムに酔う。スタンディングオベーションさ。
釣竿コーナーに向かうとそこにバスロッドと書かれた一角がった。釣竿のことをロッドというらしかった。このロッドは魔法も使えるのかしら。
「あの、すいません。このバスロッドで魔法を使えますか」
「それはお客様次第です」
そう言って店員は笑った。
俺はトップウォーターに最適。と紹介されたロッドを手に取った。他のロッドとは違ってハンドルは黄色で、竿の棒の部分は白をベースに青色の縞模様であった。ハンドルを握り竿先で空中に弧を描いた。魔法をかけてみたのである。
「お客様、店内で魔法の使用は固く禁じられております」
店員に注意されたので、俺は慌てて魔法を中止した。
ブラックバス用と明記された糸を取って俺はレジに向かった。二万三千円を支払い、これでアカネさんとのブラックバス釣りの準備は整ったのである。
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