あなたが望んだその日まで

マカロン

『001』かすかに聞こえてくる足音

ボクの目にはもう何も映らなかった。 
体の感覚も既になくなってきていた。

…どこからともなく、とても懐かしいような声が聞こえてきた。
その声は何故かとても悲しそうで泣いているようだった。

(……あぁ、ボクはきっと死んでしまうのだろうか、また君を守ることが出来ずに…。ごめんよ、約束を守れなくて…。)

ボクは意識が遠のいていく中、そう君に謝った。
…もう…何も聞こえなくなってきた……、

ーーこれが死かーー

そう理解していく中、ボクは思考すらも手放していった。




(……。…………。…うっ……眩しい…。)

目が覚めて時計を見ると既に午前7時を過ぎていた。

「うーん、もう朝か、まだ眠たいのになぁ〜……それにしても今日はなんだかとても懐かしい夢を見たような気が……」

僕はそう口にしながら太陽とおはよう(笑)する為にカーテンを嫌々開けた。

ガシャガシャ

(ウッ、太陽が今日も目障りな程に輝いて見える……。)

今日の外の天気は絶好の散歩日和と言える程に眩しかった。
そんなどうでもいい事を考えながら僕はいつもの様にテレビのスイッチをオンにした。

ーー〜ですね。さて、次のニュースです。今日は例の変死事件から3年が経過しました。被災地では〜……ーー

……あの・・事件か…。今から3年ほど前、僕が中学三年生の時に起きた事件らしい。
とても不可思議な事件で、当時も今もすごく有名だ。
僕自身は当時の記憶がなく、よく内容を理解出来ていないのだが、なんでも1万人以上の死者が出たらしい。死因が報道されておらず、分かっているのは死者の数だけ。
犯人もまだ見つかっていないというのに、警察が動いていない…というか、動けないらしい。噂では、国の偉い人達がこの事件を隠蔽してる。だなんて話もネットではちらほら出ている。

テレビでは続いてこう言っていた。

ーー〜です。現在も犯人は捕まっておらず。凶器が何なのかなどの情報も不明なことが多い事件です。三年経った今でも、この事件に関する情報を当局は探しています。何か情報をお持ちの方は是非とも〜……ーー

テレビ局も警察も…勿論僕達一般人もこの事件をよくは知らない。
こんな事件があった…とは知っているのだが、何故か誰も詳しい話は知らないのだ。
だからこそ、三年経った今でもみんなこの事件に関する情報を求めていた。

(…まぁ、引きこもりの僕には全くもって関係の無い話だがね(笑))

そんな事を考えながら僕は適当にチャンネルを変えながら朝ご飯を食べて服を着替えていた。
普段はパジャマで一日中パソコンとにらめっこするのだが、今日は違う……なぜなら今日は、期間限定のフィギュアが販売される日なのだ!!しかも家からそう遠くない場所での販売されるのだ!!

(店が開くまであと1時間半……大丈夫、余裕で間に合う!!)

期間限定版は早朝から人が並んでいると普通の人は考えるであろう……

しかし!!

そこに何一つ……とは言い難いが問題は全くと言っていいほどに無い。
何故なら、このフィギュアのキャラクター…かなりマニアで認知している人がほとんど居ないのだ!!なんなら 

「え?それ自分で3Dプリンターか何かで作ったオリキャラ?」

とか言われるほどに知名度がないのだ!!
自分でこんな事を言って哀しくなるが事実ではある。……まぁ、事実である故に何も言えない。
そんな事を考えてる間に出かける準備は完了していた。
後は扉を出て、フィギュアが売っている店に行くだけだ。

「よしっ!!いざ人無き戦に参らん!!」

そう意気込んで外に出た。




ガチャ

(ウッ、眩しいっ!!)

そんな意気込みも鉄の扉1枚を、通り抜けるとすぐに消え失せていった。
外はとても眩しく、とてもでは無いが引きこもりには辛かった。

(そう言えば、外に出たのって何年ぶりだろ?)

そう、僕は今は高校にも行かず、働きもしていない……まぁ、自由人ニートなのだ。

……そう、仕方ないのだ…うん…。

外に出て1分経過…既に僕のライフはゼロになりそうだ……。

しかし、頑張って…、何とか精神を持ちこたえさせながら目的の場所へ向かうっていた。

(それにしても、数年外に出なかっただけで景色がだいぶと変わっているものなんだなぁ。)

中学を卒業して約3年、毎日毎日家でパソコンを触っていたからか僕には外の景色が凄く壮大な世界に見えていた。
道路も家も空も……何もかもが見ていてとてもワクワクした。

(アレだな、たまには外に出るのもいいかもな。)

そんな事を呑気に考えているとふと、妙な場所が視界の端に写りこんだ。
そこは何か……そう、入っては行けないような(立ち入り禁止などは書いてないが)、そんな感覚に陥ってしまいそうな路地だった。

「なんかここ……怖いなぁ……でも、ちょっと気になるなぁ〜、
まぁ、今日はフィギュア買うだけで帰ったあともゲームするだけだから……
ちょっとくらい…いいよね?」

時計を少し確認し時間に余裕がある事を把握した。

(まぁ、大丈夫だろ)

そう思い、僕はその路地の方へと1歩踏み出すと。

「……けて。」

(……ん?)

「助け…て。」

「!!」

路地の奥で誰かが助けを求めている声が聞こえた。
その声はとても弱々しく今にも死んでしまうのではないかと思えるような女性の声の様に聞こえたのだが……。

「助…け…て。」

!!……たしかに今聞こえた!!
僕は次の瞬間、考えるより先にその声がする方へと向かっていた。
その路地の奥に進んでいくと、人が1人入れる程大きな箱があり、そこから微かにだが苦しそうな吐息が聞こえてきた。

「今助けますから!!待っててください!!」

 僕は反射的にそう言うとその大きな箱を開けようとした。が、そこで大きな違和感を感じた。

(……あれ?この箱みたいなの…開け口がどこにもない!?)

そう、その声がする箱には普通は存在するはずの開け口が無かったのだ。
僕は二、三度箱の周りを確認したが取っ手の様なものもなく、ただ純粋な立体長方形だった。
  
(この箱開けれない!!どうすればいいんだ!!)

「た…すけ……」

(クソクソクソクソッ、どうすればいいんだ!!)

完全に僕はパニック状態になっていた。

(早く助けないと!!この人、死んでしまうかもしれない!!)

頭の中が真っ白になっているとふと頭の中に声が流れてきた。

 
ーー強引にするのは勧めない。諦めるのも勧めない。助けたいなら名を伝えろ。それがきっと助けになる。ーー


(ッッ!!)

凄い頭痛と共に頭の中にそう聞こえた。まるで頭の中に直接話しかけられてるかのような感覚だった。
機械的な声だったが、確かに聞こえた。

(強引?諦める?名を伝える……?なんだ?一体なんの名前……僕の名前を言えばいいのか?…でもなんで?)

そう考えていたが今はそんな事を考えているときでは無いと咄嗟に自分の名前を箱の前で言った。

「僕の名前は……。」

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