怪物や幽霊、神や悪魔も信じないと言ったのに、俺の横にいる居るこいつは何? ―守り抜くと決めたから。たとえ君が何であっても、―

.AIR.

第6 モールは危険

「すごいなここは」





エリィーは相変わらず楽しそうだ。



手にはアイス。もう片方にはジュースを持っていた





「ねぇ、ユウカ。

あれは何なんだ―?」





「あぁ、あれか。

あれはクレープって言ってだな」





「食べれるのか?」





「あぁ食べれるぞ」





「あれが、食べたい」





「いいぞ、買ってやるからって、



おまえ、どんだけ食べるんだよ」





「いや、ここの食べ物は美味いんだ。

それに代わったものばかりで、どうも気になってしまう」





「もう、ダメだ。

お前どんだけ食うんだよ」



「えぇーいいじゃないか。折角来たのだから」





「また連れて行ってやるから、まず今お前が持ってるものを処理しろ」



「すごくいい匂いがするのに。

ちぇっ、わかりました―」





エリィーは残念そうにしていたが。

確かに、今自分でも手で持てない状況を把握したのだろう。







「あっ、そうだ。ちょっとついて来てくれるか?」



「ん?いいよー」



なんだその嬉しそうな笑顔は。こいつ楽しそうだとこんな顔するんだなと、ユウカは見とれてしまった。



「ちょっと寄りたい店があるんだ」



「わかった―」





そうしてエスカレータを上る。





「ユ、ユユユ、ユウカ。

どうしてか、か、階段が生えてきて、動いているぞ」





「いや、これはエスカレータといってだな、」





「と言うとでも思ったか。

エスカレータぐらい知っておるわ」



こいつやりやがったなとユウカが悔しそうにしている。

その姿を見てエリィーは楽しんでいる。



「どうした、早く来いよ」





「ちょ、ちょっと待ってくれ。

どうやって乗ったらいいのか」



お前さっき知ってるっていてたよな?

本当に知ってるのか?とユウカは疑問に思えてきた。



「いや、普通に乗ったらいいんだよ」



「おい、ユウカ待ってくれ、

私を置いて、勝手に一人で行くな」



「いやいやいやいや、無理だから。

俺が勝手に行ってる訳じゃないから。



てか、止まれないし。てか、俺は止まってるし」

ユウカはどうしようかと思った。

エスカレータが勝手に運んで行くし、助けにも行けない。

とりあえず上で待つ事にした。





と言うか、知ってると言いながら、エスカレータに乗れない事がユウカにはサプライズだ。



「お、おい。

こんなのに足を乗せてしまって大丈夫なのか?

なんだかタイミングがつかめない」





しどろもしている。なんだかそんな姿が可愛かった。



「いいから、よく下を見ろ。

階段がも上がってる前は平らになってるから、つぎはぎの間のブロックに足をのせてみろ。



そしたら大丈夫だから」





「うむ。わかった。線が見えた後のブロックだな。



良し行くぞ」





エリィーはエスカレータに足をかけた。

「おぉ、乗れた」





「エリィー、横を持て!」





「えっ?」





エリィーは丁度乗るタイミングが悪く、ブロックとブロックの間に足を置いてしまったため、ブロックが階段状に上がった時には押し出され後ろにこけた。





「ふぎゃぁっ」





あまりの事に周りの人が手を差し伸べてくれる。



「大丈夫かい!お嬢ちゃん」





「おい、大丈夫かエリィー!



待ってろ。今そっちへ行くから」





痛そうに立ち上がるなり、彼女は服を払って、手を差し出した。





「構わん!次は乗れる」



強情際の強いところがここでも出た。



だか、そういうと今度はしっかりと乗りこなして見せた。



そんな姿を見てホッとするユウカ。

そんなユウカをじっと見つめながら上がってくるエリィーが愛おしく思えてくる。



そして決め顔のどや顔。



まぁ、今回は良くやったと、エリィーを褒めた。







拍手の喝采が鳴り響く。



気が付けば辺りには人だかりができて取り囲まれていた。



エリィーは嬉しそうにしていたが、ユウカ恥ずかしくて死にそうになっていた。







「で、行きたかった店と言うのはこれか?」





「あぁ」





そこはキラキラした感じの、ピンクピンクしい、可愛らしい服が置いてある店だった。



「お前、こんなのが趣味なのか」





「ばか、お前のだよ」



「私か?

私にはこんな可愛い服は似合わんぞ」





「そんな事無いって。

ちょっとお前の好きな服選んでみろよ」





「う~む、ここでか。

良し、選んでみるか」





エリィーは真剣に選び更衣室に入った。





「エリィーどうだ?もういいか」





「うむ。構わんぞ」





「良し。じゃあ、開けるな」







開けるとエリィーが立っているんだか、この時ユウカはエリィーのファッションセンスを疑った。



なんだ、ピンクの服に茶色のズボン。素材が良いだけに可愛いけどなんか違う。



「ど、どうだ?」



「ん~、可愛いけど、なんか違うんだよね」





エリィーはショックを受けた。



「な、何が、ダメだと言うんだ。」





「いや、いいんだよ、いいんだけど……」



ユウカはエリィーを見ながら考える……。





「そ、そんなにじっくり見られると恥ずかしいぞ」





「ちょっと待ってろ」







そういうとカーテンを閉めて足早に去っていった?





「えっ?、ユ、ユウカ?……」





急にカーテンが開く。



「キャ――」





「これを着てみてくれ。後これと」





「う、うん。わかった」









「ユウカ。

い、いいぞ」







カーテンが開く





「おぉ。どうだろう。可愛いと思うんだけど」



「た、確かに」



エリィーも自分が可愛くなった姿に、少し照れている。





「後な、これと、これも来てみてくれ」



「え、えっ、あ、うん。分かった。」



と言ってエリィーはカーテンを閉めた。



「あ、そうだ、それとこれ」



「キ゛ャ――――――――――――――――!」





いきなりカーテンが開くのでエリィーは酷く驚いた。



「ユウカ、お前、デリカシー無いな」



「うん。そうだね。ごめん」



「カーテンを急に開けるのは止めてくれ

せめて、ひと声かけてから」



「そうだな、悪かった」



暫くしてエリィーから声がかかる



「あ、開けるぞ」





「おう、いいぞ」





その姿に目をやられた。

可愛い。





それから一時間ほど、このやり取りが続いた。



「エリィー、お前、どれ着ても可愛いな」





「お前、私を着せ替え人形にしてないか?」



エリィーもいつもと違う服が切れて、気分が良かった。

そしてユウカとこうして遊べることが何よりも嬉しかった。





「さぁ、どうするエリィー。

好きな服選んでいいぞ」



エリィーは事前にユウカが持ってくる値札を見ていた。

確かに金額は彼女には分からない。

だか、ユウカが持って来る服が特段に高い事だけは分かっていた。



「えっ?いや、いいぞ。着れただけで十分だ。

それにとても、素敵な時間をもらえた。

ありがとう」



エリィーもユウカがお金が無い中必死で頑張っている姿を知っている。

それに、エリィーは服が欲しいわけでもない。

今の環境があればそれだけエリィーにとっては幸せだった。



「それに、こんな可愛い服、確かに嬉しいが私にはちょっと可愛すぎる」





「気に入ってないのか」



エリィーは切なそうなユウカを見る。



「いや、そう言う訳ではない」



エリィーは自分にこんな可愛い服が似合うなんて、と少し着ていた時間を頭の中で巻き戻して楽しんでいた。





「分かった。じゃあ参考までに、着た中でだったら、お前のお好みはどれだったんだ?

今後のお前の服選びに、お前のセンスを知っておきたくて」



「これとこれだ」



即答だった。





「よし、じゃあこれ買ってくる」





「待て、ユウカ――!」





エリィーは口車にまんまと乗せられてしまった。





「ありがとうございました」





「本当に良いのか?そんな事の為に奮発してしまって……」





申し訳なさそうにユウカを見上げる。





「はい、これ。俺からのプレゼントだ。

受けとってくれるか?」





「うん。ありがとう」





満面の笑みがユウカを包んだ。

買ってよかったとユウカは喜んでいた。





「さて、もう2時も回ってるし、いったんお昼にでもするか」





「うん。

そうだな」





ユウカ達は4階のフードコートへと足を運んだ。



途中何度も店に入ろうとする、エリィーを止めて。



モールには他にもたくさん店がある。一店舗づつ、イタリアンだったり、焼肉屋だったり、ラーメン屋や、オムライス専門店等、より取り見取りだ。

だが、沢山の目新しいものに触れられる場所として、ユウカは今回エリィーをフードコートの方へ連れて行くことにした。ここなら食べ物が色々と選べる。

そして、何より、価格が少し安い。と言うのもあった。





案の定、沢山の種類を目の当たりにして悪露こぶエリィーがいた。





その矢先、ユウカの目に3人の女子高生が飛び込んできた。



ヤバい!



「エ、エリィ、ちょっと、こちこようか?」



「ん?どうしたのだ」



その内の一人が、ユウカ達の方を見た。



「まずい。ちょっと来い」





ユウカは慌ててエリィーを引っ張っていった。



「どうしたのだ?」



「いや、何でもない。

とりあえず、こっちのごはん屋さんから探そうか」



「えぇ~。あそこで食えないのか?」



「もっといいとこ連れて行ってやるから」





そう言って、オムライス専門店でお昼を取った。





















一方その頃





「やっぱり時間ずらして正解だったねぇ~

大分空いてるよ」



「これなら待たなくていいもんね

流石、黎ちゃん」



「じゃあ、あたし、あれ買ってくる」



「あっ、ちょっと待って月!

私も同じの買う」



「あんまべたべたするなって」



「いいじゃん、月照れちゃって。



星も同じやつでいいよね」





「うん。私もそれで。

じゃあ、みんなの荷物番してるね」



「ありがとう、よろしくね~」





「なぁ、黎」



「ん?もしかしてあの服や、また行くの?」





「え?もちろん」



「じゃあさ、私、音楽ショップ行ってていい?」





「うん。でも私らの服行ったらね。

私も月と一緒にCDみたいじゃん!

だから、一人ではダ~メ」



「うっ、」



「とりあえず、御飯、御飯」



月は黎に流されていてた。



「お待ち同様でーす」



「とりあえず、月、星の分一緒に先に持って行ってあげてくれない」



「あぁ、わかった。

でも、お金は?」



「今日は時間ずらしたし、星達もお腹ぺこぺこでしょ?

私が先に払っておくから、後で食べ終わったらみんなで割り勘しよ」



「うん。わかった」



月はそれもそうだなと、待っている星になるべく早くご飯届けてあげようと向かった。





「転ばない様に気を付けてねぇ」



「私はガキじゃない!止めろ」



大声で声かけられ月は照れていた。





「はい。お待たせ」



「うわぁ、ありがとう」



すぐに黎もやって来た。



「頂きまーす」

「いただきまーす」

「いただきます」



「でね、聞いてよ、月ったら、あの店行きたくないって言うんだよ

酷くない?」



「え、それはダメだよ月ちゃん。

私たちと一緒に行かないと」



「星、今日は頼む」



「えー月ちゃんいないと寂しいじゃん」



「ねー。

だよねー」



星と黎は息ぴったりだ。

月を同行させようとしている。



「それにしても、ユウカの奴。何考えてんのか!」



黎がいきなりユウカの話を切り出す。



「あははは……、仕方ないよ。

ユウカ君も忙しそうにしてたし、急用だってメッセージ来てたから」



「たく、うちらの親切を無駄にしちゃってさ。



折角なんだし、一緒に遊べばいいのに」





「まぁまぁ」



星がなだめる。





「あ、でも、さっきユウカっぽいの私、見たような気が」





「えっ?

それは無いと思うけど。

ユウカ君帰るって言ってたから」





「そうかな。あれどう見てもユウカっぽかったんだけど。

なんか慌てて走って行ってたけど」





「え?

なんて?」



「いや、何でもない。

その人、子供連れて歩いて行ってたから、私の見間違いかも」





「ユウカ君が子供連れて歩いてるって、どんな絵図ら」



と黎が笑いだし、星も一緒に笑っていた。



「いや、ほんとに

なんか、そう見えただけだよ」



笑われた月は照れながら反論していた。





「もしかして、月~」



目を細めて月を見る黎。



「な、なんだよ」





「ユウカ君と家庭築いて、モールを歩いてるシーンでも想像してたんじゃないの?



実は月ってユウカ君の事」





「えっ?!そうだったの!

道理で」



この二人は月を揶揄うのが好きだ。

なぜなら、月のクールぶってる反面、照れる反応がものすごく可愛いからだ。



「はぁ!?、な、なんで私があいつを好きなんだよ

意味が分からない。

どうしたらそんな解釈になる。

てか、星も道理でってなんだよ。

ったく」



照れながら顔を横向ける。



「あれれ、月ちゃ~ん。私別にユウカ君の事好きだなんていってないんだけどな~

聞き間違いかな~」



「もぉ!お前ら止めろ。

だから、この後の服屋も、お前らで行って欲しいんだ」





「えぇ~、やだ」



「お前らまた私で遊ぶだろ」



「だって月ちゃん可愛いんだもん」





「そうだよ、月。

何着ても似合う月がうらやましいよ。ほんとうに」



「私はお前らの人形じゃない」



「あ、黎、そういえば、また、新しい可愛いショップが出来たんだけど知ってる?」



「え?うそ。知らない」



「じゃあこの後みんなでそこ行こ」



星がちらっと月を見る。





月には嫌な予感しかしなかった。



「私は行かないからな」





「あれ~?

ここの御飯代私が払ったんだけどな~」





「おい、ちょっと待て。

それは食べ終わったら皆で割り勘だっただろ」



「え?何言ってるの。ここは私のおごりだよ。

月も食べたんだから、当然付き合ってくれるよねぇ。

ねぇ?星」





月はしてやられたと、今気づいた。

黎なら人を使って何かをさせる様な事はほとんどしない。

いつも、誰かが番をしてくれているなら、真っ先に自分からその人の分も持っていくタイプだ。

だからあの時私に頼んでやらせた事に疑いを感じるべきだった、と月は策略にはまってしまった事に後悔した。



月は助けを見る様な目で星を見た。



星は術中にかかってしまった月を察したのか、ちょっとかわいそうな目で見ていた。



だがしかし、全てを把握した星は



「うん。そうだよ」



やっぱり月を連れて着せ替えしたかった。



こいつら。

黎は二人に負け、仕方なくこの後、着せ替え人形と化した。

















「とても美味しかったぞ。ユウカ」



「そうか、良かったな」



ユウカは財布をもって泣いていた。



まさか、オムライス5杯も食べてくれるとは思ってもいなかったことだった。

こんなか細い体のどこに入ると言うのだろう。

ユウカは不思議で仕方がなかった。

いっそ、俺が解剖してやろうか。



その後も色々とモールの中を歩き回った。



途中何度か星達に逢いそうになる場面が何度かあったが、降り交わしてエリィーと楽しんだ。





「なぁ、ユウカ、これさっきの……」



見る先にはクレープ屋があった。さっきの店とは違うが、ここもクレープを売っている



「お前まだ食うのかよ」



「いいではないか。

とても良い匂いがするんだ」



「確かにクレープだから、女子は好きだしいい香りはするけど、お前さっき5杯もオムライス食ってるんだぞ」



「それがどうしたのだ?」





こいつの食の感覚はいったいどうなっているのか。

こんなやつと過ごしていると思うと、この先が怖くて仕方がないユウカだった。







「な、なぁ、ユウカ!」





「今度はどうした」



「あの黒い所はお店か?」



「ん?あぁ。あそこは服屋だな。



何々、ロールクロー?

すごい名前だな」



「あ、あそこに行ってみたい」



「あぁ、わかった行ってみるか。

こんな黒を強調したお店あったかな?」





店前に立つとユウカは驚いた。



「ここ、ロリータファッションじゃないか」



「なんだ?その、ロリターファッションとは」



「ロリータファッションな。

ゴスロリとか言われてる、ゴシックでロリータな服の事だよ」



「ゴシックでロリータ。

ふむふむ。

全然わからんぞ」



「まぁ、見た感じの奴の事だ」





「なんと、このような魔力のある店がここにもあったのか」



魔力ってなんだよ……

あえてユウカは突っ込まなかった。



尻尾もあって、デビルのような羽も生えてるこいつなら、確かにここの服も似合うんだろうけど。

これじゃこいつがきたら、完全なコスプレじゃないか。

それにこれじゃあ、尻尾とか完全に隠せないだろう。

とユウカが物色していると、エリィーがまじまじと服を見ていた。





「お客さま、プリティですね

こちらのドレスに興味がおありですか」



エリィーが店員に話しかけられているのを見てすくにどんで来るユウカ。



「あはは、どうもこういったモノを見たことがないみたいで、興味本位で入ってみたんですけど」



「あら、あなたお父様ぁ~……、

って感じでもないわね

もしかして、あなた、こんなプリティガールにこんな服を着せて楽しむロリコンさんかしら」



ロリコンじゃね!

ユウカはイラっとしたが大人の対応をするように、自分に言い聞かせた。



しかし、それよりも驚いたのは、この店員さんのがたいの良さだ。

全長百八十センチ以上、そんじょ、そこいらのボディビルダーなんかを優位に超えていた。

超絶した肉体。分厚い唇。そして、色々と濃過ぎる。

何をどうしたらそこまで胸板が厚くなると言いうほどの、女性?



「ははは…、いや、そう言うんじゃないんですけどね、この子がこのお店に興味があるみたいでして」





「あら、この子が」



エリィーはずっと上に置いてあるドレスを見ていた。





「あなた、これに興味があるの?

これに目をつけるなんて中々見る目があるじゃない」









「どう?何か着てみる?」





「おじさん。私これが欲しい」





「だぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」





ユウカは慌ててエリィーの口を塞いだ。





「こら、おじさんなんていったらダメだろ。

あの人は女の人なんだから、お姉さんでいいんだよ」



「すいません。」



「いいのよ、別に。そんなの気にも止めてないわ。

それより、どうして、このドレスが気になるの?」





「なんだ? お前はこの店の、ぅ…ッ…」





急いでエリィーの口を塞ぐ。





「こら、お前なんて使うな」



ユウカはまた口を押えて、ぼっそとエリィーの耳元で教える。



お互い確認し終えるとユウカはゆっくりと手を離した。







「貴女様はこれの所有者だろう?

この魔力を、モゴッ……」





エリィーの口をしっかり押える。





「その、訳の分からん魔力とか言うのは止めろ。

俺も恥ずかしいから」

ユウカはエリィーの口を塞いでまた耳下で静かに伝える。



理解ができたとお互い相打ちを取ると手を離した。





「このドレスが欲しい」





買えるか―!



何を言うとるんじゃぁ、お前は!

ユウカは目が飛び出そうになった。



「はははっ。どうもドレスが好きみたいで、年頃の女の子はみんなドレスに目が行くみたいですね」



どう見たって何十万としそうなドレスを、軽々と欲しいと言われても、ユウカにはそんなお金の持ち合わせはない。



「そう、これね。でもこれ。高いわよ。

これ上下合わせて八千五百万よ」





は、八千五百万!?

その数字にユウカは腰を抜かす。

それ以前に、庶民が来るようなモールに、そのような高級な商品が置かれていること自体が不思議で仕方がなかった。





「え、?桁とか間違えてません。

冗談ですよね?」



「冗談じゃないわよ」



マジか―――?!

ユウカはすぐにこの店を出たかった。





「エリィーこれは流石に買えんぞ」





「そうか、買えぬのなら仕方がない

では、諦めるか」





ユウカはホットした。



「ちょっと待って。

もしよかったらなんだけどこれなんてどうかしら?」





店員が差し出してきたのは、赤と黒の半袖のファッションミニドレスだった。

紅蓮のような、黒っぽい赤のワンピースのような服。

これならばまだ、普通の服として出歩けそうである。

尻尾や、羽も隠せる。





「これは、またすごい」





「ふ~ん。





やっぱり。貴女は分かる子ね」



何故か店員と息が合うエリィーに戸惑うユウカだった。



「なぁ、ユウカこれを買ってはもらえないだろうか?」





ユウカは表情を見て一目でわかった。

これは、エリィーが本当に心から欲しているものなんだと。

さっき自分が連れていって買った服なんかよりも、数倍に彼女はこれが欲しいのだと。





であるならば、買うしかない。

だってその為に今日は彼女を連れて来たのだから。



彼女の本当に欲しい物を買ってあげたい。

ユウカは何の惜しみも無く、その服をレジへ持っていった。



「あら、気前のいいお兄さんね

レディに優しくするなんて素敵よ」





ユウカ早く店を出ようと思った。



そして二人は手を繋いで店を出て行った。





店員は見送りながらつぶやく。

「あの子は、間違いなくきっと……」



店員は不敵な笑みを浮かべていた。



          

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