放課後の事件簿〜この美人探偵は凄腕なのにやる気がない〜

黄舞

第3話

「それにしても宗次郎さんは偉いですね。こんな綾乃の助手をやろうだなんて」
「おい。聞こえてるぞ。なんだ。こんな、とは」

「いえ。先生は普段はアレですが、事件に関わると凄いですからね」
「おい。貴様。宗次郎。アレとはなんだ。アレとは」

事件が起きた運送会社の毛利運業に向かう社内で轟さんと僕のたわいない話に先生は不満げです。あの鋭い目付きににらまれると僕なんかはすくんでしまうんですが、轟さんはなれた様子で笑顔を崩さないまま話し続けます。

「でも、助手と言ってもろくにお給料なんて出ないのでしょう? 話によると逆に綾乃にタカられているとか。いくらお金持ちの宗次郎さんとは言ってもそれはよくありませんよ。どうですか? 綾乃に貢ぐくらいなら当社の変動年金に預けてみては」
「おい。くそ轟。いたいけな高校生を捕まえて商売してるんじゃあない。大体未成年が保険なんて契約出来るわけないだろう」

「そんなの海外にいる御両親に書類を送って判子を押してもらったことにすればいいのですよ。大丈夫です。損はさせませんよ」
「保険金払うのは嫌で探偵まで雇う会社が何言ってんだか……いいか? 宗次郎。こういう大人だけにはなるなよ?」

正直な話、僕はどっちもどっちなお二人のどちらにもなりたくないんですが……先生は頭の回転や記憶力、直感力など推理に必要な能力には尊敬の念を感じてますが、それ以外はてんでダメ人間ですから。
よくこんなんで、この歳まで生きてこれたなと思います。いま僕が居なくなったら、餓死するんじゃあないんでしょうか。

「さて、楽しいおしゃべりはこの辺にさせて頂いて、着きましたよ。ここが毛利運業です」

着いたのは想像よりも小さな運送会社でした。轟さんが受付に話をすると、中から綺麗な女性の方が現れました。歳は先生と同じくらいでしょうか。ちなみに先生は僕のにば……痛!? 何故か先生に頭を叩かれました。

「毛利夫人こんにちは。この度はご愁傷さまでございました。それで……先日お話させていただいた件で、お話を伺わせていただきたいのですがよろしいでしょうか?」

張り付いた笑顔のまま轟さんが毛利社長の妻、絵梨花さんに話しかけました。そういえば、毛利社長の年齢聞いてませんでしたが、若い方だったんですかね?
すると轟さんが耳元で「お亡くなりになった毛利社長は御歳おんとし70歳の方ですよ」とささいてくれました。本当にこの二人はなんなんでしょう。

「後ろの女とガキは一体何なの? ガキなんて明らかに学生服着てるじゃないの! ふざけてるの? 私が毛利を殺した訳ないでしょう。あれは事故よ。もしくは笹山ささやまのやつが殺したんでしょ。いいから満額、さっさと払いなさいよ」
「ええ。ええ。毛利様。お気持ちはよく分かります。弊社としましても、出来るだけお客様の意に沿うようにと上から命じられています。ですが、やはり報告書に嘘は書けませんので、どうかお話だけでもよろしくお願いします」

なかなか。見た目とは違ってきつい性格の方なのかもしれません。そして、轟さんのスルースキルは先生に向けてだけじゃないんですよね。先生とは僕の件については一切返答してないんですが……。

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