辺境暮らしの付与術士
第114話
無数の泡沫を伴い海の底へとゆっくりと沈んでいくベヒーモスの角。
それを眺めていたカイン達を襲ったのは、巨大な渦だった。
突如発生した大渦は、船を流れの乗せ翻弄しながら中心へと誘う。
水面が船の高さの何倍も低くなった渦の中心に巨大なとぐろを巻いたような黒い影が見える。
「やばいぞ! 振り飛ばされるな! なんでもいいからしがみつけ!!」
アオイの檄を受ける前にみな近くの柱などに手をかけ、必死に踏ん張っていた。
「お父さん! あの渦の中心にいる生き物なに!! 恐ろしくでかいけど! もしかしなくてもあれって!!」
「ダメだ! 予想通りだがあれも視えない! 既に手遅れだったのかもしれん!」
やがて渦は徐々に収まり、それは長い首を水面から出し中空に掲げた。
その顔の巨大さから想像するに水面から出た部分は身体の極一部だろうが、船の帆先の高さをゆうに超えていた。
海水を滴らせ、一枚一枚が巨大な鱗に覆われた海蛇の様な長い体躯をくねらせながら、船など一口で食い壊せそうな口を開けた。
その口には、噛み殺されたバレーンや亜竜達の残骸が見えた。
「でかい! でかすぎる!! それにしてもあの身体の色はなんだ!? 闇のように真っ黒だ!!」
アオイが叫ぶ。
『シバさん! 一度出来るだけここから逃げてください!!』
カインが念話を飛ばす。
シバはその言葉に全開でオールを動かし、リヴァイアサンから離れるように船首を向けた。
リヴァイアサンが中空に出していた首を勢いよく海面へと打ち付ける。
その衝撃で爆発するような音と共に巨大な波が発生した。
逃げる船を追うような形で波はその高さを変えずに襲ってくる。
魔道具を通してその様子を確認したシバは、あえて船首を少しだけ角度を付け波の方へと向ける。
ちょうど船と波が向き合った瞬間、壁のような海水が船を襲った。
シバは波の流れに逆らわぬよう、徐々に船首を波の進行方向と垂直に変えていく。
船は波に流されながらも船はその海水でできた壁を滑るように登り、やがて勢いよく中空へと放り出された。
「掴まれーーー!!」
船はそのまま海面に大量の水飛沫と共に着水した。
カイン達の身体が掴まった位置を支点に勢いよく跳ねた。
「冗談じゃないわ! どうやって倒せばいいの!?」
波に流されてだいぶ離れてしまったが、その距離でもまるで近くにいるような錯覚を覚えるほど巨大な魔物を見据え、サラが叫ぶ。
あまりに巨大な体躯に有効な攻撃は限られ、そもそも攻撃のために海中に身を投げる訳にも行かない。
剣士のサラにとってはやはり事前に考えていた方法をとるしか無いが、それでもこの魔物を討伐するのは困難を極めるだろう。
しかし吐露した言葉とは裏腹に、サラは強い眼差しを持ってリヴァイアサンを見据えた。
「サラ! 今呼ぶから!!」
ソフィがフーに向かって目的を伝える。
フーが鳴くと上空からゼロが甲板に降り立ち、サラを背に再び空へと舞い上がった。
カインに強化を施された総ミスリル製の長剣を握りしめ、サラは息を一度吐くと自ら喝を入れた。
「行くわよ!!」
船と歩を合わせる様にサラを乗せたゼロはリヴァイアサンへと向かってく。
こちらの存在に気付いている、いや、恐らく先ほど沈めた残りの一本、船に積んだベヒーモスの角の気配を追っているのだろう。
異常とも言えるほど長い身体をくねらせながら、リヴァイアサンも船へと向かってきた。
船はカインの入念にかけた付与魔法により、今までの衝撃を受けても傷一つついていない。
だからといってリヴァイアサンの直接の攻撃に耐えられる保証もないため、これまでもそうだったが、シバの操船術がカイン達の運命を握る。
造船だけでなく船の扱いも一流のシバにまさに身体を預け、カイン達はこれから戦う強大な的に意識を集中した。
『いいか!? 狙うのはリヴァイアサンの背びれだ! 倒す必要は無い。その背びれさえ破壊し消滅できれば俺達の勝利だ』
カインが全員に向けて念話を送る。
ここからは会話をするのさえ難しい。
カインは痛む腕を抑えながら、念話が一方通行しか出来ないのを悔やんだ。
もし相互に意思の疎通が図れれば、これほど有用なものは無いだろう。
「永劫の刻、遥かより遠く、彼方より来る。祖は全き神霊、金色の王よ、汝に願う。我が眼前にあまねく骸を!」
迫り来るリヴァイアサンの脳天目掛けてソフィが最大限に強化された雷を打ち付けた。
カインによる瞬間的な魔力の底上げとオリハルコンに込めた強化、ミスリル自体にかけた永続的な付与。
今出来うる全ての力を込めた電撃は海水に濡れたリヴァイアサンの身体を、その恐ろしく長い尾の先まで駆け抜けた。
その電撃により大量の海水が飛散蒸発し、発生した塩の結晶がキラキラと空中に輝いた。
それを眺めていたカイン達を襲ったのは、巨大な渦だった。
突如発生した大渦は、船を流れの乗せ翻弄しながら中心へと誘う。
水面が船の高さの何倍も低くなった渦の中心に巨大なとぐろを巻いたような黒い影が見える。
「やばいぞ! 振り飛ばされるな! なんでもいいからしがみつけ!!」
アオイの檄を受ける前にみな近くの柱などに手をかけ、必死に踏ん張っていた。
「お父さん! あの渦の中心にいる生き物なに!! 恐ろしくでかいけど! もしかしなくてもあれって!!」
「ダメだ! 予想通りだがあれも視えない! 既に手遅れだったのかもしれん!」
やがて渦は徐々に収まり、それは長い首を水面から出し中空に掲げた。
その顔の巨大さから想像するに水面から出た部分は身体の極一部だろうが、船の帆先の高さをゆうに超えていた。
海水を滴らせ、一枚一枚が巨大な鱗に覆われた海蛇の様な長い体躯をくねらせながら、船など一口で食い壊せそうな口を開けた。
その口には、噛み殺されたバレーンや亜竜達の残骸が見えた。
「でかい! でかすぎる!! それにしてもあの身体の色はなんだ!? 闇のように真っ黒だ!!」
アオイが叫ぶ。
『シバさん! 一度出来るだけここから逃げてください!!』
カインが念話を飛ばす。
シバはその言葉に全開でオールを動かし、リヴァイアサンから離れるように船首を向けた。
リヴァイアサンが中空に出していた首を勢いよく海面へと打ち付ける。
その衝撃で爆発するような音と共に巨大な波が発生した。
逃げる船を追うような形で波はその高さを変えずに襲ってくる。
魔道具を通してその様子を確認したシバは、あえて船首を少しだけ角度を付け波の方へと向ける。
ちょうど船と波が向き合った瞬間、壁のような海水が船を襲った。
シバは波の流れに逆らわぬよう、徐々に船首を波の進行方向と垂直に変えていく。
船は波に流されながらも船はその海水でできた壁を滑るように登り、やがて勢いよく中空へと放り出された。
「掴まれーーー!!」
船はそのまま海面に大量の水飛沫と共に着水した。
カイン達の身体が掴まった位置を支点に勢いよく跳ねた。
「冗談じゃないわ! どうやって倒せばいいの!?」
波に流されてだいぶ離れてしまったが、その距離でもまるで近くにいるような錯覚を覚えるほど巨大な魔物を見据え、サラが叫ぶ。
あまりに巨大な体躯に有効な攻撃は限られ、そもそも攻撃のために海中に身を投げる訳にも行かない。
剣士のサラにとってはやはり事前に考えていた方法をとるしか無いが、それでもこの魔物を討伐するのは困難を極めるだろう。
しかし吐露した言葉とは裏腹に、サラは強い眼差しを持ってリヴァイアサンを見据えた。
「サラ! 今呼ぶから!!」
ソフィがフーに向かって目的を伝える。
フーが鳴くと上空からゼロが甲板に降り立ち、サラを背に再び空へと舞い上がった。
カインに強化を施された総ミスリル製の長剣を握りしめ、サラは息を一度吐くと自ら喝を入れた。
「行くわよ!!」
船と歩を合わせる様にサラを乗せたゼロはリヴァイアサンへと向かってく。
こちらの存在に気付いている、いや、恐らく先ほど沈めた残りの一本、船に積んだベヒーモスの角の気配を追っているのだろう。
異常とも言えるほど長い身体をくねらせながら、リヴァイアサンも船へと向かってきた。
船はカインの入念にかけた付与魔法により、今までの衝撃を受けても傷一つついていない。
だからといってリヴァイアサンの直接の攻撃に耐えられる保証もないため、これまでもそうだったが、シバの操船術がカイン達の運命を握る。
造船だけでなく船の扱いも一流のシバにまさに身体を預け、カイン達はこれから戦う強大な的に意識を集中した。
『いいか!? 狙うのはリヴァイアサンの背びれだ! 倒す必要は無い。その背びれさえ破壊し消滅できれば俺達の勝利だ』
カインが全員に向けて念話を送る。
ここからは会話をするのさえ難しい。
カインは痛む腕を抑えながら、念話が一方通行しか出来ないのを悔やんだ。
もし相互に意思の疎通が図れれば、これほど有用なものは無いだろう。
「永劫の刻、遥かより遠く、彼方より来る。祖は全き神霊、金色の王よ、汝に願う。我が眼前にあまねく骸を!」
迫り来るリヴァイアサンの脳天目掛けてソフィが最大限に強化された雷を打ち付けた。
カインによる瞬間的な魔力の底上げとオリハルコンに込めた強化、ミスリル自体にかけた永続的な付与。
今出来うる全ての力を込めた電撃は海水に濡れたリヴァイアサンの身体を、その恐ろしく長い尾の先まで駆け抜けた。
その電撃により大量の海水が飛散蒸発し、発生した塩の結晶がキラキラと空中に輝いた。
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