辺境暮らしの付与術士
第100話
「なんじゃ?! なんじゃお主? 今の音はお主がやったのじゃな?!」
「なんじゃはこっちのセリフよ。とにかくあなた正気なら話を聞いてよ。みんな話を聞かないんだから!」
「……分かったのじゃ。ひとますこっちに入るのじゃ」
「分かったわ。えーっとあなた名前は?」
「コハンと言うのじゃ。何をしている。早く入るのじゃ」
「分かったけど、入った瞬間ドカーンとかないわよね?」
ソフィは念の為警戒しながらコハンの待つ家の中へと入る。
なにか不意に攻撃を受けたとしても、未だに周囲には水の皮膜を形成しているから、大事には至らないだろう。
中に入り扉を締める。中は決して広いとは言えない作りで、一面は樹木の幹がそのまま壁になっていた。
生活のためには多すぎる机や棚。
それらの上には各種様々な生き物の皮や骨、植物、得体の知れないものが所狭しと置かれている。
他には何に使うのかもどうやって使うのかも分からない器具がいくつも並べられていた。
黒、白、赤、茶、青、緑……無数の素材の色が部屋の中を彩っている。
薄暗い部屋の中は幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「あなた、薬師……それか錬金術士なの?」
「うん? なんじゃお主、興味があるのか? 人間の言葉で言えば錬金術士、それが近いのかのう」
コハンに奨められ簡素な背もたれもない椅子に座る。
彼女も別の机の前にあった同じ作りの椅子を引き寄せ向かい合わせに座った。
「それで、何が起こっているなのかじゃが……原因ははっきりしておる。呪いじゃ」
「呪い?」
「そう……呪いと言っても普通は目で見て分かるものでは無いが、姉様が発明したエルフの秘術を使えば魔法の質や状態などを見ることが出来る。わしも姉様から学んだからそれなりに使えるのじゃが、わし以外のエルフ達は呪いにかかっておるのじゃ。理由は不明じゃが……」
「何故コハンさんはその呪いにかからないの?」
「それはな……」
コハンの話によれば、彼女が作ることの出来る呪いよけの薬を定期的に飲んでいれば、ある程度の呪いは防ぐことが出来るということだった。
しかしそれを作るには時間とそれなりの素材が必要で集落の全員分を用意することは難しかった。
また、その薬には呪い解く効果はなく、別の薬を用意しなければならない。
コハンはその薬を作るため自らのみ呪いよけの薬を飲みながら一人奮闘していた。
「とにかく、治すなら一度に治さねばならぬのじゃ。一度一人だけ直した時には数日のうちにまた呪いにかかってしまったのじゃ」
「呪いねぇ。それにしても呪いを見れるなんてまるで師匠みたいね。エルフって皆そうなのかしら?」
「む? 師匠とな? おかしいのじゃ。この秘術は姉様とわししか使えぬはず……」
「そうなの? 確かこの前グリフォンを見て呪いだって言ってたわよ。ララさん」
「ララだと?!」
ソフィがその名を口にした瞬間、コハンは突然机に両手を打ち付け勢いよく立ち上がり、その大きな目をめいっぱいに見開き、体を机の上へと乗り出した。
ソフィを見つめる視線は力強く、失言だったのかとソフィは逡巡した。
「その、ララというエルフは、歳を感じさせぬ愛らしい容姿と慎ましいふくよかさ、コロコロと変える表情は観る者を楽しませ、その瞳は全ての生き物に愛を伝える。しかしその天使のような姿からは想像もさせぬほどの強力な数々の魔術を解き放つ。そんな素敵な女性かの?」
「えーっと……かなり過剰な表現が含まれているけど、概ねそんな感じね」
めいっぱい開かれていたと思われたコハンの目が、一際大きく開かれ、口元はわなわなと震えていた。
よく見れば身体すらも身震いしている。
「やはり!! そういえばお主の名前を聞くのがまだじゃったな?」
「ああ、そういえばそうね。ごめんなさい。ソフィと言うわ。精霊術士よ」
「なるほどなるほど……精霊術士はこの世の魔術の深淵を見ることの出来る可能性を秘めた者。さすがは姉様」
「ねぇ。もしかしなくても、さっきからコハンさんが言っている姉様って……」
「もちろんララ姉様の事じゃ。わしの師匠で最愛のお人じゃ」
「師匠は分かるけど、あなた……女性よね?」
ソフィの質問にコハンは何故か身体を後ろに仰け反らせた。
ローブの下のふくよかな膨らみがこと更に強調される。
「何を当然のことを。しかしわしが女性だからなんじゃというのじゃ。お主、愛する人を性別で判断するのか?」
「えーっと、普通はすると思うわ。まぁいいわ。という事はコハンさんは私の姉弟子ということになるのね?」
「そうなるの。わしが師匠から学んだのはもう20年以上前だがの。きっと今では更に愛らしさに磨きがかかり、その魔術は他の追随を許さなくなっておるのだろうの」
「愛らしさは置いていて、魔術の域は確かにそうね。私が知る限りでは師匠以上の魔術師は一人しか知らないわ」
ソフィの言葉にコハンの眉がピクリと上がる。
明らかに今の発言に不快感としかし好奇心を持っている。
「姉様より優れた魔術師じゃと? その名前はなんというのじゃ。そんな者が今は亡き災厄の魔女と歌われたカリラを除いて居るのなら、ぜひ会ってみたいものじゃ」
「会いたいなら会えると思うわよ。その人の名はカインさん。私の戦友のお父さんなの」
「なんじゃはこっちのセリフよ。とにかくあなた正気なら話を聞いてよ。みんな話を聞かないんだから!」
「……分かったのじゃ。ひとますこっちに入るのじゃ」
「分かったわ。えーっとあなた名前は?」
「コハンと言うのじゃ。何をしている。早く入るのじゃ」
「分かったけど、入った瞬間ドカーンとかないわよね?」
ソフィは念の為警戒しながらコハンの待つ家の中へと入る。
なにか不意に攻撃を受けたとしても、未だに周囲には水の皮膜を形成しているから、大事には至らないだろう。
中に入り扉を締める。中は決して広いとは言えない作りで、一面は樹木の幹がそのまま壁になっていた。
生活のためには多すぎる机や棚。
それらの上には各種様々な生き物の皮や骨、植物、得体の知れないものが所狭しと置かれている。
他には何に使うのかもどうやって使うのかも分からない器具がいくつも並べられていた。
黒、白、赤、茶、青、緑……無数の素材の色が部屋の中を彩っている。
薄暗い部屋の中は幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「あなた、薬師……それか錬金術士なの?」
「うん? なんじゃお主、興味があるのか? 人間の言葉で言えば錬金術士、それが近いのかのう」
コハンに奨められ簡素な背もたれもない椅子に座る。
彼女も別の机の前にあった同じ作りの椅子を引き寄せ向かい合わせに座った。
「それで、何が起こっているなのかじゃが……原因ははっきりしておる。呪いじゃ」
「呪い?」
「そう……呪いと言っても普通は目で見て分かるものでは無いが、姉様が発明したエルフの秘術を使えば魔法の質や状態などを見ることが出来る。わしも姉様から学んだからそれなりに使えるのじゃが、わし以外のエルフ達は呪いにかかっておるのじゃ。理由は不明じゃが……」
「何故コハンさんはその呪いにかからないの?」
「それはな……」
コハンの話によれば、彼女が作ることの出来る呪いよけの薬を定期的に飲んでいれば、ある程度の呪いは防ぐことが出来るということだった。
しかしそれを作るには時間とそれなりの素材が必要で集落の全員分を用意することは難しかった。
また、その薬には呪い解く効果はなく、別の薬を用意しなければならない。
コハンはその薬を作るため自らのみ呪いよけの薬を飲みながら一人奮闘していた。
「とにかく、治すなら一度に治さねばならぬのじゃ。一度一人だけ直した時には数日のうちにまた呪いにかかってしまったのじゃ」
「呪いねぇ。それにしても呪いを見れるなんてまるで師匠みたいね。エルフって皆そうなのかしら?」
「む? 師匠とな? おかしいのじゃ。この秘術は姉様とわししか使えぬはず……」
「そうなの? 確かこの前グリフォンを見て呪いだって言ってたわよ。ララさん」
「ララだと?!」
ソフィがその名を口にした瞬間、コハンは突然机に両手を打ち付け勢いよく立ち上がり、その大きな目をめいっぱいに見開き、体を机の上へと乗り出した。
ソフィを見つめる視線は力強く、失言だったのかとソフィは逡巡した。
「その、ララというエルフは、歳を感じさせぬ愛らしい容姿と慎ましいふくよかさ、コロコロと変える表情は観る者を楽しませ、その瞳は全ての生き物に愛を伝える。しかしその天使のような姿からは想像もさせぬほどの強力な数々の魔術を解き放つ。そんな素敵な女性かの?」
「えーっと……かなり過剰な表現が含まれているけど、概ねそんな感じね」
めいっぱい開かれていたと思われたコハンの目が、一際大きく開かれ、口元はわなわなと震えていた。
よく見れば身体すらも身震いしている。
「やはり!! そういえばお主の名前を聞くのがまだじゃったな?」
「ああ、そういえばそうね。ごめんなさい。ソフィと言うわ。精霊術士よ」
「なるほどなるほど……精霊術士はこの世の魔術の深淵を見ることの出来る可能性を秘めた者。さすがは姉様」
「ねぇ。もしかしなくても、さっきからコハンさんが言っている姉様って……」
「もちろんララ姉様の事じゃ。わしの師匠で最愛のお人じゃ」
「師匠は分かるけど、あなた……女性よね?」
ソフィの質問にコハンは何故か身体を後ろに仰け反らせた。
ローブの下のふくよかな膨らみがこと更に強調される。
「何を当然のことを。しかしわしが女性だからなんじゃというのじゃ。お主、愛する人を性別で判断するのか?」
「えーっと、普通はすると思うわ。まぁいいわ。という事はコハンさんは私の姉弟子ということになるのね?」
「そうなるの。わしが師匠から学んだのはもう20年以上前だがの。きっと今では更に愛らしさに磨きがかかり、その魔術は他の追随を許さなくなっておるのだろうの」
「愛らしさは置いていて、魔術の域は確かにそうね。私が知る限りでは師匠以上の魔術師は一人しか知らないわ」
ソフィの言葉にコハンの眉がピクリと上がる。
明らかに今の発言に不快感としかし好奇心を持っている。
「姉様より優れた魔術師じゃと? その名前はなんというのじゃ。そんな者が今は亡き災厄の魔女と歌われたカリラを除いて居るのなら、ぜひ会ってみたいものじゃ」
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