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辺境暮らしの付与術士

黄舞@ある化学者転生3/25発売

第70話

カインはルーク達に今回の討伐対象を説明した。
相手は大きく強大なグリフォンの群れであること。

中でも群れの中心にいる個体と、それを守るように周辺に付きまとう三体は、別格の強さを誇り、恐らくそれぞれが成体のドラゴンと同程度かそれ以上の実力を有すること。
群れの数は少なく見積っても30体以上。

今いるメンバーにボルボルを含めた15人で、最低でも一人二体相手をしなければいけない。
一方で、現在はカインの魔物寄せの効果により、山中の魔物がグリフォン群れの中心が持つオリハルコンの欠片に引き寄せられていて、グリフォンの群れはその駆逐作業を担っている事も伝えた。

「なるほど。えげつない事を考えたな。魔物達を争わせて、生き残った弱った最後を俺らが討つってわけか」
「ああ。その予定だったんだが、少々計画が狂ってな。まさか、あんな強力な群れが居るとは思っていなかった。恐らくグリフォン達は大して消耗することも無く、周りを駆逐するだろうさ」

「それはいいが、群れの中にグリフォンクイーンがいるのか? ここの来る途中の村で、そいつを狙った冒険者達がいると聞いたが」
「どうかな? ちょっと待ってくれ。ああ。群れの中心にいる個体がメスだな。メスのグリフォンは全てグリフォンクイーンなのか?」

「違うわよ。カインちゃん。グリフォンのメスの中でも、選ばれた一体がクィーンを名乗れるの」
「そうなのか。まぁ、何れにしろ、この街にその冒険者達は姿を現していない。しかし注意して観察しないとな。どれほど腕がたつ冒険者達か知らないが、恐らくあの群れの前では為す術もないだろう」

「ちょっと待ってくれ! あんたがカインさんだよな? 俺らはクランマスターのルークさんに言われて付いてきたが、そんなグリフォンの群れ、いくらルークさん達が強いからって勝ち目がねぇよ。そもそも俺らは自分達の実力をよく分かってるつもりだ。そんな戦いに参加しても役に立てないってな」
「そうだ。一人二体のグリフォンの相手なんて馬鹿げている。適当な事言って俺らを盾にしている間に、あんたがグリフォンクイーンの首を狙うって考えじゃないのか?」

それまで黙って聞いていたクランのメンバー達が口々に自分達の考えを述べ、カインを批判した。
実際、Aランクの彼らにとってグリフォンはパーティで一体相手に出来れば上等な相手で、カインの言うことは到底実現不可能な戯言に聞こえた。

カインは無言で机の上に小さな金属の塊を並べた。
それは大小様々な花の形をしていた。

ニィニィの髪飾りを一時的に分解して貰ったのだ。
それを見たルーク達三人は眉根を上げ、ピューと口笛を吹いた。

「皆さんの言い分はよく分かります。そこでこれを用意しました。ただこれは、この国の友人、ニィニィさんから借りたものなので、皆さんにはこの間だけお貸しするだけです。それとこの事は他言無用でお願いします」

不思議そうな顔をしているクランのメンバー一人一人にカインは花の形をした飾りを手渡していった。
クランのメンバーはわけも分からず、その飾りを目の前にかざして眺めていた。

「こんな小さい飾りがなんの役にたつっていうんだ!」

メンバーの一人が飾りを握り締めたまま、拳を強く机に叩きつけた。
その途端、机は拳の叩きつけた場所から二つに折れ、ぱらぱらと木屑を落としながら、倒れた。

「え? いや・・・俺、そんなつもりじゃ」
「馬鹿か。普通の人間が机を殴ったくらいで叩き折れるかよ。気を付けろよ? 慣れるまで少し時間がかかるぞ? それにしてもカイン、俺らのより随分と威力が高いんじゃねぇのか?」

「ああ。オリハルコンはどうやら俺の付与魔法の効果を強める働きがあるらしい。それと、俺が咄嗟にかけた補助魔法と、きちんとかけた付与魔法じゃあ元々の効果も違うしな。ルーク達のアクセサリーも一度貸してくれ。今度はきちんとかけるさ」
「なるほど。相手はそれほどってことか。ほらよ! そっちは言われても返さねぇぞ?」

ルークに習い、ミューとララもペンダントとリングをカインに手渡す。
カインは受け取ると無くさないようにと懐にしまい込んだ。

「今見た通り、その飾りを身に付けると、様々な補助魔法がかけられたのと同じ状態になります。俺の魔力の問題で再度かけ直すことは出来ませんが、恐らくグリフォン達との戦いの間は切れることは無いはずです。それと、もし危険ならば、戦いの最中俺も補助魔法をかけます。瞬間的にですがが、その飾りよりも効果は高いです」
「すげぇ。まるで宝具じゃねぇか。しかも人数分。カインさん。これをあんたが作ったって言うのか?」

「ええ。だが、さっきも言いましたがが、この事は他人に話さないでください。例えクランやパーティの仲間であってもです」

クランのメンバー達は一斉に頷く。
その目は既にカインへの信頼の色が宿り、もう誰もグリフォンの群れの討伐が絵空事だと思うものはいなかった。

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