辺境暮らしの付与術士
第49話
見たことがないような豪華な調度品が、絶妙なバランスで飾れた部屋で、ララは目の前に並べられた料理に目を輝かせていた。
どれも食べたことも見たことも無いが、見た目で既に食べる者の目を楽しませていた。
色とりどりの食材を使い、まるで皿の中に絵を描くように飾られた料理たち。
中には東の国に住むという、鳳凰や龍の形を象った料理もあった。
「さあ、遠慮なく食べてくれ。これは東の国の王族が食べるという料理でね。これを作れる料理人を探すのには苦労したんだよ」
「それでは遠慮なく頂きます」
「食べながらでいいんだが、それで、僕の欲しいものの値段は決めてくれたかな? 何が欲しいかは、あの場で言った通りだ」
「すいません。その話は食事が終わってからでもよろしいですか? 今は目の前の芸術に集中したいのです」
口いっぱいにものを詰め込みながら、ララは真面目な口調でそう言った。
口の周りにはソースが付いている。色々と台無しだ。
ヴァンは苦笑しながら 、承諾し、ララが満足するのを静かに待った。
やがて、料理のほとんどを平らげると、ララはおもむろに商談に入った。
事前にカイン達と打合せした通り、ララは、払えなくはないが、それなりに高額を提示した。
もちろん、この布の価値を考えると、妥当な金額だった。
それを用意させるにはそれなりの準備が必要だろう。
その間に、ララは外で待機している、カイン達に合図を送り、カイン達はその合図に従い、屋敷へ乗り込むのだ。
ララ1人で仕留められればよし、そうでなくても、時間を稼げれば、カイン達が駆けつけてくれる。
たとえ1人では敵わない敵でも、4人集まれば倒せない敵などいないと、ルークは豪語した。
「ふむ。なるほど。悪くない金額だ。早速用意しよう。ただ、その金額を用意するには少々時間が必要だ。待ってくれるね?」
ララは頷くと、机の下で右手を決めた合図の通りに動かした。
合図は、ララが右手にはめているミスリルのリングの動きを、カインが魔力による視界で見ることにより、成立させた。
合図を読み取ったカインはルーク達に知らせる。
ルークは軽く頷くと、屋敷の裏口に立つ門番を、声も出させずに気絶させた。
裏口から入ると、3人はララのいる部屋目がけ進んで行った。
途中、何人か使用人に出くわしたが、今は博覧会の最中で、他にも多数の来客があるためか、誰も気にとめていないようだ。
「さて、これで用意出来た。残念なことに君以外にろくなものが無くてね。でも君を見つけることが出来て良かったよ」
ヴァンは提示された金額が入った大きな袋をララの目の前に置いた。
ララはその袋に手を置き、受け取る素振りを見せると、不敵な笑みを浮かべヴァンを見据えた。
「ふふん。私の本当の狙いは、金じゃない。あなたの命よ。化け物め! 私達の街をあなたの好きにさせない!」
「ほう? 興味深い話だね。どうして僕が化け物だと思ったのか、詳しく聞かせて欲しいな。それも支払いが必要かい?」
「とぼけても無駄よ! こっちにはちゃんと分かってるんだから。 その肌の色も厚化粧をして誤魔化しているってね! あなたは一体何者なの?」
「ほう。これはますます、このまま返す訳には行かないな。是非とも話を聞かなくては。ところで、さっきからいきがっているけれど、君に勝算なんてあるのかい?」
「ふん! あらかた、丸腰だからって安心しているんでしょうけど、覚えてないの? 私は魔術師よ。その気になれば武器なんていらないんだから!」
そう言うとララは魔法を放つため、ぶつぶつと呪文を唱えた。
そして驚愕する。使えるはずの魔法が使えなくなっていたのだ。
「君こそ僕の言葉を覚えていないのかい? 言っただろう? その布も、君も買い取りたいと。僕は君が提示した金額を支払い、君は受け取った。契約は成立したんだ」
「何を・・・言っているの?」
「まだ分からないかい? 僕は買ったんだよ。君の魔法とその知識をね。おかげで今や、君の魔法は僕のものだ。疑うんな見せてあげようか?」
するとヴァンは呪文を唱え、小さな火の玉を放つと布に当てた。
布は当然のごとく傷一つないが、ララは驚愕していた。
今ヴァンが放った魔法はララの得意とする魔法の一つだった。
似たような魔法がよく知られており、その使い手は多いが、ヴァンが放った魔法は、ララが独自のアレンジを加えたものと全く一緒だった。
「ああ。やっと理解してくれたようだね。魔法は買い取らせてもらったから、もう君のものじゃないんだ。ああ。知識はなかなか難しくてね。同じものを手に入れることが出来るが、こちらは君にも残っているだろう? そこら辺の細かい違いは実はよく分かっていないんだよ。何せこの力は人から貰ったものだからね」
「ふざけないで! そんなことできるはずないでしょう?!」
ララは必死に思いつく限りの魔法を唱えようと試みたが、その全てが徒労に終わった。
それを見たヴァンは満足したのか、弱い電撃をララに放ち、失神させ、拘束し、自室に運んだ。
どれも食べたことも見たことも無いが、見た目で既に食べる者の目を楽しませていた。
色とりどりの食材を使い、まるで皿の中に絵を描くように飾られた料理たち。
中には東の国に住むという、鳳凰や龍の形を象った料理もあった。
「さあ、遠慮なく食べてくれ。これは東の国の王族が食べるという料理でね。これを作れる料理人を探すのには苦労したんだよ」
「それでは遠慮なく頂きます」
「食べながらでいいんだが、それで、僕の欲しいものの値段は決めてくれたかな? 何が欲しいかは、あの場で言った通りだ」
「すいません。その話は食事が終わってからでもよろしいですか? 今は目の前の芸術に集中したいのです」
口いっぱいにものを詰め込みながら、ララは真面目な口調でそう言った。
口の周りにはソースが付いている。色々と台無しだ。
ヴァンは苦笑しながら 、承諾し、ララが満足するのを静かに待った。
やがて、料理のほとんどを平らげると、ララはおもむろに商談に入った。
事前にカイン達と打合せした通り、ララは、払えなくはないが、それなりに高額を提示した。
もちろん、この布の価値を考えると、妥当な金額だった。
それを用意させるにはそれなりの準備が必要だろう。
その間に、ララは外で待機している、カイン達に合図を送り、カイン達はその合図に従い、屋敷へ乗り込むのだ。
ララ1人で仕留められればよし、そうでなくても、時間を稼げれば、カイン達が駆けつけてくれる。
たとえ1人では敵わない敵でも、4人集まれば倒せない敵などいないと、ルークは豪語した。
「ふむ。なるほど。悪くない金額だ。早速用意しよう。ただ、その金額を用意するには少々時間が必要だ。待ってくれるね?」
ララは頷くと、机の下で右手を決めた合図の通りに動かした。
合図は、ララが右手にはめているミスリルのリングの動きを、カインが魔力による視界で見ることにより、成立させた。
合図を読み取ったカインはルーク達に知らせる。
ルークは軽く頷くと、屋敷の裏口に立つ門番を、声も出させずに気絶させた。
裏口から入ると、3人はララのいる部屋目がけ進んで行った。
途中、何人か使用人に出くわしたが、今は博覧会の最中で、他にも多数の来客があるためか、誰も気にとめていないようだ。
「さて、これで用意出来た。残念なことに君以外にろくなものが無くてね。でも君を見つけることが出来て良かったよ」
ヴァンは提示された金額が入った大きな袋をララの目の前に置いた。
ララはその袋に手を置き、受け取る素振りを見せると、不敵な笑みを浮かべヴァンを見据えた。
「ふふん。私の本当の狙いは、金じゃない。あなたの命よ。化け物め! 私達の街をあなたの好きにさせない!」
「ほう? 興味深い話だね。どうして僕が化け物だと思ったのか、詳しく聞かせて欲しいな。それも支払いが必要かい?」
「とぼけても無駄よ! こっちにはちゃんと分かってるんだから。 その肌の色も厚化粧をして誤魔化しているってね! あなたは一体何者なの?」
「ほう。これはますます、このまま返す訳には行かないな。是非とも話を聞かなくては。ところで、さっきからいきがっているけれど、君に勝算なんてあるのかい?」
「ふん! あらかた、丸腰だからって安心しているんでしょうけど、覚えてないの? 私は魔術師よ。その気になれば武器なんていらないんだから!」
そう言うとララは魔法を放つため、ぶつぶつと呪文を唱えた。
そして驚愕する。使えるはずの魔法が使えなくなっていたのだ。
「君こそ僕の言葉を覚えていないのかい? 言っただろう? その布も、君も買い取りたいと。僕は君が提示した金額を支払い、君は受け取った。契約は成立したんだ」
「何を・・・言っているの?」
「まだ分からないかい? 僕は買ったんだよ。君の魔法とその知識をね。おかげで今や、君の魔法は僕のものだ。疑うんな見せてあげようか?」
するとヴァンは呪文を唱え、小さな火の玉を放つと布に当てた。
布は当然のごとく傷一つないが、ララは驚愕していた。
今ヴァンが放った魔法はララの得意とする魔法の一つだった。
似たような魔法がよく知られており、その使い手は多いが、ヴァンが放った魔法は、ララが独自のアレンジを加えたものと全く一緒だった。
「ああ。やっと理解してくれたようだね。魔法は買い取らせてもらったから、もう君のものじゃないんだ。ああ。知識はなかなか難しくてね。同じものを手に入れることが出来るが、こちらは君にも残っているだろう? そこら辺の細かい違いは実はよく分かっていないんだよ。何せこの力は人から貰ったものだからね」
「ふざけないで! そんなことできるはずないでしょう?!」
ララは必死に思いつく限りの魔法を唱えようと試みたが、その全てが徒労に終わった。
それを見たヴァンは満足したのか、弱い電撃をララに放ち、失神させ、拘束し、自室に運んだ。
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