インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~

黄舞@ある化学者転生3/25発売

第44話【新しい目標】

「はぁ……」

俺はため息をついていた。
理由は簡単。目標を見失ったからだ。

ロキと葵が仲間になったのはいい。
ロキは初めから誘っていたし、葵もなんだかんだ言って嫌いじゃない。

だが、正直なところ俺は強くなりすぎた。
この前のイベントだって、結果的に助けてもらう形にはなったが、俺一人で優勝は確定していた。

このままレベル上げをしたら、それこそアップデート後のエンドコンテンツですら一人でクリア出来てしまいそうだ。

もちろんみんなとワイワイやるっていうのも楽しい。
楽しいが、俺はいつしか『攻略を見つける』ということに楽しさを見出していたことに気付いた。

ネタ職と笑われた職業【商人】。
今このゲームをよく知る者で、この職業がネタだと言うのは少ないだろう。

葵がパーティに入ってしまったせいで、競う相手も居なくなってしまった。
今思えば、こいつくらいだったかもしれない。俺に冷や汗をかかせたのは。

「どーすっかなぁ。なんか面白いことないかなぁ」
「なにさっきからボヤいてんの?」

俺が道の真ん中でこんなことをしていたら、後ろから聞き覚えのある声に話しかけられた。

「ああ。ロキ。なんていうかさ。今後何を目標にしようかなぁって」
「え? そんなこと悩んでるの? そんなのなんだっていいじゃん。ゲームなんだしさ。そんなことよりイベントの景品、どーすんの?」

「イベントの景品?」
「うわぁ。忘れちゃってるよ。ギルドだよ。ギルド。このゲームって珍しくギルドがなかったじゃない。それが次のアプデで実装されるんでしょ」

ああ。そういえばそんなことを言ってたな。
ギルドっていうのは、パーティよりも多い人数が所属するプレイヤーの集まりなんだとか。

そのギルドに所属するメンバーでパーティでも倒せないような強大なボスを狩ったり、ギルド同士の戦争みたいなものもあったりするらしい。
そのギルドを、アプデ前に作る権利を貰えるらしい。

そうすれば優秀なプレイヤーを自陣に組み込みやすくなるし、なんでも一番ってのはいいものだからな。
それにしてもギルドか。

ん? 強大なボス……? 戦争?
それだ!!

「さすがだ! ロキ! いいこと思いついた!! みんなを集める。話があるんだ!」
「え? なになに? 面白い話?」



「ーーということで、俺はギルドを作ろうと思う」
「え!? それって、私たちと戦うってこと!?」

俺はいつものようにヒミコのアトリエでお茶会を開きながら、パーティのメンバーに俺の考えを伝えた。
まぁミーシャが驚くのもわけないな。

「そう。俺は、俺一人のギルドを作るつもりだ。もちろん今まで通り、パーティはみんなが良ければ組むつもりだけど」
「でも、私たちと一緒に最強を目指せばいいんじゃありませんか?」

「この前のイベントで分かったろ? 俺一人でさえ優勝に必要なポイントを稼げたんだ。みんなと組んだら強いのは当たり前。誰も敵が居なくなっちまう。ところがだ、みんななら、俺を倒せるポテンシャルがあると思う」
「はっ! やっと私の実力に気付いたか! ありがとうございます!!」

「だから、みんなには俺を倒せるメンバーを集めて欲しい。ガチのヤツをね。それに俺が負ければ勝つまで楽しめる。勝っちまっても、そっちは試行錯誤して、また挑んでくれたらいい」
「がっはっは! やはりショーニンはこのゲームの裏ボスってことか! こいつを倒すのは骨だな」

これで俺も楽しめるし、みんなとワイワイ楽しむっていうのも形は違うけど続けられる。
みんなと最強を目指すのもいい。だが、みんなから見た最強を目指すのはもっといい。

気付けば俺はいつの間にか、このゲームにどっぷりハマってしまっていた。
今更ぬるく遊ぶだなんて楽しくない。

どうせやるならとことんやりたい。
ギルドで挑むボスを倒すってのもそういう意味では楽しみだ。

果たして一人でも倒せるのだろうか。

「分かったよ。ショーニンのそういう所が好きだからね。みんな、ショーニンのこと好きだろ? やらせてあげようよ。それにさ。悔しいじゃない。俺ら馬鹿にされてるんだぜ? 束になってもショーニンに勝てないってね。そんなこいつの鼻柱、へし折ってやったら気持ちいいと思わない?」
「はっはっは! さすがだな。ロキ。もちろん、そっちのリーダーはお前だろ?」

ロキは本当にありがたい存在だ。
俺が楽しむために最大限の協力をしてくれる。

よーし。絶対負けないように色々と準備をしないとな。
まずはレベルのカンスト。次に他職の研究。

どんな戦略でこられても大丈夫なように考えよう。
と、言ってもできることは少ないがな。

「そういえば、スキルを覚える装備って色々あるのか?」
「うん? そりゃあねぇ。さすがに俺も全部は把握なんかしてないけど、いくらでもあるんじゃない?」

なるほど、そういうのも調べないとな。
幸い金もあるし、狩りも得意だ。めぼしいものを見つけたら手に入れよう。

「よし。じゃあ、ひとまずみんなでレベルカンストのために狩りに行くか!!」

俺の新しい目標ができた。
次のアプデが待ち遠しい。

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