檸檬色に染まる泉(純愛GL作品)
この日がくることを
維澄さんが仕事を早退した後、私ははじめて一人で夕方のドラッグストアーの仕事をこなした。
一人で仕事をこなしてみると驚くほどに忙しかった。
維澄さんは私が入る前、これをずっと一人でこなしていたんだろうか?
おっとりしているように見えるのに、実は手際が良くて要領もいいのだろうか?
確かにキャリアは違うけど、ドタバタしてしまった私としてはちょっと悔しかなった。
さて、今日は……
維澄さんの過去に結びつくKスタジオ上條社長の事、維澄さんの激しい精神的な動揺のこと、美香の激昂のこと、あまりに多くのことが同時に起きすぎて私の頭ではぐちゃぐちゃになっていたのだが……
夕方の仕事の忙しさで途中からそれどころではなくなってしまったのがむしろ救いだったのかもしれない。
私はようやく一人きりのアルバイトを終えて店を後にした。そして、気は重かったが約束していた美香に連絡をいれた。
「あ、美香。いまバイト終わって店出たところ。どこ行ったらいい?」
「ごめんね檸檬。遅い時間につきあわせちゃって」
あれ?
なんだろう?
私はこの美香の”声のトーン”に違和感を感じた。
さっき激怒して店を出て言った時のトーンとはあまりにかけ離れていたからだ。
電話口から聞こえてきた美香の声は、怒っているどころろか、穏やかを通り越して少し元気がないようにも聞こえた。
どうしたんだ?
さっきまで感じていた”不安”とは、また別の種類の”不安”に私の心はざわつき始めていた。
美香はドラッグストアーからそれほど離れていないコーヒーチェーンのショップにいるという。
さっき美香と“ケンカ別れ”をしてから3時間は経っていた。それなのに随分と近くで待っていたことがちょっと不思議に思われた。
美香は私がバイトをしている間家に帰らずそこでずっと待っていたのだろうか?
私は”バイトを黙っていた”という罪悪感が先行して″とにかく少しでも早く”と自転車を飛ばし、美香の待つコーヒーショップに急いだ。
私は店に着くと風を切って自転車を飛ばしたせいで乱れてしまった髪を整えることもなく、急いで店内に飛び込んで、美香の姿を探した。
すると美香は店内の一番奥にある一番目立たないところに座っていた。
私は小走りで美香に近づいくと……
想像もしていなかった美香の顔に息をのんだ。
美香はどうしたことか、泣きはらした顔を力なく私に向けた。
「み、美香?どうしたの?何があったの?」
私は美香に会ったら、まずは全力で謝ろうと決めていたのに、美香の顔を見た途端、私の頭はそれどころではなくなってしまった。
「檸檬……」
そう小さく呟いた美香は私の顔を見て、はらはらと大粒の涙を流し始めてしまった。
「ど、どうしたのよ?大丈夫なの?」
「うん。もう散々泣いてね。ちょっと落ちついていたんだけど檸檬の顔見たらまた……」
美香はそこまで言うと顔を歪ませて、嗚咽を堪えるように下を向いて涙を流しはじめてしまった。
私はなすすべもなくただ、泣いている美香の背中をさすることしかできなかった。
どれくらいたったのだろう……
ようやく少し落ちついた美香が静かに顔を上げて、遠慮がちに私に目を向けた。
「はは、ゴメンね?訳わかんないよね」
美香は無理に笑顔を作りながら、小さく言った。
私は実際に全くこの状況がつかめきれていない。
だから私も辛うじて作った不器用すぎる笑顔を美香に向けることしかできなかった。
「いつかはこの日が来るのは覚悟してたんだけどな」
「え?この日?覚悟?どういうこと?」
「ホンっと檸檬は鈍くて困るな」
美香は寂しそうに、呟くようにそう言った。
「そ、そんなこの状況で何を分れというのよ?」
「そう?私は全部わかっちゃったよ?」
「え?何を?いつだって美香はいろいろ鋭すぎるから」
「はあ……」
美香は大きなため息をついて、あらたまったように身体を私に向けてきた。
「檸檬?」
「え?」
「私はね……ずっと檸檬のことが好きだったんだよ?」
「……は?」
一人で仕事をこなしてみると驚くほどに忙しかった。
維澄さんは私が入る前、これをずっと一人でこなしていたんだろうか?
おっとりしているように見えるのに、実は手際が良くて要領もいいのだろうか?
確かにキャリアは違うけど、ドタバタしてしまった私としてはちょっと悔しかなった。
さて、今日は……
維澄さんの過去に結びつくKスタジオ上條社長の事、維澄さんの激しい精神的な動揺のこと、美香の激昂のこと、あまりに多くのことが同時に起きすぎて私の頭ではぐちゃぐちゃになっていたのだが……
夕方の仕事の忙しさで途中からそれどころではなくなってしまったのがむしろ救いだったのかもしれない。
私はようやく一人きりのアルバイトを終えて店を後にした。そして、気は重かったが約束していた美香に連絡をいれた。
「あ、美香。いまバイト終わって店出たところ。どこ行ったらいい?」
「ごめんね檸檬。遅い時間につきあわせちゃって」
あれ?
なんだろう?
私はこの美香の”声のトーン”に違和感を感じた。
さっき激怒して店を出て言った時のトーンとはあまりにかけ離れていたからだ。
電話口から聞こえてきた美香の声は、怒っているどころろか、穏やかを通り越して少し元気がないようにも聞こえた。
どうしたんだ?
さっきまで感じていた”不安”とは、また別の種類の”不安”に私の心はざわつき始めていた。
美香はドラッグストアーからそれほど離れていないコーヒーチェーンのショップにいるという。
さっき美香と“ケンカ別れ”をしてから3時間は経っていた。それなのに随分と近くで待っていたことがちょっと不思議に思われた。
美香は私がバイトをしている間家に帰らずそこでずっと待っていたのだろうか?
私は”バイトを黙っていた”という罪悪感が先行して″とにかく少しでも早く”と自転車を飛ばし、美香の待つコーヒーショップに急いだ。
私は店に着くと風を切って自転車を飛ばしたせいで乱れてしまった髪を整えることもなく、急いで店内に飛び込んで、美香の姿を探した。
すると美香は店内の一番奥にある一番目立たないところに座っていた。
私は小走りで美香に近づいくと……
想像もしていなかった美香の顔に息をのんだ。
美香はどうしたことか、泣きはらした顔を力なく私に向けた。
「み、美香?どうしたの?何があったの?」
私は美香に会ったら、まずは全力で謝ろうと決めていたのに、美香の顔を見た途端、私の頭はそれどころではなくなってしまった。
「檸檬……」
そう小さく呟いた美香は私の顔を見て、はらはらと大粒の涙を流し始めてしまった。
「ど、どうしたのよ?大丈夫なの?」
「うん。もう散々泣いてね。ちょっと落ちついていたんだけど檸檬の顔見たらまた……」
美香はそこまで言うと顔を歪ませて、嗚咽を堪えるように下を向いて涙を流しはじめてしまった。
私はなすすべもなくただ、泣いている美香の背中をさすることしかできなかった。
どれくらいたったのだろう……
ようやく少し落ちついた美香が静かに顔を上げて、遠慮がちに私に目を向けた。
「はは、ゴメンね?訳わかんないよね」
美香は無理に笑顔を作りながら、小さく言った。
私は実際に全くこの状況がつかめきれていない。
だから私も辛うじて作った不器用すぎる笑顔を美香に向けることしかできなかった。
「いつかはこの日が来るのは覚悟してたんだけどな」
「え?この日?覚悟?どういうこと?」
「ホンっと檸檬は鈍くて困るな」
美香は寂しそうに、呟くようにそう言った。
「そ、そんなこの状況で何を分れというのよ?」
「そう?私は全部わかっちゃったよ?」
「え?何を?いつだって美香はいろいろ鋭すぎるから」
「はあ……」
美香は大きなため息をついて、あらたまったように身体を私に向けてきた。
「檸檬?」
「え?」
「私はね……ずっと檸檬のことが好きだったんだよ?」
「……は?」
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