一途な亡国王子は世界の果てまで

ドラ猫

第九話 謎の男、ハリス

ーーチュンチュンチュンーー

どこからか、鳥のなく音が聞こえる。

「おや、目覚めたかな?」

俺は自然と声のする方を向く。聞いたことのない声だ。しかし、どこか懐かしい。

そこには、見たことはないが懐かしさの感じる老人がいた。

「だ、誰ですか?」

とっさに、俺は部屋中を見渡す。周りには見たことはないが普通の部屋だった。俺は今知らない部屋のベッドに寝かされているみたいだ。

「私はハリスというものです。ところで、あなたのお名前は?」

「えっと、俺の名前はライエルです。それにしても、俺はどうしてここに?」

俺はどうしてここに?いや、俺は今までどうしていたっけ。あんまり覚えてないな。でも早く帰らないと、母さんが心配するし、なにより、ソフィアともっと一緒にいたいし!なんたってもう恋人なんだから!

「どうやら、記憶が混濁しているようですね。こちらに来て、暖かい飲み物でも飲みましょうか。」

記憶が混濁?よくわからないが、この老人ハリスについていくことにした。

そこはリビングとなっていて、とても暖かく感じられた。

「どうぞ。これを。精神が落ち着きます。」

「ありがとうございます。」

「では、それを飲んだら、連れて行きたいところがあります。」

「わかりました。」





「ここ、は、、」

「ええ。広大な更地です。」

そこには、終わりが見えないほど広い絵本で読んだ砂漠のような土地だった。

「あああああ!がああぁぁぁぁ!!!!」

俺は頭を抱えてじゃがりこむ。頭がひどくいたい。

様々な記憶が俺の頭の中を渦巻く。

自分のせいで2人が死んだことを。

「どうやら、思い出したようだね。」

「は、はいっ。」

あの辛い記憶を思い出すと同時に、自分の右目が見えていないことに気づく。

とっさに、俺は右目を触る。

「傷がある、、!」

「ああ、そのようだね。見事な刀傷だ。」

そこで、この傷をつけられたときの記憶がフラッシュバックしてしまう。

「ゆっくりでいい。あのお茶の効果もあって、そこまでの精神異常は起こさないようになっている。順に噛み砕いて行きなさい。」

「は、はいっ。」

俺は泣きそうになった。結局生き残ったのは俺だけか。なんで俺は今も生きているんだ?あの時死んでおくべきではなかったのか?2人や村のみんなが死んだのに、、、

「なんで、こんなことになっているんですか?いくら思い出そうとしても、こんな更地になった記憶がないんです。敵は倒せたのですか?」

「ああ。これは、君がやったんだ。君が更地にしたんだ、、、。」

「な、なんてことを、、。」

おそらく、瀕死の状態の村人もいただろう。ソフィアもその1人だ。それに母さんの死体を消してしまうなんて、、。

「あまり自分を責めないほうがいい。お前は悪くない。だが、これからには責任が伴う。お前がこれからどう生きていくかにな。」

「は、はいっ!」

自然と涙が出てしまった。俺は1人になってしまった。最愛の母を亡くし、これからを誓い合った恋人を失い、、、

「そ、そうだ!」

俺は自分のポケットに手を突っ込む。

ここには、ソフィアがくれた耳飾りがあるはず、、、

「良かった!あった!」

この耳飾りは相変わらずソフィアがくれたままの状態だった。

「そうだ、あれは?」

俺はそう言い走り出す。なんとなく自分の家がある場所はわかる。おそらくこの更地の中心部付近だろう。


「やっぱり、あるわけないか、、。」

俺が探しているのはソフィアにもらった短剣だ。ダメ元で探してみたけれど内容だった、、、?

あれは、、、?

「あった!短剣!」

そこには、しっかりと鞘に収まったままの短剣があった。柄はいつも通りに輝いている。

抜いて刀身を見てみても、柄以上の輝きを持って俺に応えてくれた。


「良かったですね。見つかって。」

いつのまにか、ハリスさんはついてきていた。

「はい!」

でも、なぜ残っていたのだろうか。これ以外は何も残っていないというのに。

「この剣には凄まじい力を感じます。だから、残ったのでしょう。」

俺の疑問を察していたかのように言う。いや、実際わかっていたな。この人からは何か不思議なものを感じる。

「これはある人からの贈り物なんです、、。今はもう、死んでしまったのですが、、、」

俺は顔を下に向ける。

「そうですか、、。これはその送ってくれた人の魔力が込められているのですかな?」

「今覚えばそうだと思います。元々銀色だった耳飾りが青銀色になっていましたから。それは今も変わってません。」

この人はなんでここまで聞くんだろうかと思う。

「おや?それはおかしいですねぇ。」

「な、何がおかしいんですか!?」

俺はこんなことを言うハリスさんに一筋の希望を抱いてしまう。

「通常、人の魔力に色はありません。」

な、なんだ、そんなことか。

「それだけではありません。物などに付与された魔力は宿した者が死んでしまったら自然魔力、つまり、誰のものでもない魔力になってしまうのです。」

「つ、つまり、、?」

「はい。君にその剣を送った人の魔力が今も剣と耳飾りに宿っていると言うことは、その人は生きています。」

「ほ、本当ですか!?」

俺は天にも登るような気持ちだった。

「ええ。本当は自然魔力と生きた魔力の違いなんてわからないんですけど、今回はなんと色がついていますからね、、。なんとも不思議です。」


「や、やったああああぁぁーー!!!」

あのソフィアが生きてる!あんなに瀕死状態だったのに生きててくれたんだ!!

「で、でも、今どこに、、?」

「ええ。それは私にもわかりません。推測ですが、君がここを更地にした時に時空間に歪みが生じ、どこか辺境に飛ばされてしまったのかもしれません。」

「そ、そんな、、。そもそも、どうやって俺はここを更地にしたんですか?」

そういえば、俺は大事なことを聞き忘れていた。俺の力ではそんなことできないだろうと思う。

「君の潜在能力は思っているより大きいと言うことですよ。君の無意識の魔力解放によってこうなってしまったのですから。」

「な、なるほど、、。」

こんなことは二度と起きて欲しくない。無意識に人を何十人と殺して、家や、思い出を一瞬で壊してしまうなんて、、。

「大丈夫ですよ。こんなこと、そうは起こりません。潜在能力といっても火事場の馬鹿力みたいなものです。」

火事場の馬鹿力、、か。

「そういえば、ハリスさん。あなたは何者なんですか?ここまで今回のことについて詳しいし、、、」

「それはいずれお教えします。ただ、あなたの全面なる協力者であることは申し上げておきましょう。」

急に仰々しくなるハリスさんだが、本当に何者なんだろうか、、。




















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