100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

マーくん

第6話 お姫様を助けたら王都に着きました

さて、草むらでの死闘になんとか勝利した俺は、街を探すことにした。

虫に勝ったところで、腹が減るだけで何も得るものは無い。

能力は沢山手に入ったけど、それで腹が膨れるわけでも無し、もちろんドロップアイテムが手に入るわけでも無い。

今晩もここで寝るわけにもいかないから、食住の確保は必須だ。

服も汚れ放題だから、衣もか。

とにかく衣食住を確保するためにも、街に行くのは決定事項である。

危機察知能力が結構なレベルになって、検知範囲が大幅に広くなったようだ。

相変わらず危機が訪れるような事象が起きないと反応しないみたいだが、草むらを東に向かったところで微かな反応を見つけた。

とにかく他に向かうあてもないのだから、そちらに向かうことにする。

いつでも逃げれるように気配遮断を掛けておく。

歩き出して気付いたが、体力と言うか身体能力がかなり向上しているみたいだ。

走っても疲れ無いし、かなりのスピードで走れる。

危機察知の反応もだんだん大きくなって来て、ついに人を発見した。

気配遮断に気合いを入れ直して林の中からチラッと見える騎士みたいな人に近づく。

気配遮断凄え!

2メートル付近まで近づいても気付かれない。

騎士みたいな人、いや絶対騎士様だわ。
お姫様みたいな綺麗な人をデカい犬達から守っているし。

でも犬の方が有利っぽい。

林の奥には同じ格好の騎士様がたくさん倒れているしね。

俺は犬に近づいて至近距離から、火魔法をぶっ飛ばす。

ファイヤーニードルってやつ。

細い火の針が犬の頭に突き刺さり消えていく。

脳に達したのか、犬はゆっくりと倒れた。

騎士様から見たら頭が一瞬ピカッと光って、犬がゆっくり倒れる感じかな。

そこいらにいる犬っころを次々にファイヤーニードルで倒していく。

全て倒し終えて、騎士様を見ると、とっても驚いていた。

そりゃさっきまで苦戦していた敵が突然前触れもなく倒れてしまったら、普通驚くよね。

ラノベだったらここで姿を見せて、お姫様に感謝され、屋敷や城に行くのが定番なんだろうけど、この世界は危険がいっぱいだし、そんな展開にならない可能性が高いだろう。

最初に出会った悪どい役人がトラウマになっているのかもしれないけどね。

とにかく、ややこしいことは出来るだけ回避するためにも、ここは黙って去ろう。


うん?妙な視線を感じるぞ。

気配遮断は絶賛稼働中なのに。

辺りを見渡すとお姫様がこちらをじっと見ている。

視線が上手く定まっていないから、直接俺に気付いているわけじゃ無さそうだけど。


まぁいいか。

行きがけの駄賃とばかりに、数頭の犬っころの死体を収納して、俺は新たに見つけた人の気配の方向に進んで行った。



>>>>>>>>>>>>>


悪夢のようでした。
ニルス公爵の別荘に遊びに行った帰り道、深淵の森近くの林を通り掛かった時、シルバーウルフの群れに遭遇したのです。

シルバーウルフは、深淵の森に住むB級魔物で、群れになると瞬く間に街が滅ぶと言われる恐ろしい魔物です。

馬車の周りには王家騎士団の精鋭が守ってくれていますが、恐らく倒すのは難しいでしょう。

わたしの分析能力がそう警告を鳴らしています。

「姫様、魔物が襲ってまいりました。我々がお守りしますので先にお逃げ下さい。

ランス!姫様をお守りして先に逃げるのだ。」

後方にいる騎士団長が怒鳴っています。

「姫様。少し揺れるかもしれませんが、しばらくご辛抱願います。

第2部隊、馬車について行け。」

ランス副団長率いる第2部隊の騎士達がわたしの馬車を囲むように馬を走らせています。

もう少しで林を抜けるというところで、先回りしていたシルバーウルフが馬車に襲い掛かってきました。

シルバーウルフに噛みつかれた馬車馬の1頭が大きく嘶き立ち上がったのをきっかけに馬車が大きく傾き、そのまま横転しました。

一緒に乗っていた侍女に手を引かれ、何とか馬車を出ることが出来ましたが、馬車は大破し動かすことはできない状態です。

「姫様!」

ランスがすぐに駆け付けてくれます。

「お怪我は大丈夫ですか?わたしがお守りいたします!」

わたしの顔を見て安心したのか、ランスは笑みを浮かべてからシルバーウルフへと視線を移しました。

ランス率いる第2部隊の騎士達が勇猛果敢にシルバーウルフと対峙しますが、多勢に無勢とでも言いましょうか、ひとり、またひとりと倒れていきます。

そして見える範囲にはランスがひとりきりとなり、わたしも諦めかけた時です。それは突然でした。

目には見えませんが強い存在感がわたし達に近づいてきたかと思うと、シルバーウルフが音もなく1頭、また1頭と倒れていきます。

幼少よりわたしには不思議な能力がありました。

わたしには人の鑑定が出来るのです。

それは遠く離れたところにいる人でも、陰に隠れて見えない人でも同じです。

もちろん、隠蔽魔法を使っていても例外ではありません。

シルバーウルフの近くに何者かが近づき、魔力反応が見えたかと思うとそのシルバーウルフが倒れます。

そう、誰かが魔法でシルバーウルフを倒しているのが感じ取れました。

もちろん侍女のアリスや騎士のランスは、何も感じないのでしょう。その不可思議な光景をただ驚きの中で見つめています。

わたしはその人が何者か探ろうとしました。

でも無理でした。強力な気配遮断結界が張られているようです。

かろうじて男性であることだけは分かりましたが、それ以外は無理でした。

でも、あの魔力の質ははっきりと覚えました。

最後のシルバーウルフが倒された時、わたしは彼と目が合ったと思います。

明らかにわたしの感ですが。

でもわたしがそう思った後すぐに、彼は王都の方角に向けて消えていきました。

王都に向かったのであれば、彼にまた会えるかも知れません。

いえ、必ずお会いしてお礼をしたいと思います。 見えない騎士様、ありがとうございました。




>>>>>>>>>>>>>

「やっと街にたどり着いた。」

犬っころを倒した後、次の気配に向かって進んでいくと、そこには大きな城壁に囲まれた街があった。

城門では厳重な入門検査が行われ、身分証や通行証の確認をしている。

そんなもの持っていない俺は、気配遮断をしたまま黙って門を通り抜けた。

街の中を歩いて行く。

大きな街だ。人通りも多く店も多い。

門からまっすぐに伸びる道路は恐らくこの街のメインストリートだろう。

さっき感じた気配は、門を入ってすぐの居酒屋で喧嘩している商人達のものだったようだ。

とにかく良かった。

俺は気配を消したままメインストリートを歩く。

遠くにお城が見えてきたところから察して、どうやらこの国の王都らしいと判断した。

まずは何か食べよう。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品