天才にして天災の僕は時に旅人 第一部

流川おるたな

ノストラダムスの予言

「人魚さん撮影許可してくれるかなぁ」
 乙葉が呑気な事を言う。
 最近になって分かって来たのだけれど、三人の中で一番年長なのに一番子供っぽいような気がする。
「乙葉、それだけは絶対に人魚には言わないでくれ」
 僕は念には念を押しておいた。
 人魚と昨日話しをした岩場まで着き、海面を一通り見渡すが人魚の影も形も無い。
 乙葉と芹奈は岩陰に隠れているのだが、もしかして3人いる事に気付き出て来ないのだろうか?
 海に向かって大声で呼びかける。
「人魚さーん、出て来てくださーい!昨日の者ですー!枝豆もたんまりと用意してありますよー!」
 暫く待ったが波の音だけが響き渡り、海面にも変化が起こらない。
「やっぱり昨日逢えたのは奇跡だったか...」
 両膝に両手を当ててうなだれる。
「パシャッ!」
 海面から魚が飛び跳ねるような音が聴こえる。
 音のした方向を注視すると昨日出逢った人魚がそこに居た。
「人魚さん!来てくれたんですね」
「もちろんです。約束は守るタチですので」
 ニッコリと笑い掛けてくれた。
 早速、後ろに置いといた枝豆を人魚に見せる。
 大きな竹製のザルいっぱいに乗せて、防水のために透明のビニール袋で包んでおいた。
「こんなに沢山の枝豆!感謝いたします」
 かなり喜んで貰えたようである。
「では、約束通り海底都市にご案内いたしますので...」
「ちょっと待って下さい!」
 僕は人魚の話を遮った。
「何か問題でもあるのですか?」
「あ、いえ、そのぉ...」
「私達も海底都市へ連れてって欲しいんです人魚さん!」
 僕がしどろもどろになってるところへ、後ろから覇気を感じるくらいの圧で芹奈が姿を現した。
 乙葉さんは遠慮がちに岩陰から出て来る。
 人魚が僕の方をジッと睨んでいた。
「あ、人魚さんこの二人は友人でして、海底都市に行って人魚さん達の役に立ちたいというものですから...」
 ああ、ダメだ。こんな言い訳が通用する筈がない。
 海底都市が遠くに行ってしまう...
「なぜ海底都市が危機を迎えている事を知っているのですか?」
「!?」
 もしかして会話が成立してしまっているのか?
 次の返答が大事だ考えろ自分!
 と考えている間に芹奈がしゃしゃり出る。
「予言です!人間の世界では超一流の預言者だったノストラダムスという者が、海底都市崩壊の危機を予言し、そのノストラダムスが私達三人を遣わしたのです!」
 何というデタラメな事を言ってくれたのだ芹奈!
 如何!もうフォローの言葉が全く思いつかない。
 人魚さんが真顔で話す。
「ノストラダムスの予言...良いでしょう。3人を海底都市にご案内いたします」
 本気(マジ)か。

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